第125話 貞操逆転した服屋


「とてもいろんな種類の服があるね」


「このお店は流行りの男性用の服が取り揃えられていますからね」


「ソーマさん、ルネス、こっちの棚がおすすめコーナーになっていますよ」


 まずは男性用の服をみんなで見てまわる。このお店にはいろんな種類や色やサイズの男性用の服が一面に並んでいた。


 う~んこちらの世界では男性用の服にこれだけのスペースを取っているんだな。元の世界の普通の服屋では女性用の服のスペースのほうが多い気がする。というかそもそも俺がファッションにまったく興味を持っていなかっただけなのかもしれないけど。


 基本的には定番の洋服チェーン店でいつも無難な服を買っていたからな。個人的にはあまり悪目立ちせず、なおかつ変に思われないことを第一に服を選んでいた。女性にモテたいと思いつつもファッションについてはまったく努力をしていない男子高校生の代表だった……


「なるほど。こういう服が流行っているんですね」


 おすすめコーナーには最近売れているらしいシャツやコートにズボンなどがあった。細かいところは俺が見ても分からないが、確かに前に普通のお店で購入した今着ている服よりも作りが丁寧で、裁縫の目が細かい気もする。


 ……ちなみに男性用のシャツは厚手の服が多い。というのも、普通に薄手のシャツ1枚だと乳首が浮き出てしまうからな。ぶっちゃけ男の乳首なんてどうでもいいのだが、薄手のシャツを着るのはみんなに全力で止められた。まあ元の世界の感覚でいくと、おかしな男と思われてしまいそうだから我慢するとしよう。


 反対に、女性はその辺りのことについてはまったく無関心で、思いっきり乳首の位置が分かってしまうような薄いシャツを着た女性が大半だ。……それどころかトップレスで歩き回っている女性もたまに街中で見かけるし、それについては男女ともに気にしていないんだよなあ。


「こっちの服はソーマさんによく似合いそうすね」


 ルネスさんのほうへ行くとそこには少し派手なキラキラとした装飾品の付いた服があった。男がこれを着るのはなかなか度胸がいるな……


「ソーマさんにはこちらの清楚な服のほうが似合いますよ」


 ジェロムさんは水色のシンプルな服を持ってきてくれた。どちらかというとこっちのほうが俺には合っているかも。


 元の世界では男性同士で服を選びながらショッピングするという経験はなかったから新鮮な感覚だが、ルネスさんとジェロムさんと一緒に仲良く買い物をするのは悪くなかった。




「それではここから女性は立ち入り禁止でお願いしますね」


「ああ、もちろんだよ」


 2人と一緒に服を選んで、いくつかの服を購入する。さすがに立派な店だけあって、結構なお値段だったが、2人みたいにお金を稼いでいる男性は服にこれくらい使うのが普通らしい。安物の服でいいと思ってしまうのはまだ元の世界の感覚が抜けていない証拠だな。


 そして次にやってきたのは男性用の下着売り場である。さすがにここには女性のみんなは入ってこないで、男性のルネスさんとジェロムさんと一緒に下着を選んでいく。


「こっちなんていいんじゃないですか?」


「こっちの色も素敵ですよ!」


「………………」


 ……駄目だ。さすがに男である俺にとって、下着を男同士で選んだりするのは違和感しかないな。


 この世界だと男性用の下着の種類や色が無駄に多い。ぶっちゃけこんなに色や種類は必要ないだろと思うのは俺がおかしいのかな。ちなみにこの世界での男性用の下着はブリーフとボクサーパンツがあって、いつもはボクサータイプのパンツをはいている。


「こっちのほうは夜用の下着ですね」


「うわ……女性って男性がこういうのをはくのが好きなんですか?」


「ええ、基本的にこういった下着が好きじゃない女性なんていませんよ」


「な、なるほど……」


 適当にボクサーパンツをいくつか選んだあと、さらにその奥にある一角へやってきた。ここでは男性の夜用の下着が売っている場所だ。


 ……黒いスケスケのブリーフパンツが売っていたり、大事なところに穴が開いている、いわゆるアダルティーな下着なのだ。さすがに男である俺がこれをはくのは、男としての大切な何かを失う気がする……


 こういうエロい下着は女性がはいてこそだと思うんだけどなあ……


 さすがに夜の下着は購入せずに普通の下着を購入して、男性用の服の買い物は終了した。




「それじゃあ次は女性用の服だね」


「ああ、さっさと選んじまおうぜ!」


「ジェントル達を待たせるわけにはいかないからね。すぐに選んでくるよ」


 続いて女性服の買い物だ。といっても、こちらは男性用の服に比べて種類や色がとても少なく、デザインも簡素なものが多かった。


 こちらの世界では女性の人数が多いはずなのに、この扱いの差は何とも言えない。


 案の定女性服の買い物は俺達の買い物と比べてすぐに終わった。もちろんみんなで相談したり、一緒に選んだりということもなく、個人個人が好きなものを選んで購入していた様子だった。


 う~む、男女の貞操が逆転すると服の買い物はこんな感じになるんだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る