第100話 尋問
「俺のことを知っているなら話が早いね。普通の人には人体実験なんてできないから本当に助かるよ。君達みたいな犯罪者相手なら普段試すことはできない実験がいろいろとできそうで嬉しいな」
「て、てめえは天使とか男神とか呼ばれているんだろ! そ、そんなことしていいと思っているのか!」
「ああ、それは心配しなくていいよ。どうせ君のようなゴロツキの言うことなんて誰ひとり信じないだろうからね。さあ楽しい実験の始まりだ!」
万が一この女が街の人に俺が拷問をしたなんてことを話したとしても、こいつの言うことよりも俺のことを信じてくれるだろうな。もちろん、あまりに酷い拷問なんて、元の世界の俺にできるわけがないから、単なる脅しなんだけど。
「何から始めようか。全身の皮を剥いでから回復魔法で血だけを止めると、神経が剝き出しになって、どんな刺激でもたちまち激痛に変わると思うけど、実際はどうなるか楽しみだね。
腹を裂いたまま回復魔法をかけ続けて、生きている人間の臓器の観察もしたかったところだよ。それに生きたままの脳みそをいじると人はどうなるのか興味深いね。
他にも〇〇〇を×××してみたり、△△△を□□□してみたり! いやあ楽しみだよ!」
「ひ、ひいいい! こ、この男、完全にイカれてやがる! おい、俺が悪かった! 頼む、何でも話す! だからこのイカれた男を早くどこかに連れて行ってくれ!」
……ふっ、堕ちたな。
脅迫をする場合には、いかにこちらがイカれているのかをはっきりと見せつけてやることが効果的だと、元の世界の漫画で描いてあった。
しかも普段は天使やら男神だの言われている男性が、そんな頭のおかしなことを真顔で言えば、その効果は倍増である。
ゴロツキの女は半ベソをかきながら、すがるようにエルミーとフロラに救いの手を求めている。少々怖がらせすぎたようだが、これなら何でも話すことは間違いないだろう。我ながら見事な頭脳プレーであるな、はっはっはっ!
「「………………」」
……気が付くとエルミーとフロラまでもドン引きしていた。いや、もちろんそんなの冗談に決まっているからね!
「……なるほど。まさかこの者達が今回の孤児院を襲撃していた黒幕とはねえ」
今は場所を移してエルミー達と一緒に冒険者ギルドマスターの部屋にいる。
あのあと、俺の機転によるマッドサイエンティスト的な脅迫のおかげで、尋問をした女はエルミーとフロラに聞かれたことに対してペラペラと話し始めた。
どうやら俺の脅迫の効果があり過ぎたようで、嘘を一度もつかなかったようだ。……そんなに怖かったのかな。
念のためにもうひとりにも尋問をおこなったところ、ひとりめと同じ証言をしていたので、どうやら間違いはなかったようだ。
「まさかあの有名な
そう、今回の孤児院を襲撃してパンを売るための屋台を壊した襲撃者達の黒幕……それは例の悪徳治療士ではなく、この街で一二を争うほど有名なポーションの販売店の店主だった。確か名前はランコットだったかな。
俺がこの街で安く治療を始めた時、一番最初に挨拶へ行ったあのポーション屋だ。フロラの嘘を見破る能力のおかげで俺を良く思っていないことが発覚したんだよな。
「例の治療士の仕業じゃねえとは思わなかったぜ。まあ、あいつだったら孤児院を狙って嫌がらせをするよりも、直接ソーマを狙ってくるだろうしな」
確かにフェリスの言う通り、例の治療士だったら、孤児院を狙ったりせずに直接俺を狙ってきただろう。というよりも、王都での襲撃のように闇ギルドに依頼していた可能性が高い。
今回の孤児院の襲撃の依頼も屋台を壊すだけで、孤児院の子供達や院長達には手を出すつもりはなかったらしい。屋台を壊しているところをリーチェとケイシュに見られてしまい、声を上げられそうになったため2人を殴ったと話していた。
ちなみに2人を殴ったやつは俺達が尋問をしていた女であることがあとでわかった。それならもっと痛い目にあわせておけば良かったな。とはいえ2人に手を上げた分だけ、あの女の罪は重くなるそうだからいい気味である。
今回の件で孤児院を襲撃したゴロツキどもは逮捕されて当分は強制労働の刑になるらしい。
「それにしてもよくあの連中に口を喋らせることができたね。ああいった依頼はたとえ犯人を捕まえたとしても、刑が終わったあとに多額の口止め料を払ってもらえるから、断固としてしゃべらないやつのほうが多いんだよ」
ターリアさんの言う通り、あのゴロツキどもが最初は喋らなかったのも同じ理由だ。フロラの噓を見破るジョブやフロラの外見についてはその依頼をした者から聞いていたらしい。
「まったくだぜ。ソーマが尋問したっていうのはエルミーとフロラに聞いたけど、どういうふうに口を割らせたのか教えてくれねえんだよ」
俺が尋問した内容についてはフェリスとターリアさんには話していない。俺は別に話してもいいと思っていたのだが、なぜか2人には止められてしまった。
「……それは知らないほうがいい」
「……ああ。世の中には知らないほうが良いこともある」
あの時の俺ってそんなに怖かったかな……?
まあそれはいいとして、襲撃の実行犯は捕まえることができた。あとは例のポーション商店をどうするかだな。
屋台だけを狙ったのかもしれないが、孤児院の子供達を怖がらせ、リーチェとケイシュに怪我をさせたことは許すことができない。さてと、どう責任を取ってもらうとしようか。
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