第67話 大きな恩
「それではソーマ様、こちらが今回ご協力いただきました謝礼となりますので、お受け取りください」
「………………」
目の前に積まれた金貨の山、果たして何百枚あるのだろう。今回の闇ギルドの連中を捕まえるのに協力したということで、その謝礼をもらえるということなんだが、いくらなんでも多すぎる……
「さすがにこんなには貰えませんよ」
「いえ、今回はソーマ様のおかげで本当に助かりました。ソーマ様達がいなければ、間違いなくやつらを捕えることができませんでした。
貴重な魔法を何度も使っていただきましたし、これでも少ないくらいです。そもそも国の要人であるソーマ様が狙われてしまい、本当に申し訳なく思います」
さすがにそれはローレイさんや騎士団長の責任ではないだろう。悪いのは闇ギルドの連中と襲撃を依頼したやつである。
一応闇ギルドやルベルが所持していた建物や魔道具が多少のお金になるらしいが、それでもこの金額にはならないと思う。
「それはみなさんのせいではありませんから。……そうですね、それではこの半分だけいただきます。それとあとで残りは孤児院に寄付をしたいと思うので、王都にある孤児院の場所を教えてください」
「ほ、本当にそれでよろしいのでしょうか?」
「ソーマ様これは正当な報酬となります。むしろあれだけ貴重な魔法を使っていただいたので、これでも少ないくらいです」
そういえば治療士の魔法は高額なんだっけ。俺の場合はほとんど疲れないから、そこまでお金をもらうほど働いた気にならないんだよな。
「ちょっと俺は特殊で魔法を使ってもそれほど疲れないので気にしないでください。冒険者ギルドや騎士団の方々も今回結構なお金を使っているでしょうから、それに使ってくれれば結構です」
ぶっちゃけもうお金は必要ない。アニックの街ではかなりのお金があるし、エルミー達のパーティハウスに居候させてもらっている身で、日々の食材くらいしか購入する物がないからな。
この先治療士の仕事も食いっぱぐれることはないだろうし、ここでお金をもらうよりも、王都の冒険者ギルドや騎士団に少しでも恩を売っておいたほうがいいだろう。……という打算も少しあったりする。
「……噂で聞いた通り、まさに男神様のようなおかたですね!」
「ええ。我々どころか孤児院の子供達のことまで考えられておられるなんて……本当になんと立派な男性なのだ!」
……あっ、いや。打算もあったりするんですよ。そこまで必要以上に評価を上げないでいいですからね!
「ソーマはアニックの街でも孤児院のために力を尽くしているのだぞ」
「ああ、寄付だけじゃなくて、孤児院の子供達が自立できるように新しいパンを孤児院で販売し始めたんだぜ」
「それに治療も他の治療士よりも全然低い金額で治療している」
ちょっ!? 3人とも、今は俺を持ち上げなくていいから! さっきので、俺の株はもう十分過ぎるほど上がったと思うから!
「おお、まさか本当にそんな聖人のようなおかたがいらっしゃるとは……」
「ソーマ様がいらっしゃらなければ、洗脳された子供達は助けられず、あの卑劣な暗殺方法が続けられていたはずです。このご恩は絶対に忘れません。何かございましたら、王都の冒険者ギルドがお力になると誓います!」
「護衛を任されているカミラがソーマ様を守れなかった際に、本来ならばいかように処罰されてもおかしくなかった彼女をかばってくれたとの話も聞いております。
ソーマ様の寛大なご配慮にはとても感謝をしておりました。我が騎士団と致しましても、何かあった際にはソーマ様のお力になることをここに誓います!」
「……えっと、はい。何かあった時には力を貸してくださると、とても嬉しく思います」
「「はい!!」」
……俺としてはほんの少し恩を売ったつもりだったのだが、いつのまにかとんでもなく大きな恩を売ったことになっているのだが……
「さすがに今日はとんでもなく疲れたね……」
よくよく考えてみると、今日は昼前から買い物に出掛けている最中に洗脳されている子供達に襲われ、闇ギルドのアジトに突入して、そのままルベルを捕まえたりと、ものすごい濃い1日だったな。
さすがに孤児院に寄付をするのは後日となった。その時に孤児院にいる攫われた子供達の様子も見に行くとしよう。
「疲れたけれど、ソーマ様のおかげで子供達も助けられたし、闇ギルドを潰せて本当に良かったよ」
「ええ、それこそみんなのおかげですけどね。闇ギルド突入した時のみんなは本当に格好良かったよ!」
「ええ、みなさん本当に素晴らしかったです!」
「はい! ティア様にまた惚れ直してしまいましたわ!」
ルネスさんもジェロムさんも俺と同意見のようだ。この世界の男性が女性に惚れるという気持ちもわかる気がする。
ちなみにそれとなく聞いたのだが、捕えられた闇ギルドの連中は仲間などの情報を聞き出されたあとに、処刑されるか強制労働の刑になるそうだ。
洗脳魔法を使えるルベルには特に注意を払い、早急に処刑されるらしい。彼女のやってきたことを考えれば、当然といえば当然なのだが、彼女があんなジョブを持っていなければという同情も少しだけある。
チートなジョブをもらった俺が言うのもあれだが、この世界のジョブという仕組みはなかなか残酷なんだよな……
明日は予定通り国王様との謁見となる。この国の一番偉い人に会うということを考えると少し気が重いな。
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