第119話 孤児院の様子


「ローディちゃん、今日もちゃんと良い子にしてた?」


「うん! ちゃんとパンを焼くお手伝いをしてたよ!」


 リカバーによりこれまでの病気はすっかり治って、とても元気そうに微笑んでいるローディちゃん。


「それは偉いね。今日はローディちゃんに良いお知らせを持ってきたんだ。今度少しだけだけれど、お姉ちゃんと会えることになりそうだよ」


「本当! やったあ!」


 嬉しそうに両手を上げて喜ぶローディちゃん。


 ローディちゃんの姉で、盗賊王のジョブを持つデジアナ。現在彼女の身柄はこの街の騎士団預かりとなっている。


 彼女は妹の病気を治すためアグリーに大金で雇われて従っており、俺の襲撃を手伝うまではドアや鍵を開けられるその魔法によって泥棒の手伝いなんかをさせられていたことがその後の取り調べでわかった。


 幸いなことに彼女は人を殺したことはなく、それ以外に関わったことは俺を拉致したことに関する件についてだけで、俺の件についても情状酌量の余地があってそれほど大きな罪にはならなかったようだ。


 俺としても彼女に助けられたので、それほど大きな罪にならなくてほっとしている。


 とはいえすぐに無罪放免とはいかずに、今では騎士団にてそのジョブの力を良い方向に使用している。心を入れ替えて、この街のために働いていることが認められ、もちろん騎士団の監視付きではあるが、今度ローディちゃんとの面談が認められた。


「デジアナも大きな罪にならなくてよかったな。元気に働いているところをみせてやれ」


「うん! ありがとう、エルミーお姉ちゃん!」


 ローディちゃんは病気も治って孤児院に預けられてから、みるみるうちに元気になって孤児院を走り回っていた。だいぶ瘦せており、ベッドで眠っていた時とはえらい違いだ。


 本来はこれほど活発で元気な女の子だったようだ。まあ、こっちの世界では女の子はだいたい活発で元気らしいけれど。


「それじゃあパンを8つ頼むぜ」


「うん! ありがとうございます!」


「お買い上げありがとうございます!」


 フェリスから注文を受けたリーチェとケイシュくんが渡した籠にパンを入れてくれる。今日も2人は笑顔で元気に働いているようだ。子供達の笑顔には本当に癒されるよ。


「ガデナさんもありがとうございます」


 そして孤児院には医院長さんとミーナさん以外にもうひとりの子供以外の女性がいる。立派な防具を身に付けて腰には武器を携えて武装している。


 彼女の名前はガデナさん、例の治療士の事件のあとに俺が冒険者ギルドに依頼をかけて雇ったBランク冒険者だ。


 俺が医院長たちにお願いをしてローディちゃんを孤児院で預かってもらったことにより、孤児院の人手がさらに少なくなってしまった。それに加えて、俺が親しくしているこの孤児院へ前回のような襲撃があってもおかしくはないので、護衛と子供の面倒を見てもらうために人を雇った。


「はっ! ソーマ様、本日も異常はありませんでした」


「いつもありがとうございます。あの年齢もガデナさんのほうが上ですし、普通に呼び捨てで呼んでくださったほうが……」


「とんでもございません! ソーマ様には母の怪我を治療してもらったご恩がございます。どうかこのままの呼び方で呼ばせてください!」


「あっ、はい……」


 そう言われてしまうと、さすがにこれ以上強制はできない。


 冒険者ギルドに孤児院で護衛をしながら、医院長さんやミーナさんを手助けしてくれる人を探して冒険者ギルドに依頼を出したところ、かなりの数の冒険者達が手を挙げてくれたらしい。


 というよりも、ひとつの依頼に対して50人以上の高ランク冒険者が手を挙げてくれたようだ。そこまで良い条件ではないのに、それだけの人が手を挙げてくれたのはとても嬉しかった。その中から冒険者ギルドマスターのターリアさんがガデナさんを選んでくれた。


 以前俺がガデナさんの母親を後払いの支払いで治療したことを後ほどガデナさんが知って、俺にとても感謝していたらしい。ガデナさんは俺がアグリーに拉致された時も俺を助けるためにアグリーの屋敷にまで来てくれていた。


「それでは孤児院の護衛と手伝いを引き続きよろしくお願いしますね」


「はい! 母の命を救ってくださったソーマさんのお役に立ててとても光栄です! 私の命に代えてもこの孤児院を守って見せますから!」


「……えっと、ほどほどでお願いしますね。危険があったら迷わずみんなと一緒に逃げてくださいよ」


「承知しました!」


 ガデナさんも少し大げさなのでちょっと心配だったりもする。さすがに命まではかけないでいいからね……


 さすがにアグリー達が逮捕されてからは俺にちょっかいを出してくるようなやつはいなかったから大丈夫だとは思うが、備えておくに越したことがないことは前回の件で学んだからな。多少お金がかかっても、俺の身の回りの人達を守る備えはしておいたほうがいい。


 さて、今日はこのままみんなのパーティハウスに戻るが、明日は治療所での治療が終わってからユージャ商店に寄るとしよう。

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