第39話 旅立ちの準備


「おお、ソーマ殿。今度はなんでも孤児院の子供達を救うためにパン屋を始めたそうではないですか! 孤児院への寄付だけでなく、まさか無償でそんなことまでされていたとは感服です。


 ワシも一度行ってみましたが、他の店のパンとは全然違ってうまかったですな。あれなら今後も売れることは間違いないでしょう!」


「いえ、無償ってわけではないですからね! ちゃんとパン窯や屋台の費用は少しずつ返してもらう予定ですから。それに毎朝家まで焼きたてのパンを届けに来てもらっているんですよ」


 なぜか街では俺が無償で孤児院の子供達に手を差し伸べているという噂が広がっていた。これからお金は少しずつ返してもらうし、毎朝パンを家まで届けてもらっているから、全然無償というわけではない。


「まあ無償と大して変わらないがな」


「ああ、結果的に孤児院の子供は腹一杯食べられるようになったしな」


「ソーマは相変わらずツンデレ」


「………………」


 みんなの中で俺はとんでもない聖人君子になっていないか? エルミー達にはこの前ちゃんと話したはずなんだけどなあ……


「それでソーマ殿、今日はどういったご用件でしょうか?」


「はい、治療所も孤児院も落ち着いてきたので、以前より連絡があった王都に一度顔を出そうと思っています」


「おお、承知致しました。こちらの方は馬車や食料など、いつでも手配をして出発できるように準備は整えておりますよ」


「ありがとうございます」


「そうですね、今日明日で準備をして明後日に出発ということでいかがでしょうか?」


「はい、それで大丈夫です」


 確か馬車でも4〜5日掛かるんだっけ。王都でも数日は滞在するだろうし、最低でも10日は掛かる長旅だ。食事は用意してくれるらしいが、俺のほうでもいろいろと準備はしておいたほうがいいな。


「エルミー達Aランクパーティである蒼き久遠のみなには引き続きソーマ殿の護衛を務めてもらうがよいな?」


「「「はい!」」」


「それとこの街の外での護衛ということもあり、蒼き久遠の他にもう1パーティも一緒に護衛についてもらう予定です」


「もう一組ですか?」


 今のところ護衛はエルミー達だけで十分だと思うんだけどな。最初に出会った時も大勢いた盗賊達をあっという間に拘束していた。


「もちろん戦闘力に関しては3人の力だけでも十分だと思っています。しかし、今回は街の外での護衛となるわけになるので、護衛はある程度多い方がよいかと。それに……」


「それに?」


「ソーマ殿は男性であるからな。同じ男性も護衛の中にいたほうがよいかと」


「……む、確かに」


「ああ、女の俺達が入れない場所もあるかもしれねえな」


 言われてみると、今はエルミー達のパーティハウスにお世話になっているからいいが、王都やそれまでの道中ではトイレなど女性が入れない場所もあるかもしれない。


 ……俺以外女性だけのこのパーティに男が加わるのは嫌だなあ、なんて邪なことを考えてしまう俺は、やはり聖人とはほど遠いと自分でも思うよ。


「……そうですね、よろしくお願いします」


「承知しました。Bランク以上の冒険者パーティで男性が2名以上いる者を明後日までに手配させていただきますね」


「はい。……それと俺がいない間ですが、もし大怪我を負った人が現れたら、例のポーションを迷わず使ってくださいね」


「承知しました。少しでも命の危険がある場合には、ありがたく使わせていただきます」


 俺が王都へ出かけている間に大怪我を負った人が治療所にやってきた場合には、迷わずに例のポーションを使って治療してもらうように伝えてある。ちなみに例のポーションについては、ギルドマスターの他に治療所で手伝いをしてもらっている職員さんの3人にも教えてある。


 骨折や火傷など、緊急性がない場合には申し訳ないが、俺がこの街に戻ってくるまで待ってもらう予定だ。俺がいない間に何かあった場合にも、例のポーションが使えるので、やはりこのポーションの有用性は計り知れない。王都にいる治療士でも同じ現象が確認できればいいんだけどな。




 そして次の日、明日王都へ向けて出発する用意のため、ユージャさんのお店に行き、これまでの発光するポーションについての検証結果を受け取った。王都には他の治療士もいるので、他の治療士さんでも同じ現象が起こるのかを確認する予定だ。


 それに加えて王都で検証するためのユージャさんが作ってくれたポーションを新たに買い込んだ。王都の人達もいろいろと検証するだろうから、今あるポーションをありったけ買い込んだ。今回の護衛には俺だけではなく、このポーションの護衛も含まれるから、やっぱり人手はエルミー達だけでは足りなかったのかもしれない。


 そのままデルガルトさんとドルディアさんにしばらく街を離れることを伝える。俺のいない間に大怪我を負った人がいたら、とりあえず治療所に運んでほしいということと、孤児院のことで何かあったら力になってほしいと伝えておいた。

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