第68話 国王様


「はあ〜緊張するな……」


「安心しろ、私達がついているぞ」


「おう、俺達に任せておけ」


「ソーマは私達が守る」


 闇ギルドの騒動があった翌日、俺達はこの国の王城にやってきている。


 この国で一番偉い国王様に会うということで、緊張して眠れないかとも思ったのだが、昨日1日でいろいろとあって疲れきっていたようで、いつのまにかぐっすりと眠っていた。


 朝食を食べると宿の外に高級な装飾のついた大きな馬車が停まっていた。これに乗ってこの国の王様がいる大きなお城まで連れてきてくれた。


 今回は城に上がるということで、護衛のエルミー達だけが同行してくれている。


「それではこちらになります」


「はい」


 そして現在、この国の王様がいるという部屋の前に案内された。さすがにエルミー達の武器は預けることになったが、ボディーチェックみたいなのはなかった。ある程度はこちらにも配慮されているのだろう。


 扉を開けるとそこはテレビや漫画の中で見たような煌びやかな広い部屋となっていた。光り輝くシャンデリア、壁に飾られた絵画や美術品、敷き詰められた赤い絨毯。


 両側には銀色の鎧を身に付けた騎士達。そしてその先にいるひとりの女性。俺が先頭になってゆっくりと前に進み、エルミー達がすぐ後ろに続いてくれる。


「初めましてであるな。余がカーテリー国の国王であるカーテリー=パウラである」


「初めまして、ソーマと申します。この度は国王様にお会いできて光栄でございます」


 片膝をついて右手を曲げて左肩に添える。先日この世界簡単な礼儀作法をエルミー達から教えてもらっていた。


 目の前にいるのは30〜40歳くらいの女性だ。やはりこの世界だと、王様のほとんどは女性になるらしい。


「この度は遠路遥々王都まで来てくれてとても感謝している」


「はっ、もったいないお言葉です!」


 とりあえずこんな感じで話せば大丈夫かな。


「……ふむ。問題はなさそうだな。それではみなのものは席を外してくれ」


「「「はっ!!」」」


 国王様の号令で両側にいた騎士達が部屋を出ていく。残ったのは国王様と高齢のおばあさん、護衛をしていると思われる鎧を身に付けた若い女性の3人だ。


「……よし、もう大丈夫だな。ふう〜やはり王様らしく振る舞うのは肩が凝る」


「「「………………」」」


 いきなり国王様が肩の力を抜き、先程までとは打って変わってフレンドリーに話し始めた。


「ソーマ殿達も、もっと肩の力を抜いてくれ。この部屋は魔道具が設置されておるから外に声が漏れるようなことはないぞ」


「は、はあ……」


「国王様はいつもこんな感じですので、どうかソーマ様達も肩のお力を抜いてくだされ」


「う、うむ……」


 国王様の隣にいるお婆さんはそう言ってくれるが、目の前にいるのはこの国で一番偉い人だからな。というか国のトップがこんな感じで大丈夫なのかな……


「とりあえずそのままでは話もしにくいだろう。まずはこっちの椅子に掛けてくれ」


 そう言うと国王様は部屋の端にあるテーブルへと移動した。立派な謁見の部屋なのになんで椅子やテーブルがあるのかと思ったら、元から座って話をするつもりだったらしい。




「改めてアニックの街から、王都までわざわざ来てくれたことに感謝する」


「いえ、こちらこそ立派な宿を用意してくれてありがとうございます」


「気に入ってくれたのならなによりだ。先に言っておくが、我々はソーマ殿を拘束したり、害を及ぼす気はまったくない。できる限り友好的な付き合いをしていきたいと思っている」


 ……いきなりぶっちゃけてきたな。


「……俺もこの国というよりはアニックの街で、大勢の人にお世話になってきました。今のところは引き続きこの国でお世話になりたいと思っています」


「おお、それはありがたい! なにせこの国には今までにひとりしかいなかった男巫おとこみこだ。正直に言って、この国に留まってくれるだけで、とてもありがたい。なんならこの国にいる者と婚姻を結び、子を成してくれればなおありがたいな」


「………………」


 そういえばあの高級宿には綺麗な女性が大勢いたな。もし手を出していたら責任を取らなければいけなかったかもしれない。


「こちらはAランク冒険者パーティの蒼き久遠の者達だな。ソーマ殿の護衛ご苦労であった」


「「「はっ!」」」


「ソーマ殿や蒼き久遠のみなにはとても感謝している。昨日この街に存在していた闇ギルドを潰すのを尽力してくれたと報告を受けている。子供達を攫い洗脳して暗殺者として利用するなどとんでもない連中であった。


 本来であれば客人として招いたソーマ殿達が狙われるなどあってはならないことであった。それにソーマ殿達がいなければ、子供達を救い、闇ギルドの連中を捕まえることができなかったと聞いている。この国の王として深い謝罪と感謝を!」


 国王様が俺やエルミー達に深く頭を下げてくれた。先程までの軽い感じではなく、真剣な面持ちをして真っ直ぐとこちらを見てから頭を下げている。


 俺の勝手なイメージだが、こういった文明レベルの王様は威張り散らして、なんでも命令してくるようなイメージだったが、どうやらこの国の国王であるパウラさんは違うらしい。


「頭を上げてください。子供達を暗殺者として利用するやつらを許せない気持ちは俺達も一緒ですから」


「私達はなすべきことをしたまでです。どうか頭をお上げください」


「すまない。みなにはとても感謝している」

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