ラのロクジュウ「侵入者の正体」

「何かあったのか!?」

 ドタドタと廊下をこちらに向かって駆けてくる足音と叫び声──。


「新手か……」

 気分の良いところで水を差されたように感じたらしく、フードを被ったその者は舌打ちをした。

──まぁ、此処はいわばその者からすれば敵の本マル。まだまだ獲物は沢山居るのだ。

「……楽しみねぇ……」

 それを想定した多くの鎖であり、武装なのである。


 フードを被ったその者が宙吊りのまま一回転をすると、梁に巻き付いていた鎖が外れる。その者の体は支えを失って落下したが、床板の上へと軽やかに着地した。

 鎖たちはまるでそれぞれ意思を持っているかのように、一斉にその者の衣服の中へと引っ込んでいった。


──ドタドタドタッ!


 近付いて来る足音の方に、フードを被ったその者は顔を向けた。


 角を曲がって──そして、その足音の主が姿を現した。


「大きな音がしたけど、大丈夫ですか?」


──女?

 女性の声に、自然と黄泉の視線はそちらに向いた。

 桜花、劉生と廊下を走って来る面々を視界に捉え、そして──フードを被ったその者の視線が背後の黄昏で止まる。



「お姉……ちゃん……?」

「えっ? ……黄泉?」


 その者のフードがハラリと捲れ、中から黄泉が現れた。

 黄昏と黄泉──意外な場所での再会となった。

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