「キセキ」
見て! ここからもアネモネの花が見えるんだよ――え? よくアネモネのこと、覚えていたなって?
そりゃね。だってアネモネは、君との思い出の花だったから。
前はさ。アネモネを見る度に、君を思い出してつらかったんだ。
でも、今はもう平気だよ。だってまた、君に会えたんだもん。
照れるな照れるな! こっちも恥ずかしいでしょう? もう、君は相変わらずだなあ。
ねぇ。アネモネが集まって咲いていると、なんだかカラフルな絨毯みたいじゃない?
飛び込みそうだなって……そんなことを思うわけないでしょ! 一応ここ、二階だし。
せっかく君に再会したのに、命を投げるなんてありえないじゃん。
ああ、ねえそういえば……オレンジや黄色には花言葉は無いんだっけ。ならば図々しく私が決めてしまおうじゃないか。
ゴホン。では、発表します!
恋の軌跡、愛の奇跡。
他にも様々な意味を含む――「キセキ」。
どうかな?
ちなみに言っておくと、これは急に決めたんじゃないよ。
君に指摘されて花言葉を調べ直している時から、ずっとその言葉があったら良いなって思っていたからね。
だって君と再会した日。本物の生きたアネモネから、そんな言葉を受け取っていたんだもの。
そんないろんな「キセキ」のおかげで、私には君との今があるんだからさ――。
そう。これは優しく美しい愛の囁きなどではないし、儚く苦しい恋の物語でもない。
アネモネの花言葉と歩む、私たちの物語。
本編、完。
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