第121話 王都へ再び
そして次の日、治療所での診察をしたあと、そのまま隣にある冒険者ギルドへ寄って、冒険者ギルドマスターのターリアさんと話をしている。
「おお、ソーマ殿もユージャ殿も本当に素晴らしいですな! 今販売されているポーションもそうですが、病気を治療できるポーションまで完成されたとは驚きです!」
「まだ完成とまでは言えないですけれど、とりあえず試作品まではできたようです。俺は魔法を使っていただけなので、ほぼユージャさんのお力ですけれどね」
「いえ、そもそもこのポーションの発想をソーマ殿がされたではありませんか。それに毎日治療所での治療やポーションのに回復魔法をかけてくださっているあとにユージャ殿の店まで寄っていると聞いておりますよ。本当にありがとうございます!」
「俺もこの街のみんなに助けられましたからお互い様ですよ。それでこのポーションについてどうやって実験するか相談しようと思いまして」
「……なるほど、前回のように魔物にポーションを使用して実験することができませんからね」
さすがターリアさん、察しが良い。前回のポーションの検証するときはターリアさんが単独で魔物を狩る際に怪我を治癒する効果がどれくらいになるのかを検証してくれた。
「そうなんですよね……どんな病気に効果があるのかや、どんな人にでも効果があるのかも確認しておきたいところです」
回復魔法をかけたポーションや解毒魔法をかけた毒消しポーションの場合、今のところ逆効果になったりすることは確認されていないが、だからといって今回のポーションが病気を悪化させるなどの悪い効果がないとは言い切れない。
やはりぶっつけ本番ではなく、人体実験は必要不可欠なのである。
「……わかりました。それにつきましては騎士団と相談して、こちらでポーションを使用する相手を探しておきましょう」
「すみませんが、よろしくお願いします……」
騎士団と相談ということはやはり犯罪者を実験台にするということになるようだ。これに関しては残酷なことを言うが俺も同意見だな。命は平等というが、やはり善良な市民と凶悪犯罪を起こした者の命は平等ではないと思う。
「承知しました、お任せください。あっ、それと国王様から連絡がありまして、そろそろもう一度王都にもぜひ顔を出してほしいとのことです」
「そういえばそうですね。最近はいろいろとあってすっかりと忘れていました。国王様にはお世話になったことですし、挨拶にもいかないといけませんね」
例の事件があったあと、国王様には俺の手紙を添えてターリアさんから報告をしてもらった。結果的には状況的に俺を守ることが難しかったことと、国の組織である騎士団のほうに大きな問題があったことを加味してターリアさんもエルミー達も大きな責任を負うことはなかった。
そのあたりへの配慮もちゃんとしてくれたり、俺が男巫であることの発表と同時にこの街の騎士団や城壁の強化などの配慮までしてくれ、俺との約束通り、例のポーションの作り方を他国へ向けても発表してくれたもんな。
向こうはいろいろと配慮してくれているわけだし、こちらもちゃんとお礼を伝えにいかないといけないな。
「わかりました。この新しいポーションの検証ができたら、報告もかねて一度王都へ向かうとお伝えください」
こちらでのやることもひと通り落ち着いてきたし、新しいポーションの検証がある程度できたら、このポーションを献上するためにも一度王都を訪れるとしよう。
ちなみに国王様にはまだこのポーションの件については報告していない。こちらの世界には遠距離間で確実に情報漏洩しないような連絡方法がまだない。そのため、病気を治療できるポーションについては国王様への報告ではまだ書かないようにしている。
国王様やデーヴァさんもきっと驚くだろうなあ。
「承知しました。そのように伝えておきます」
「はい、よろしくお願いします」
「王都も久しぶりだね。アグリーも捕まったことだし、今回はさすがに何もないと思いたいけれど……」
冒険者ギルドからエルミー達のパーティハウスへの帰り道、ふとそんなことを呟いてしまった。前回王都へ向かった時はだいぶいろいろとあったからな。
「なにが起きても問題はないぞ」
「ああ、もう絶対に不覚は取らねえからな!」
「ソーマは安心していい」
「……そうだね。みんなを信頼しているから大丈夫だよ」
アグリー達に拉致されたあの事件から、エルミー達は毎日空いた時間を使ってこれまで以上の訓練を行っていた。時には同じAランク冒険者であるティアさんをパーティハウスへ招いて組み手なんかもしていたな。
3人での連携や俺を含めての連携などを今まで以上に鍛えてきたし、俺も障壁魔法を今まで以上に鍛錬してきた。さすがに前回のようなことはないだろうが、もう同じ轍を踏むつもりはないからな。
この2ヶ月でみんないろいろと成長してきたことは間違いない。とはいえ、別に何か起こってほしいわけではなく、王都に問題なくたどり着けることを祈るとしよう。
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