第二章:女王の瞳(4)

「ああ、どうか信じてください。あたしは誓って潔白なのです!」

シスレは、鉄格子に両手でしがみつき、地下牢の門番に必死に訴えました。

「女王様にお聞きになってください。そうすれば、こんなこと、ひどい誤解だってわかりますから」


「うるさい、このドロボウ娘め!」

門番は、手にした警棒を鉄格子のスキ間に突っ込みざま、シスレの腹を|グイッと押しました。


シスレの華奢きゃしゃな体は後ろに吹っ飛び、カビだらけの湿った床にハデに尻モチをつきました。


シスレは、痛みとショックで、こらえきれずにシクシク泣きだしましたが、門番は舌打ちをして、

「よりにもよって、王家の秘蔵の髪飾りを盗もうだなんて。可愛い顔して、とんでもないバチアタリだ!」

と、いまいましげに怒鳴りました。




シスレの兄ブライは、大あわてで、お城の地下牢に駆けつけました。

「おお、シスレ、これはいったいどうしたことだ?」


「ああ、来てくださったのね、お兄様! どうぞ、あたしを助けてちょうだい」

シスレは、パッと顔を輝かせながら、兄に真実を話しました。


そこで、ブライは、血相を変えて女王様の居室に飛んでいきました。

「恐れながら、女王陛下。このバカげた誤解を即刻といてくださいませんか?」


「いいえ、ブライ。残念だけれど、シスレはたしかにワタクシの大切な髪飾りを勝手に宝物庫から持ち出したのよ」


「それは、陛下がシスレにお命じになったことではありませんか!」


「いいえ、そんなはずはないわ。それこそバカげた誤解よ、ブライ。あのブラックオパールの髪飾りは、特別な行事のある日にしか使わないシキタリですもの」

女王様は、とりつくしまもなく、そう答えました。

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