第1章・女王の食卓(6)

そして、運命の晩餐ばんさんの時を迎えた。

  

  

それは、だれの予想にも反して大成功だった。

  

  

「ああ、素晴らしいわ、フォンドボウ。スパイスは、少しばかりキツすぎるけれど……」

とろけるような恍惚こうこつとした微笑みを浮かべながら、女王様は、夢中でシチューをすすった。

「このウサギの肉は、オマエの父親が目利めききしたのより、ずっとジューシーで風味がいいわ!」

  

フォンドボウは、包帯で覆った左手をさりげなく背中に隠しながら、洗練されたシグサでお辞儀をすると、青ざめた頬を満足げになごませた。

「ええ、それは、もう。父の目利きした肉よりも、ずっと若くて食べごたえのあるウサギですから」

  

  

  

それから、また、1年あまりの月日が流れた。

 


フォンドボウは、ようやくできあがったばかりの特注の大ナベを、巨大なカマドの火にかけて、たっぷりの煮汁をグツグツとわきたたせた。

  

それから、片腕と片足しか残っていない体で、ナベのフチに引っ掛けたハシゴにスガリつき、どうにかテッペンまで登りつめると、

「愛しい、愛しい女王様。これでオレは、永遠にアナタのおそばに……」

そうウットリとつぶやきざま、煮えたぎるシチューの中に身を投げた。

  

  

      第一幕「残酷な女王の食卓」END

  

  

  .

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