第124話 街へお出掛け
「とてもいい天気ですね!」
「絶好のお出かけ日和ですね!」
「ルネスさんもジェロムさんも今日はよろしくお願いします」
雲ひとつない晴天。街に出かけるには絶好の天気である。
今日は俺の数少ない男性の友人であるルネスさんとジェロムさんと街へ買い物に出かける日だ。ここ最近はいろいろと忙しいこともあって、あまり自由な時間を取ることができなかったのだが、ようやくいろいろなことが落ち着いてきたので、今日はみんなとのんびり楽しく過ごすつもりである。
「これほど美しい男性3人が一緒にいる光景はとても素晴らしいね! 今日の護衛は私達に任せて、思いっきり楽しんでくれたまえ」
「ティア様こそ、今日はまた一段と素敵です!」
「ティア様がいらっしゃれば、安心してお出かけすることができます!」
「……本当にティアのやつはいつも通りだな」
そしてもちろんこの2人がいるということは、同じ紅の戦斧のパーティリーダーであるティアさんも一緒に来てくれている。
こっちの世界だと、比較的治安の良いアニックの街であっても男性3人で行動するというのは危険なので、ティアさんやエルミー達も護衛として一緒についてきてくれる。
ルネスさんもジェロムさんも男性にもかかわらずに相当な腕を持っているので、そこらへんにいる女性よりもよっぽど強いらしいのだが、せっかくなら女性も一緒の方が楽しいに決まっている。
「さあ、まずは服屋さんでショッピングを楽しみましょう!」
2人に連れられてやってきたのは大きな服屋さんであった。この世界にやって来て、普段の俺の服はエルミー達が普段利用している服屋で買ったものを使用している。
お金があまりない人は市場の古着屋で買うのが一般的な中、新品の服を買えるだけでそこそこ裕福らしい。とはいえエルミー達はAランク冒険者で、俺も治療費をかなりもらっているので、お金にかんしては問題ない。
元の世界ではおしゃれにはあまり興味がなかったとはいえ、市場で売っていた古着はさすがにボロボロな服が多かったので、それほど高くない新品の服を使っている。
「こちらは男性の服がとても豊富で、おしゃれな服が多いのですよ」
「へえ~確かに店の様子からも立派な服が売ってそうですね」
このあたりはアニックの街の中でも比較的高価な商店が立ち並ぶ通りになる。何度かこの通りの前を通ったことはあったが、こっちの世界の男性の常識というものが分からないので、今まで避けてきた店だ。
「「「いらっしゃいませ!」」」
お店の中に入ると、早速店の中にいた従業員達がこちらに向かってお辞儀をしてくる。従業員の教育がしっかりとされているようだ。それに従業員の制服もとてもビシッとしており、品質の良い制服のようだ。今まで俺が買っていたお店とは若干様子が異なる。
それに男性用の服を多く扱っているためか、従業員は男性の方が多い。なるほど、これなら男性のお客さんでも気軽に店員さんに話しかけることができそうだな。
「これはこれはティア様、ルネス様、ジェロム様、いつも当店をごひいきいただきまして誠にありがとうございます!」
そして40代くらいの他の従業員の制服よりもさらに立派な服を着た女性がこちらにやってきた。みんなはこの店の常連のようだし、この店のお偉いさんなのかな。
「おや、こちらの黒髪の男性はもしかして……」
「ええ、ご存じだと思いますが、こちらはソーマさんです」
「おお! ソーマ様のお噂はかねがね聞いております。この街でもっとも有名なソーマ様にお会いできて光栄です! 本日は当店まで足を運んでいただきまして誠にありがとうございます。店長のブライモンと申します」
「初めまして、ソーマと申します」
とても恭しい態度で頭を下げてくるブライモンさん。例のアグリーの事件もあったため、今の俺の名前は街中に知れ渡ってしまっている。少し……かなり恥ずかしいんだけどな。
「またいろいろと見させてもらいますね。気になったことがあればこちらから声を掛けますので」
「かしこまりました。何かご質問がございましたら遠慮なくお声をおかけください。それではごゆっくりどうぞ」
そう言うとブライモンさんはすぐに下がっていった。今日はみんなで服を選ぶのを察してか、営業トークなどもせずにすんなり引いてくれるのは個人的にはとても好印象だ。
服屋の店員さんって、頼んでもいないのにこの服はどうですかみたいに勧めてくる人が多いから結構苦手だったりする。
「まずは男性用の服を見に行きましょうか」
「みなさんもそちらで大丈夫ですか?」
「もちろんジェントルマンファーストに決まっているよ」
……ティアさんの言っているのはレディファーストの男版といったところかな。
「もちろん私達も大丈夫だ」
「ああ、俺達もあとでいいぞ」
「もちろん男性優先」
エルミー達も俺達の服が先でいいらしい。どうやらこの世界では戦闘能力は女性の方が強いが、男性優先のようだ。……うん、元の世界のレディーファースト世界の俺にはなんとも言えないところだが、さすがにこの世界に多少は慣れてきた自分がいるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます