第106話 拷問(?)


「まったく……まさか2度も暗殺に失敗するとは思わなかったぞ」


「王都への道中の安い金で雇った闇ギルドの連中はともかく、まさか王都でも有名な闇ギルドでも仕留めきれなかったのはさすがに予想外でしたね」

 

 やはり以前に襲われたのも、このアグリーとかいう悪徳治療士だったのか。くそっ、やっぱり王都へ行った際に、証拠なんかにこだわらず、国王様にこの男を捕まえてもらうべきだった。完全に俺のミスだ!


「だが、さすがに今回は長い時間と金をかけただけあってうまくいったようだな」


「はい。さすがは高い金をかけて雇った暗殺者や盗賊の連中でした。いろいろと手筈を整えたとはいえ、あのAランク冒険者達から暗殺どころか、それよりもはるかに難易度の高い拉致までしてくれるとはね!」

 

「くっくっく、この男は簡単に殺さん! 今までさんざん私の邪魔をしてくれたからな! この世の絶望をぞんぶんに味あわせてから、ゆっくりと殺してやるぞ!」


 ちょっ!? 今まで俺を生かしていたのってそういう理由!?


「こ、ここで俺を殺せば、いくらお前でも大問題になるぞ!」


「なあに、死体さえ始末してしまえばどうにでもなる。すでにそちらも手回し済みだ」


 うっ……ここまで入念な準備をしているということは本当なのかもしれない。完全犯罪できるジョブとかがあってもおかしくはなさそうだし……


「ほ、他のみんなはどうした!」


「ああ、あの場にいたAランク冒険者か? 安心しろ、ギリギリのところで他の騎士団や冒険者どもが現れたらしく、始末しきれなったようだぞ」


 それが本当なら俺にとってはとても嬉しい情報だが、本当なのか確かめる術は今の俺にない。


「安心して下さい、それは本当の情報ですよ。死んだという偽の情報を与えてもよかったのですが、男というものはどんなに儚くても希望がある限り、それにすがるものですからね。どうかあなたも簡単に壊れてくれないようお願いしますよ」


「………………」


 なにそれめっちゃ怖いんですけれど! こういった文明レベルの拷問とかって本気でヤバそう……


 だがエルミーとフェリスが助かったというのはとてもありがたい情報だな。どうやらこの様子だと嘘ではなさそうだ。


 俺はみんなを信じている! 何をされるのか分からないが、みんなが助けに来てくれるまでなんとしても耐えてみせるぞ!


「それではランコット、あとは頼むぞ。今までさんざん私に逆らってきたその男に地獄を見せてやれ!」


「ええ、もちろんです」


 そういうとアグリーは牢獄から出ていった。いよいよ拷問が始まるらしい。


「それではみなさん、中へ入ってきたください」


「ようやくかよ!」


「待っていたぜ!」


「くっくっく、楽しませてもらうとしようぜ!」


「んなっ!?」


 ランコットの合図で地下牢の中に20人近くの女性が入ってきた。そしてその女性達は全員がであった。


「ああ~なんと素晴らしい表情でしょう! 絶望に染まった美しい男性の表情というものは、いつ見てもたまりませんねえ! さすがのあなたでもこれから何をされるのかくらいは理解しているようですね!」


 そりゃ理解はしている。


 俺だって男だし、元の世界ではそういったシチュエーションのエロい本だって持っている。だけど今の俺の感情は絶望になんか染まってはいない。


 むしろ逆である。えっ、こんなに大勢の女性に相手をしてもらえるの!?


「薬と魔法もしっかりと効いているようですね。あなたの大事な場所がそそりたっておりますよ」


「……はっ!?」


 言われてみて初めて気づいたが、今の俺の姿はパンツ一丁だ。しかも俺の股間はギンギンな状態である。


 そうか、この世界では薬や魔法を使って無理やり男を犯すのだったな。道理でさっきから頭が全然働かないと思ったら、そういうことか! それならば……


「ハイディスパトラ!」


 状態異常回復魔法を唱えると、頭の中がだんだんとスッキリしてきた。どうやら強制的に男を興奮させる薬や魔法は解除されたようだ。


 頭の中がスッキリしてわかったが、確かに先ほどまでの状態は危ない状態だった。頭がボーっとして、ものすごく興奮した状態になっていたもんな。


「くっくっく、無駄ですよ。あなたが状態異常回復魔法を使うことができることは調査済みです。ですが、この薬や魔法は一介の治療士ごときが解除できるほど効果の弱いものではありませんよ!」


「………………」


 いや、頭の中は完全にスッキリしているし、思いっきり効果があったっぽいぞ……


 残念ながら俺は聖男で一介の治療士ではない。さすがのこいつらでも、王都で俺が聖男であるという情報まではつかめていなかったようだな!


「その証拠に今もあなたの大事な場所はそそりたっていますよ!」


「くっ……」


 ……いや、状態異常回復魔法はしっかりと効いている。しかし未だに俺の股間はギンギンな状態のままだ。


 そりゃそうだろ! 童貞の俺がこれだけの裸の女性に囲まれて興奮しないなんて不可能だ!


 しかもなんでゴロツキっぽい女達は普通に綺麗な女性が多いんだよ! こっちの世界の女性は顔面偏差値高すぎるだろ! こういう時は太った女とか、年をとったババアを連れて来いよ! この状況で興奮するなとか無理じゃん!


 思春期の男子高校生の性欲なめんな! 付き合うかどうかと言われたら考えてしまうが、ヤれるかヤれないかで考えたら、ぶっちゃけクラスの女子の9割以上は全然ヤりたいと思えるんだからな!


「ああ、なんと素晴らしい! これほど美しく男神とまで呼ばれている男性をめちゃくちゃにできるなんて!」


 あっ、そっちの女の子はめちゃくちゃタイプだ。こっちの女性はめちゃくちゃ胸がデカい!


 あっちの女の子は耳と尻尾がある獣人だけど、下のほうはどうなっているんだろう!


 なんかもう俺の貞操とかどうでもよくなってくるんですけれど!


 むしろめちゃくちゃにされたいんですけれど!

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