第66話 決着
「くそっ、なぜこの場所が分かったんだ!?」
そして現在、闇ギルドの女に吐かせた秘密の通路の出口で待ち伏せをしていたところ、数時間待ったあとにそこから出てきた女を拘束した。どうやらこの女がルベルと呼ばれていた女で間違いないようだ。
「各自十分に気をつけろ! この状況で洗脳魔法を使えるとは思えないが、何をしてくるか分からないぞ!」
ローレイさんがみんなに指示を出す。洗脳魔法がどんな魔法なのかは分からないが、両手両足を拘束したうえで目隠しをすれば、あんな強力な魔法をそう簡単に使えるわけがないはずだ。
フロラを含む数人の魔法使いによる拘束魔法で、ルベルはガチガチに拘束された。その上で目隠しをされて、猿轡をかまされている。
「やはり洗脳魔法が使える以外に彼女に戦闘力はないようですね」
不意を打っての先制であったこともあるが、特に大きな抵抗なく彼女を捕らえられたようだ。やはり洗脳魔法を使える以外、彼女は脅威ではないみたいだな。
「これから街へ戻って闇ギルドの連中と一緒に彼女を尋問致します。ソーマ様には申し訳ないのですが、彼女の尋問が終わるまでは近くで待機してもらえないでしょうか?」
尋問をする際に洗脳を仕掛けられる可能性もあるわけだし、当然といえば当然だな。とはいえ、さすがに尋問に付き合う必要はないらしい。
この文明レベルの尋問は拷問に近いんじゃないかな……魔法があるこの世界ではそんなことをしなくても済むかもしれないが、あまり尋問シーンなどは見たくない。
「はい、もちろん大丈夫ですよ。尋問には参加できませんが、俺も誰に依頼されて狙われたのかは気になりますから」
「ありがとうございます。もちろん尋問はこちらで行います。ソーマ様が近くにいてくれるだけで安心することができます」
厳重にルベルを拘束をしたまま王都へと連行していき、そのまま騎士団の拠点へと移動した。
そしてルベルは別室にて専門の尋問官によって尋問をされている。俺達はエルミーやティアさん達と一緒に別の部屋へと案内された。
「この度は治療士様のお力添え、誠に感謝致します!」
「ソーマ様のおかげで洗脳魔法を使う者を捕らえることができました!」
冒険者ギルドマスターのローレイさんと一緒にいるのはこの街の騎士団長と聞いている。銀色の鎧に身を包んだ30〜40代くらいの女性だ。
とても礼儀正しく、紳士……ではなく淑女のような振る舞いである。
「いえ、無事に捕えることができてなによりです。それで現状はどのような状況でしょうか?」
「はい。まずはやつらに捕まえられていた子供達につきましては、検査の結果異常は見られませんでした。ただ、ろくに食事をとらせてもらえなかったようなので、現在は食事を与えているところです」
どうやら子供達も無事だったらしい。確かに見るからに痩せていたからな。
闇ギルドのやつらのように身体強化の副作用はなかったみたいだ。あいつらほど異常な力を持っていたわけではないし、自害するための毒を服用した時にかけた解毒魔法が効いてくれた可能性もある。
なんにせよ子供達も無事でなによりだ。どちらにせよ王都の孤児院にも寄ってみる予定だし、後ほど様子を見にいってみよう。
「治療士様の暗殺を依頼した者につきましては、アニックの街から依頼があったことまでは突き止められましたが、その先までは調査にもう少し時間が掛かりそうです」
「アニックの街からですか……」
もうその時点で誰が依頼したかは大体わかった。
「アニックの街にいる例の治療士で決まりだな」
「ああ、間違いねえだろうな」
「アニック街にいる治療士を重点的に調べて」
エルミー達も同意見のようだ。王都までの初日にあった襲撃のほうはすでに逃げられてしまったようだが、うまくいけばこの闇ギルドに依頼したやつから例の治療士へと繋がるかもしれない。
「例の悪名高い治療士ですか……あの場所付近に他の治療士様がいないことをいいことに、高額な治療費を請求しているそうですね。それに加えて治療を盾に貴族や権力者達に言うことを聞かせているとも聞いております」
「人によって治療を拒んだり、身体を要求したりと良い噂は聞きませんね。それどころか周辺にいる治療士様を排除しているという噂もあります」
どうやらローレイさんも騎士団長さんも例の治療士のことは知っているらしい。……王都にまでその悪名は広がっているんだな。
「この街に来る時にも、アニックの街の闇ギルドから襲撃があったよ。残念ながらそっちの追跡は無理だったから、今回は徹底的に調べてほしいね」
ティアさんの言う通り、例の治療士の仕業と分かっていても証拠がなくては何もできない。
「承知しました! この度はソーマ様には大変お世話になりました。我が騎士団の誇りにかけまして依頼者を探しましょう!」
「冒険者ギルドのほうでも徹底的に調査致します! 例の洗脳魔法を使う黒ずくめの女ですが、かなり慎重な女のようでしたので、ソーマ様がいなければ捕まえることはできなかったでしょう。
他の街に逃げて、また悪事を働くところを食い止められたのはソーマ様やみなさんのおかげです。本当にありがとうございました!」
ルベルのやつだが、自分の洗脳魔法にはよっぽどの自信があったようで、すぐに王都からは逃げ出さずに、別のアジトで研究資料を持ち出そうとしていたらしい。
他の街に逃げられる前に捕まえることができて本当に良かったよ。ちなみにルベルの顔はハッキリと見てなかったのだが、若い女性だった。
そして逃げる時には黒ずくめの服ではなく、まったく普通の服装であった。どうやら普段は目立つ黒ずくめの服を印象付けておき、逃亡する際には別の目立たない服を着ていたようだ。
本当によく考えるものである。というか普通に逃げていたら、王都の検問で普通に抜けられていた可能性が高い。策士策に溺れるとはこういうことだろう。
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