第54話 お城と最高級宿


「ソーマ様、大変お待たせしました。王都での案内を仰せつかっておりますカミラと申します。ソーマ様にお会いできて光栄でございます!」


「初めまして、ソーマと申します。よろしくお願いしますね、カミラさん」


「はっ! 何かございましたら、何でもお申し付けください! ソーマ様の身は命を賭けてお守りいたします!」


「………………」


 とても礼儀正しい女性である。カミラさんは背の高い女性で、ピカピカの銀色の鎧を全身に身につけており、腰には剣を携えて俺の前に跪いてきた。これぞまさに女騎士という風貌と立ち振る舞いである。


 護衛はいらないと言ったのだが、案内人兼護衛として俺の側にひとりくらいは付けたいのだろう。あるいは、ひとりくらいは監視役を付けたいということなのかもしれない。とはいえ、王都を案内してくれる人が一緒についてきてくれるのはありがたい。


 ……しかし、この異世界にはくっころ女騎士なんていないんだよな。そんなくだらないことを考えてしまったことは、さすがにみんなに言えないな。


「それでは宿までご案内いたします!」




「これが王都ですか! とても華やかで、人が大勢いますね!」


「はい。この道が王都のメイン通りとなります」


 馬車の外に見えるこの街の光景は、この街に入る前にエルミー達が話していた通り、とても華やかで大勢の人がいた。アニックの街のように、乱雑に建物が建っているわけではなく、碁盤目状に建物が並び、建物の色や高さがある程度統一されているため見栄えもとてもよい。


 また、多くの人や馬車が行き交うのだが、このメイン通りがとても広いため、これだけの多くの人や馬車が通る余裕がある。


「やはり王都は美しくていいね! それにやはり、この街の中心にあるあの城は素晴らしいよ!」


 窓の外には街の外からは高い城壁によって見えなかった、大きな城が見える。この街の中心に聳え立つ、立派なシンボルのようだ。


 今乗っている馬車は、キラキラとした装飾がたくさんついた煌びやかで大きな馬車で、俺やエルミー達やティアさん達全員が乗っている。この街までやってきた馬車よりも、内装や椅子の柔らかさなど段違いだった。


「この街にある城が中心となっておりまして、城の中心へと行けば行くほど、高級店や貴族様達が住む住宅街などがあります」


「なるほど」


 カミラさんの案内で王都の道を進んでいく。だいぶ街の中心にあるお城の近くまで来たところで、馬車が止まった。どうやら宿に着いたらしい。




「「「ようこそ、いらっしゃいませ!」」」


「……………………」


 やってきたのはこの世界にやってきてから見てきた建物の中でも一番の大きさを誇る建物であった。そして、馬車から降りると、数十人の執事服を着た美形の女性達が総出で俺たちを迎えてくれた。


「……これが宿なの?」


「とてつもなく立派な宿だな。私達もこれほど豪勢な宿には泊まったことがないぞ」


「素晴らしい宿だね! まさにソーマ様に相応しいよ!」


「ソーマ様、よくいらっしゃいました。この宿の支配人をしておりますジュリーと申します。どうぞお見知りおきを」


「は、はい。ソーマです。よろしくお願いします」


 ジュリーさんは背の高い女性で、執事服のよく似合う女性だった。この若さで支配人というのはすごいな。……というよりここにいる従業員は全員が若い女性だ。


「ソーマ様には最上級のおもてなしをするよう仰せつかっております。全員がソーマ様の願いを叶える所存ですので、お気軽にお申し付けください」


ですか……」


「はい、この宿におります従業員はソーマ様の仰ることはすべて叶える所存ですので、どんなことでもお申し付けください」


「………………」


 さすがにその意味がわからないわけではなかった。よくよく見ると、従業員の女性は全員が美形の女性で、年齢やスタイルは様々である。獣人やエルフやドワーフなんて種族の女性もいた。そして執事服にもかかわらず、胸元は開いており、全体的にピッチリとしていて、妙に色っぽい服装である。


 おそらくだが、この宿にいる女性に手を出してもよい、という国からの策略だろう。……くそっ、ただの男でさえこの策略は効くのに、元の世界で女性と付き合ったことがない童貞の俺にとっては、更に効果は倍増だ!


「……さて、ソーマ。早く部屋へ案内してもらうとしよう」


「……疲れたし、さっさと休もうぜ」


「……ここはソーマの目に毒」


「そ、そうだね! ジュリーさん、とりあえず部屋まで案内してください」


「「「?」」」


「………………」


 ……いや、違うんだよ! 別に部屋に案内してから、女性従業員に何かしてもらうってことじゃないからね!


 いかんな、いろいろと動揺しているらしい……王都にいる間はこの宿に泊まるわけだが、果たして自分を抑えることができるだろうか。


 とりあえず俺が女性に免疫がないとを知っているエルミー達がいてくれて助かった。手を出しても問題にはならないだろうけど、王都からアニックの街に帰りが難くなるかもしれないからな。

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