第10話 事情説明


 昼にも見てしまったエルミーの大きくて立派な美しい胸、そしてエルミーよりも更に大きいフェリスの胸、まだ成長期なのか少しだけ膨らみ始めているフロラの胸。リビングのドアを開けた先には夢のような光景が広がっていた。


「ああ、すまない。いつも家の中でみんな上着は着ていないんだ。今日からはソーマもいるんだったな。これは失礼した」


「別に女の胸なんて見ても面白くもなんともないだろ」


「ソーマは大袈裟。気にしなくていい」


 いや個人的には大歓迎なんだけど、これからしばらく3人と一緒に暮らすとなると問題しかない! エロ本や動画で見たことはあっても、リアルな女性の胸を見たのなんて初めてだ!


 いかん、また興奮してしまう! ここは別のことを考えろ! 男の僧帽筋がひとつ、男の腹直筋がひとつ、男の上腕三頭筋がひとつ……って駄目だ、刺激が強すぎてまだ治るのに時間が掛かる!


「お願いですから、まずは3人とも上着を着てください!」


「あ、ああ、すまない」


「わ、わかったよ」


「了解」


 3人とも俺があまりにも必死なので、素直に上着を取りに自分の部屋に戻ってくれた。今のうちに俺の心臓も少し落ち着いてくれそうだ。


 とりあえずこのまま黙っていたら、人並みの理性を持っているはずの俺でも何か問題を起こすに違いない。少なくとも3人には俺の事情をある程度説明しておかなければならない。




「すまないな、見苦しいものを見せてしまった」


 3人とも上着を着て、リビングのテーブルに向かい合って座っている。……Tシャツが薄いため、2つの突起の場所が分かってしまうのだが、なんとか理性を保つしかない。


「みなさんには伝えておきたいことがあります。実は俺の故郷についてなんですが、みなさんの国とは少し……いえ、だいぶ異なっていて男女の力とか貞操観念が正反対なんです」


「んん、どういうことだ?」


 うん、案の定3人ともよく分からないという顔をしている。


「えっとですね、信じられないかもしれないですけど、俺の故郷では男性のほうが力が強くて、仕事などは主に男性が行い、女性が料理や家事をするんです」


「はは、なんだそれ? そんな国があるわけねえじゃんかよ」


「……フェリス、ソーマの言っていることは本当」


「はあ!? マジかよ!?」


 こういうところで嘘か本当かが分かってくれるのはありがたいな。魔法の力か何かなのだろうか。


「さらにですね、俺の故郷では女性のほうがあまり肌を見せず、男の肌なんてまったく価値なんてありません」


「「「はあ!?」」」


「みなさんからしたら、男の俺が上半身裸でいることはおかしいですよね」


「あ、当たり前!」


「俺からすると女性のみなさんが上半身裸でいることがおかしいんです。……はっきり言ってしまえば、3人ともとても綺麗な女性なので、めちゃくちゃ興奮してしまいました」


「「「興奮!?」」」


 話している俺のほうが恥ずかしくなってきた。というかどう考えても現在進行形でセクハラしているんだよなあ。あなた達を見て興奮しているって、どう見積もっても変態宣言である。


「ソ、ソーマが私の胸を見てこ、興奮!?」


 あ、フロラがこんなに慌てているのを見るは初めてな気がする。白い肌をあんなに真っ赤にしてとても可愛らしい。


「はい、なので俺が理性を失って、みなさんを押し倒してしまってもおかしくないんです。ですので、どうかあまり肌を見せないようにお願いしたいです」


「ソ、ソーマがお、俺を押し倒す!?」


「実際に俺は非力なんでそんなことできっこないんですけれど、みなさんがそれだけ俺には魅力的に見えるということを覚えていてほしいんです」


「みみみ、魅力的!?」


 正直に俺の本音をぶつけてみたのだが、やっぱり受け入れられないかな。護衛依頼を辞めるとか言われたらどうしよう……


「こんなふうにみなさんを邪な目で見てしまって、申し訳ないと思っています。本当にすみません」


「い、いや、気にすることはない! そこはむしろ嬉しく思うぞ! ……あ、いや、そうではなくてだな!」


「あと、もし俺におかしなところがあったら教えてほしいです。俺も故郷にいた頃の感覚で、上半身裸で家の中をうろついたりしてしまうかもしれませんから」


「そ、それはやめてくれ!? お、俺だって理性が持つかわかんねえよ!」


「それはそれで俺としても嬉しいんですけどね」


 むしろ押し倒してほしい。


「んな!?」


「ばば、馬鹿なことを言うな! そんなことを女ならともかく男が言うものではない! あ、いや、ソーマの故郷では男性がそういうことを言うのだな……くっ、ややっこしい!」


 まあ、そうだよね。俺でもまだ混乱するもん。


「……ソーマと出会った時から天然と思っていたけれど、ようやく理由がわかった。それであんなに男性として無防備だった」


「そういうことですね。なので外でも常識外れなことをしたら、フォローしてくれると助かります。あとこのことは他の人には秘密にしておいてください」


「……ソーマの事情は理解した。誰にも言わないし、できる限りフォローすると誓おう」


 よかった、どうやら見限られたわけではなさそうだ。


「ありがとうございます。これからいろいろとご迷惑をかけると思いますが、どうぞよろしくお願いします」


「こちらこそ、至らないところもあると思うがよろしく頼む。……あと頼むから上半身裸になるのだけはやめてくれよ」

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