第二章:女王の瞳(3)
みごとな金細工のほどこされた鏡台の前に座り、女王様は、じっと鏡の中を見つめていました。
自分の顔を眺めるふりをしながら、ほんとうは、女王の長い金髪を丁寧にクシけずり巻いているメイドの明るい
――ああ、いっそのこと、シスレの瞳をワタクシの瞳と入れ替えることはできないものかしら?
女王様は、ふっと頭に浮かんだ
――どうしてもワタクシのものにならないのならば、いっそ、この世から消えてしまえばいいのに……。
よもや気高く美しい女王様の、そのような胸のうちを知るはずもなく、シスレは、朗らかにたずねました。
「今日は、どの
「そうね。それがいいかしら……」
女王様は、きれいに整えられた巻き髪のスソをたわむれに指先でクルクルもてあそびながら、うなずきかけましたが、
「いいえ、たまには趣向を変えましょう!」
と、ふいに楽しそうな声をあげて、
「宝物庫から、ブラックオパールの髪留めを取ってきてちょうだい。銀のフチ飾りにルビーをあしらってある、あの髪留めよ」
「あら、女王様。あの髪留めは、特別な行事のときにだけお使いになる決まりでは?」
「かまわないわ。今日は、なんだか特別な気分なのよ」
「まあ、それは素敵ですのね」
シスレは、親愛なる女王様の美しい笑みにつられて、可憐な顔をほころばせました。
そして、はずむような足取りで宝物庫に向かうと、女王様のイイツケどおりの髪留めを持って戻りました。
すると、鏡台に向かったままの女王様は、もう、別のエメラルドの髪留めを金色の髪に付けながら、
「やっぱり、今日はこちらの髪留めにするわ。ごめんなさいね、シスレ」
と、優雅に肩をすくめました。
シスレは、
「では、このブラックオパールの髪留めは、すぐに返してまいりますね」
こうして、シスレは、ふたたび宝物庫に向かおうとしました。
ところが、女王様の部屋をでたとたん、2人の番兵に出合い頭に取り押さえられ、頑丈な縄で両手をつながれると、そのまま地下牢に引きずり込まれてしまったのでした。
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