第56話 冒険者ギルドと治療所


 王都へ到着した次の日、これまでの旅路でかなり疲れていたこともあって、昼前までガッツリ寝てしまった。ここ最近は朝日が昇ってすぐに起きて出発していたからな。


 俺が起きるとすでにみんなは起きていた。道中では見張りもしないで俺が一番寝ていたのに申し訳ない。


「遅くなってごめん」


「いえ、我々も今起きたところですよ、ソーマ様。それよりもソーマ様のおかげでこれほどの部屋に泊まれて感謝しております」


 おう、さすがティアさん……男性へのフォローが素晴らしい。これは男性にモテるわけだ。寝起きということと、ティアさんの背景にある豪華な部屋で、普段の5割マシでキラキラして見える。


「ティアの言う通り、こんな良い部屋に泊まれたのはソーマのおかげだ。それに我々も久しぶりにゆっくりと休めたぞ」


「ああ。昨日の飯もうまかったしな!」


「ベッドも最高だった!」


 みんな俺に気を遣ってくれているようだ。それでもみんなゆっくりと休めたのは本当のようで、これまでの疲れがだいぶ取れたような顔をしている。


「明日からはみんな揃ったら俺も起こしていいからね。それじゃあご飯を食べてから、カミラさんに伝えて王都を回ってみようか」




「みなさま、ゆっくりと休まれたようで良かったです。それではどちらに向かいましょうか?」


 相変わらず豪華で美味しい宿の料理を堪能して、カミラさんに声をかけさせてもらった。


「それでは王都の案内を頼む。まずは冒険者ギルド、次にこの街の治療所、そして最後にこの街の市場の順で頼む」


「かしこまりました。それでは私のあとにどうぞ」


 今日どこに行くのかはすでに決めてある。まずは冒険者ギルドに寄る。エルミー達やティアさん達と一緒に王都まで無事に到着したことを伝えなければならない。それと初日の襲撃についてはすでに連絡をしているので、襲撃を指示した者の情報がなにか判明しているかもしれない。




「こちらがこの街の冒険者ギルドとなります」


 カミラさんに案内してもらったこの街の冒険者ギルドは、アニックの街の冒険者ギルドよりもさらに大きくて立派な建物だった。


 カランカランッ


 扉を開けると扉に付いた鐘の音が鳴る。ギルドの中にいる人達の視線が俺達に集まった。ちょっかいを出してきそうな冒険者はいないが、こちらを見てボソボソと話し合っている。


 そもそもこの世界では男性の冒険者がほとんどいないのに、今は俺を含めて3人も男性のいる集団が珍しいのだろう。カミラさんが受付の人と話すと、すぐに別の部屋へと案内された。


「初めましてソーマ様、ギルドマスターのローレイと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


「こちらこそよろしくお願いします」


 王都のギルドマスターのローレイさんは30代くらいの女性であった。アニックの街の冒険者ギルドマスターのターリアさんと比べるとだいぶ若く見える。


「Aランクパーティの蒼き久遠のみなさん、紅の戦斧のみなさん、治療士様の護衛お疲れ様でした。まだ帰りもありますが、引き続きソーマ様の護衛をよろしくお願いします」


「「「はい!」」」


 ローレイさんはとても丁寧な口調だな。俺のことは治療士として聞いているのかな?


「ローレイ殿、襲撃者達の情報について何か届いておりますか?」


「なんでも初日に闇ギルドからの襲撃を受けたようですね。アニックの街のターリア殿から連絡が来ておりますが、襲撃者達の拠点を調査してみたところ、すでにそちらはもぬけの殻で、なんの情報も得られなかったとのことです。……本当に闇ギルドの連中のやつらは逃げ足が早くてタチが悪いから困ります」


 どうやらすでにこの襲撃の依頼を受けたやつらは逃げていたらしい。この襲撃を指示した黒幕の情報は何も得られなかったというわけか。


「引き続き調査をしていますが、これ以上の情報は得られない可能性が高くて申し訳ない、という伝言をみなさんに伝えてほしいと頼まれております」


「……承知しました」


「王都のほうでもそちらの治療士の悪評は伝わっております。そしてたった金貨10枚で治療をしているソーマ様の噂もいろいろと聞いています。我々王都の冒険者ギルドもソーマ様を応援しておりますので、協力できることがありましたらなんでも申し付けください!」


「はい、ありがとうございます。その時はぜひ力を貸してください」


 なにかあった時に、冒険者ギルドマスターのローレイさんの協力が得られるのは大きい。いろいろな噂についてはあまり聞きたくないからスルーしておくことにしよう……




 冒険者ギルドへの報告が無事に終わった。とりあえず、何かあった時には力になってくれるそうなのでとても助かる。


 続けてカミラさんの案内でこの街の治療所へと移動した。この街にはなんと治療所が3つもある。これだけの大きい街だし、王都ということもあって結構な数の治療士が集まるようだ。


 国王様との謁見の前に他の治療士と接触をするのはやめたほうがいいので、外から様子を見るだけだ。治療所の様子や、どれくらいの治療費で、どれくらいの患者が来るのか、王都での治療所の様子が知りたかった。


「……うん、アニックの街の治療所と同じくらい立派だね」


「……そうだな。治療所と同等だな」


 そう、やってきた治療所はアニックの街の俺が普段治療している場所とほぼ同じような規模の建物だった。……うん、やっぱりどう考えてもあれは仮の治療所じゃないわ。アニックの街に帰ったら、あの治療所を建ててくれたデルガルトさん達に改めて感謝しよう。


 カミラさんに聞いたのだが、治療費はどこの治療所でも一律で金貨100枚に統一しているらしい。王都だから治療費が特別高いというわけではないようだ。それでも金貨100枚は立派な大金であるため、訪れる患者はそれほどいない様子だった。


 他の街の治療所を見学するのも参考になる。国王様との謁見が終わったら、他の治療士がどういう人なのか聞いてみよう。

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