ラのロクジュウサン「巧みな鎖」

「た、黄昏さん!?」

 劉生は目を丸くした。

 理性を取り戻したはずの黄昏であったが、言っていることは滅茶苦茶であった。

「危ないですよ……」

「どうなるかだなんて関係ないし、興味もない! 知ったことか!」

 黄昏は吠えた。


「そこっ!」

 皆の意識が黄昏へと向いている隙に、桜花は黄泉との距離を詰めていた。そして、横薙ぎに一閃──木刀を黄泉に向かって放つ。

「おっとっ!」

──寸前で、天井から鎖がジャラジャラと垂れてきて二人の間に壁を作った。鎖のせいで僅かに威力は弱まってしまったが、桜花の一撃は鎖もろとも黄泉の脇腹に打ち込まれた。

「痛っ!」

 吹っ飛ぶ程の威力はなかったが、追撃を恐れた黄泉は後ろに飛び退った。──と、安心させて天井の鎖を軸にして振り子の要領で反動をつけながら戻って来た。

「えいっ!」

 鎖の壁を引かせた黄泉はその勢いのまま桜花を蹴り飛ばしたのであった。

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