第53話 王都へ到着
「おっ、王都が見えてきたぞ!」
「おお、すごいですね! あれが王都の城壁ですか」
馬車から外を見ると、そこにはアニックの街よりもはるかに高く聳え立つ城壁が見えた。遠くから見てもあの高さならば、実際に近くへいって見ると更にすごいのだろう。
「王都は久しぶりになるな。半年前ほどに依頼を受けに来た時以来か」
「へえ〜、王都ってどんな街なの?」
「実際に行ってみればわかるけれど、とにかく人が多い。それにとても華やか」
「いろいろとごちゃごちゃしているな。あと飯はうまいぜ!」
とりあえず人が多くて賑やかな街のようだ。王都というくらいだから王様が暮らしているんだろうな。
「初日の襲撃以降は何も起こらなかったが、ここからは例の治療士からの刺客がいつどこから来てもおかしくない。王都への入口や人の多い街中で仕掛けてくる可能性も十分にある。気を引き締め直すとしよう」
「了解!」
「おう!」
「貴方様がかの有名なソーマ様でありますね! 王城より、最上級のもてなしをするするよう仰せつかっております!」
「………………」
門の前にいた兵士達が一斉にこちらに向けて敬礼してくる。王都の前に到着し、王都へ入るための列へ並ぼうとしたところ、門の中から兵士達が現れて、エルミーとティアさんの冒険者ギルドカードを確認したかと思うと、すぐに別室へと案内された。
どうやらアニックの街から俺が王都に来るという連絡は受け取っているらしい。列に横入りしたみたいで、少しだけ申し訳なさが残ってしまう。
「ただ今王城へ遣いを走らせております。先に国王様より預かっております伝言をお伝えします」
「はい、お願いします」
別室でしばらく待つと、門にいた兵士達よりも立派な鎧を身に付けた女性達がやってきた。王都の精鋭の騎士団といったところだろうか。
「はっ! まず、遠路はるばる王都までお越しいただき、本当に感謝しているとのことです。王城へはいつお越しいただいても大丈夫ですが、せっかくでしたら王都を楽しんで、旅の疲れを存分に癒やしてからお越しくださいとのことです」
……なんだか、ものすごい待遇だな。普通王様への謁見とかって、向こうが日時を指定してくるものだと思っていたが、どうやらこちらの予定に合わせてくれるらしい。
「宿のほうはこちらで最高の宿をお取りしております。王都での滞在費はすべてこちらでお出しします。また、王都滞在中は、我々騎士団が護衛させていただければと思いますが、いかがでしょうか?」
……普通の来客というレベルの対応ではないな。国賓、いやそれ以上の扱いである。今のところ俺以外にはこの国にたったひとりしかいない
この待遇はとてもありがたいんだが、これだけ至れり尽くせりだと、勘違いをして増長してしまいそうで怖い。
「ご配慮感謝します。それでは宿のほうはお世話になろうと思います。護衛のほうはアニックの街から一緒に来てくれている頼りになるAランク冒険者パーティが2組いるので大丈夫ですよ」
「……承知しました! すぐに宿まで案内させていただきますので、少々お待ちください!」
少しだけがっかりしたような表情をしたあとに、騎士団の人達は部屋から出ていった。もしかしたら、俺の護衛をしたかったのかもしれない。
だけど俺は気楽に接することができるから、護衛はエルミー達やティアさん達のほうがいい。さすがにみんなの他にあれだけの騎士団と一緒に行動はできないからな。
「……ふむ、彼女達もかなり実力者のようだな。さすがは王都の騎士達といったところか。一度手合わせいただきたくもあるな」
「それに強いだけではなく、所作も気品があって美しいね。他の冒険者も彼女達を見習ったほうがいい」
どうやらあの騎士団の人達もかなりの実力者のようだ。
「それにしても頼りになる冒険者とは嬉しいことを言ってくれるじゃねえか」
「ええ、とても光栄ですわ」
「みんなが護衛してくれたおかげで、あれだけの襲撃者がきてもまったく問題にならなかったからね。みんながいてくれれば、初めて来た王都でも安心して過ごせるよ」
「……ソーマ、不意打ちでそういうことを言うのはずるい」
「安心してください。ソーマ様は必ず我々が守ってみせます!」
「ああ! そこまで信頼してくれたのだ。ソーマの期待には絶対に応えて見せるぞ!」
エルミー達もティアさん達も頼もしすぎる。でも無理だけはしないでほしいところである。
「それじゃあ俺達は一旦ここで別れるからな」
「アニックの街に帰る時はこちらの宿まで連絡してください」
「ああ、帰りもよろしく頼む」
御者であるポーラさんとイレイさんとは、一度ここで別れることになる。俺達がアレックの街に帰る時のために、馬車の整備をして、食料を集めておいてくれるらしい。その間に2人も少し王都を観光してくるそうだ。
「ポーラさん、イレイさん、お世話になりました。また帰り道もよろしくお願いします」
「おう、任せておけ!」
「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」
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