第17話 孤児院


 冒険者ギルドからの帰りに、また3人と一緒に市場へ寄っている。今日も治療費として金貨を何百枚、日本円にして何百万円もの大金をもらった。また金貨10枚だけもらって、残りは冒険者ギルドに預けてきた。一高校生がこんな大金をどう使えというんだよ……


「今日の晩ご飯も作ってもらっていいのか?」


「うん、どうせ時間も余っているから」


 市場で晩ご飯と明日の朝食の買い物をしていく。今日は昨日よりも早い時間に治療が終わったから、まだまだ時間がある。このまま家に帰ってもすることがないからな。今日の朝食はみんなに好評だったし、晩ご飯も作らせてもらおう。


 ちなみに昼食は冒険者ギルドでも食事を販売していたので、それを購入して食べていた。


「うわっ!?」


「おっと、ごめんね大丈夫?」


 昨日の晩ご飯を何にしようか考えていたら、曲がり角で小さな女の子とぶつかってしまった。


「全然大丈夫だよ。綺麗なお兄ちゃんこそ大丈夫?」


 ……そうかこっちの世界だと男の俺のほうが、か弱いんだったよな。


「ああ、大丈夫だよ」


「悪い、ソーマ。殺気もなかったから気付かなかったぜ」


「大丈夫だよフェリス」


 というか殺気があれば気付いていたのか……


「あの、綺麗なお兄ちゃん、よかったらひとつ買ってくれない?」


 そう言いながら一本の花を差し出してくる。女の子はボロボロの服を着ており、あまりご飯を食べられていないのか、腕も細くて身体はかなり痩せている。


「ああ、せっかくなら貰おうかな」


「やったあ。銅貨5枚だよ」


 500円くらいか。花1本で500円は少し高いかもしれないけど、お金ならたくさんもらったばかりだし別にいいや。


「ありがとうね、綺麗なお兄ちゃん!」


 満面の笑顔で微笑む少女。うん、500円でこんなにも可愛い女の子の笑顔が見られるなら満足だ。


「それよりもちゃんとご飯は食べている? よかったら、そこの屋台の串焼きでもご馳走しようか?」


「ええ!? 本当にいいの?」


 おう……食い付き方がヤバいな。両親にちゃんと食べさせてもらっていないのだろうか? 小さな女の子に食べ物を買ってあげる、元の世界なら下手したら事案になってもおかしくはない。


 近くにあった屋台で銅貨5枚で売っていた串焼きを2本買って渡してあげると、すごい勢いで一気に1本を食べ尽くした。


「美味しい! お肉なんて久しぶりに食べたよ! ありがとうお兄ちゃん!」


「それはよかった。もう1本は食べなくていいの?」


「うん! こっちは帰ってからみんなに分けてあげるんだ!」


「みんな?」


「ソーマ、多分この子は孤児院の子供」


 ああ、そういうことか。この世界には孤児院があるようだ。たぶんもう1本は持って帰って、孤児院のみんなに分けてあげようとしているんだな。あまり満足に食事が取れていないのかもしれない。


「名前はなんていうんだい?」


「僕? 僕はリーチェだよ」


 おお、リアルなボクッ娘を初めて見た。いや、こっちの世界だとボクッ娘が普通になるのか。


「リーチェ、孤児院のみんなの分も買ってあげるからこれはリーチェが食べていいよ。孤児院に案内してくれるかい?」


「本当!? ありがとうお兄ちゃん! みんなすっごい喜ぶよ!」


「ごめんみんな、ちょっとだけ寄り道して行くね」


「ああ、もちろん構わないぞ。それに串焼きのお金は私達が出そう!」


「おう! こんな小さなガキ達が困ってんのは見過ごせねえな!」


「ソーマは優しい」




 そのあと孤児院にいる子供12人と職員2人の分の串焼きやパンなどの食料を買って、リーチェの案内に従い孤児院にまでやってきた。


「ここが孤児院か……」


 リーチェに案内された孤児院、それはボロボロの廃墟寸前の建物であった。


「院長先生ただいま!」


「リーチェ、遅かったから心配したよ。おや、あなた方はどなたですか?」


 建物の中から50〜60代くらいの男性が現れた。……もしかしたら孤児院の院長が子供達の食事代をガメているかもしれない、なんてことを考えていたが、そんなことはなさそうだ。この孤児院の院長もあまり満足に食べられていないのか、普通の人よりもだいぶ痩せている。


「お花を買ってくれて、お肉をご馳走してくれたんだ! みんなの分のご飯も買ってくれたんだよ!」


「初めまして、ソーマといいます。少しですが食料を寄付しにきました」


「本当ですか! ああ、こんなにも食べ物を……ありがとうございます! 院長をしておりますマーヴィンと申します。見ての通り汚い場所ですが、ぜひ上がっていってください」


「それではお邪魔します」


 どうやらこの人は俺が治療士であることはまだ知らないみたいだな。孤児院の中に入れてもらうと、外見と同じように中もあまり綺麗とは言えない部屋であった。


「うわ〜、格好いいお姉ちゃん達だ!」


「冒険者だ! かっけえ〜!」


「綺麗なお兄ちゃんもいる!」


 部屋の中にはたくさんの子供達がいた。確かにこの世界は女性が多いというだけあって、12人の子供のうち10人が女の子だ。それもネコミミとイヌミミがある獣人もいる。


 どの子も可愛らしいなあ。子供が好きな俺にとっては天国みたいな場所だ。でもやっぱりみんなあまり食べられてないのか痩せている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る