第126話 昼下がりの街ぶら
「おお、こりゃうめえな!」
「とってもおいしい」
「うん、とてもおいしいね。やっぱりお店で食べる料理もいいですね!」
服を買ったあとはルネスさんとジェロムさんがおすすめしてくれたお店で昼食を食べている。エルミー達のパーティハウスでは俺が食事を作ったり、時間がないときは屋台で料理を買ってきて食べたりするが、たまにはこうやってお店で食べるご飯もいいものだ。
俺の料理は元の世界で作っていた調理法を使っての料理だが、それとは違ったおいしさがある。もちろん俺は本職の料理人ではないから当然と言えば当然だ。
「気に入ってもらえて良かったです。このお店は最近できたお店で、男性の評判がとてもいいんですよ」
「おいしいだけじゃなくて見た目もおしゃれな料理が多いんです!」
確かに屋台のようにとりあえず肉を焼いて塩で味付けをした大雑把な料理とは異なって、色とりどりの野菜を使ったり、盛り付けにも工夫がされているようだ。
こんな店を見つけてくる2人は女子力ならぬ男子力が高いとでも言うのだろう。正直に言って、俺もエルミー達と同じく、豪快に焼いた料理とかが好きだったりするもんな。そのあたりは元の世界の感覚が残っているようだ。
久しぶりにお店でまったりと優雅なランチをみんなで楽しんだ。
「それにしても最近はこの街も活気が出てきたみたいだね」
「そうだな。ティアの言う通り、冒険者達の依頼の達成率が上がり、商人たちの行き来も盛んになった。これもソーマとユージャさんが開発してくれたポーションのおかげだろう」
「ああ。死傷する冒険者たちの数が圧倒的に減ってくれて、ギルマスも喜んでいたぜ。それに商人達が治療士のいない街や村にポーションを販売しに行くから、以前より金の動きが活発になっているみてえだしな」
例の強化された回復ポーションや解毒ポーションは売れに売れて、今では治療士がいない街や村にも商人たちが行商に行っているため、この街の経済そのものがうまく回っているらしい。
この街だけでなく、他の街にいる治療士も近くの街や村からポーション作成の依頼があって、以前以上に稼げるとまでは言えないが、それでも十分な利益は確保できているようだ。
そしてポーションの効果は時間の経過とともにその効力が落ちていき、普通に回復魔法を使うよりも回復量が劣るので、今までよりも減ったものの治療士の需要はまだまだある。
「それにアグリーとランコット、闇ギルドの連中がいなくなって、この辺りはだいぶ平和になった」
そう、あの事件のあと、アグリーとランコットは逮捕されて、王都へと護送されていった。ランコットはともかく、アグリーのやつは様々な余罪があって、間違いなく死罪の罪となるのだが、そこはとても貴重な治療士というジョブを持っているため、簡単に死罪にできないようだ。
そのため、この国では一番警備が厳しいとされる王都の牢獄に収容され、そこで例のポーションを毎日作らされていると国王様より連絡を受けている。一度は完全にアグリーのやつに出し抜かれて、拉致されて殺されかけたからな……もう二度と牢獄からは出さないでほしいところだ。
ランコットや捕まった闇ギルドの連中は死罪か強制労働の刑になったと聞いている。そのおかげでこの辺りの治安は一気に良くなり、ついでに景気も上がりまさに順風満帆な状況なわけだ。
「ランコット商店は潰れてアグリーの屋敷は没収、結果的に街の財政的にもかなり豊かになりましたからね」
「そうですね。さすがにあの屋敷を買う人はいないので、取り壊されるそうです」
「あっ、そうなんですか。確かにあんなに大きな屋敷はかなり高額になりそうですもんね」
事件の首謀者であるアグリーとランコットが逮捕されたことにより、その財産はすべてこの街と国のものになるらしい。この文明レベルだとそれも当然なのかもしれないな。
ちなみにランコット商店に勤めていた従業員やアグリーの屋敷で働いていた従業員について、悪事に加担していなかった者は無事に無罪放免となった。こういう時に嘘の分かるジョブがあると、冤罪なんかもないから助かる。
職を失ったことは可哀そうだったが、この街の景気がとても良くなっているから、たぶんすぐに再就職できているだろう。
「とりあえずあの事件からひと段落したようで、本当に良かったよ。さて、午後は演劇を見にいきましょう。夜は僕のおすすめのお店でディナーの予約をしていますよ」
「ありがとうございます、ティアさん」
午後からはみんなで演劇を見て、そのあとはティアさんのおすすめのお店でディナーを食べた。久しぶりにのんびりとした休日を過ごせていい息抜きになったよ。たまには多少お金を使ってでも、外で楽しむということはとても大事なんだな。
ルネスさんもジェロムさんもティアさんも本当に慣れていると言うべきか、やはりモテる人はモテるべくしてモテると言うことが良く分かった。みんなが楽しめるような場所や食事処をしっかりと下調べし、買い物をした荷物を持ち異性をしっかりとエスコートする。
とても楽しい一日であったが、なんだか男としては完全に負けた気分だった……
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