第14話 治療1日目の終わり
「ソーマ、これで集めた重傷患者は全員治療が終わった。今日はもう大丈夫だから、あとは家に戻って安静に休んでいてくれ」
「え、俺はまだ大丈夫ですよ。まだ治療を待っている人はいますよね」
結局、あの獣人の子も、お婆さんの夫も無事に治療することができた。本人もその家族も俺にものすごく感謝してくれていた。あれだけ喜んでもらえたのなら、回復魔法を使った俺もとても嬉しい。
「ああ、どちらにせよ1日でどうにかなる患者の数ではない。それよりもあれだけの重傷者を治療したのだ。エリアヒールを6回も使用している。いくら
確かに先程見た残りの患者は手足の骨折や切り傷、火傷などで、すぐに命がどうなるというわけではなさそうである。
最初の治療で一度エリアヒールを使った後、30〜40分休憩した後にまたエリアヒールを使うということを繰り返してきた。感覚的に休憩はそんなにいらないと思ったのだが、ギルドマスターや3人に止められてしまった。
「わかりました」
確かに今日が初めての治療だし、回復魔法の仕組みなんてまったく理解していないので、大人しくギルドマスターの指示に従った。
夕方になるまで治療は続き、今のところ俺の体調に問題はなさそうだが、残りの患者さんの命に別状はないのなら、みんなの言う通り今日はここで治療をやめておいたほうがいいのかもしれない。これで明日も体調が問題なければ、少しずつ治療する人の数を増やしていってもらおう。
「治療士様、治療は終わりなのでしょうか!?」
「お願いします! どうか金貨10枚での治療をお願いします! 私達には白金貨2枚なんて大金用意ができません!」
「頼む、どうか助けてくれ!」
ギルド職員から今日の治療の終わりを聞いたのか、まだ治療が終わっていない患者達が殺到してくる。
「今日の治療は終わりだが、明日以降もソーマ殿は治療を続けてくれる。もちろん金貨10枚でだ! だが今日の噂を聞いて、明日はもっと多くの重傷人が集まってくるだろう。骨折や火傷などの怪我が軽い者の治療は数日後になると思われる。すまないがもう少し待ってほしい。
それとソーマ殿にはAランク冒険者パーティの護衛がついている。街などで出会っても騒ぎ立てて人を集め、ソーマ殿の護衛の邪魔をしないようにしてほしい。このことをしっかりと他の者にも伝えてくれ」
ギルドマスターのターリアさんから説明が入る。そうか、確かに街の中で治療してくれと頼まれて、それを治したら更に人が集まって、襲撃者に襲われやすくなってしまう。
「分かったぜギルドマスター! ここにいないやつにも伝えておく!」
「お前ら、ソーマ様に迷惑だけはかけないようにするぞ!」
「ソーマ様、明日どうぞよろしくお願いします!」
どうやら今日治療できない怪我人も納得してくれたらしい。暴動みたいにならなくて本当によかったよ。
「ソーマ、とても格好よかったぞ!」
「ああ、すげえ活躍だったな」
「すごい回復魔法だった」
「ありがとう、みんなも護衛してくれて助かったよ。これからもよろしくね」
冒険者ギルドからの帰り道をエルミーとフェリスとフロラの4人で歩いている。たまに遠くから俺の噂を聞いた人達が何か話しているが、今のところは誰も近付いて来ない。
それに今俺は金貨100枚もの大金を持っている。今日治療した人は50人もいた。1人金貨10枚で合計金貨500枚、たったの1日で日本円にして500万円もの大金を手に入れてしまったのだ。
後払いにした人の分は断ったのだが、ターリアさん達冒険者ギルドが先に払ってくれた。残りの金貨400枚は冒険者ギルドに預けてある。……というか単純に金貨500枚とか重過ぎて持てない。
やはり治療費は金貨10枚でも高いよな。とはいえ、いくらこの世界が危険な世界だからといって、そう毎日何十人もの重傷人が出るとは思えない。今いる人達の治療が終わったら、多くても1日に数人くらいだろう。
このあたりの治療士の治療費が高くて、今は治療できなかった人が大勢いるだけで、毎日金貨数百枚を得られるわけじゃないからな。
「それじゃあ今日はいろいろと市場を回ってみたいんだけど大丈夫かな」
「ああ、ソーマのことは私達が守る!」
「そうだぜ! 護衛は任せておけ!」
「ソーマに近付くやつらは皆殺し!」
3人とも頼りになる。うっかり惚れてしまいそうだ。あとフロラ、近付くだけで皆殺しはやめようね。
「やっぱりすごいな〜」
昨日も市場に寄ったのだが、必要最低限の服とかを買うだけだったからな。大金も持っていることだし、今日はいろいろと買ってみよう。それにお世話になったみんなにもお礼がしたい。
「今日のご飯は俺に奢らせてよ。昨日はモンスターや盗賊から助けてもらったしね」
「いや、か弱い男を助けるのは女として当然だ。それに男性であるソーマにご馳走になるわけにはいかないな。むしろここは私達が出そう!」
……そうか、こっちの世界だと男性が女性にご飯を奢ったりはしないのか。むしろ逆になるらしい。
「……俺の故郷では男性が女性に奢るのが普通なんだ。だから、今日は俺にご馳走させてよ」
「っ!? ソ、ソーマ! か、顔が近いぞ!」
「あ、ごめん!」
俺の故郷の話を聞かれないように、エルミーの耳元に話しかけたのはまずかったらしい。確かに俺も女の子が耳元で話しかけたらドキッとしてしまう。
「……ずりーな」
「……エルミーだけずるい」
そんなこんなで可愛い女性3人と買い物を楽しんだ。結局俺が押し切って3人に屋台でご馳走させてもらった。可愛い女性とデートをしているようで幸せな時間を過ごすことができた。まあ3人とも俺の護衛でついてきてくれているという現実はこの際置いておこう。
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