第二章:女王の瞳(2)
シスレが部屋におもむくと、女王様は、ハッとしたように彼女に魅入りました。
城内で見かける上品で気取った貴族の子女たちとはまるで違う、ういういしく可憐な魅力が、シスレにはありました。
それに、なんといっても、その瞳の輝きの見事なことといったら……。
女王様の瞳よりも、もっと大きくて、女王様の瞳よりも、もっと鮮やかに澄みわたる緑色の虹彩。
女王様は、我知らずイラダチを覚えました。
ですが、それを誇り高い微笑みの下に素早く隠して、シスレを優しく手招きしました。
それから毎日、シスレは、コマネズミのようにくるくると、女王様によく仕えました。
もとより良く気のつくうえに、素直で朗らかな娘でしたから、先輩のメイドや側近、大臣たちからも大変に気に入られました。
年ごろの貴族の青年たちからも、シスレの屈託のない愛くるしさは、すぐに話題となりました。
身分の差をいとわず求婚を考えだす者も、1人や2人ではないほどでした。
女王様も、オモテムキは、シスレにとても親切な態度をとりました。
オモテムキは、です。
女王様は、じつのところ、この素直で可憐で明るい働き者の娘が、まったく鼻について仕方がありませんでした。
平和で豊かな王国の、あらゆるすべてを手中にすべる高貴な女王でありながら、たかが平民あがりのメイドひとりが目ザワリで仕方ないのです。
平和で豊かな王国の、あらゆるすべて……。
宝物庫にあふれんばかりの、素晴らしい宝石のコレクション。エトセトラ・エトセトラ。
どれもこれも、女王様にとって、かけがえのない大切な宝物です。
けれども、それらのどれにも増して稀少で誇れる宝物は、女王様ご自身の『瞳』だったのです。
それなのに、シスレは、女王様のいちばん自慢の宝物より、もっと魅惑的な宝物を、これ見よがしに輝かせてみせるのです。
可憐な小麦色の顔を美しく彩る2つのエメラルド。大きな緑色の双眸を。
たかが平民の小娘が、国じゅうのあらゆる宝物を所有する女王様にも増して見事な宝物を持っていて、毎日それを目の前に見せびらかすのですから。
いかに慈悲深く
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