ラのゴジュウナナ「嬢の接客」

 とある建物の一室──。

 照明は赤やピンク色などの加工が施されており、淫靡な雰囲気が醸し出されていた。

 そんな部屋の中でベッドに腰掛けて足を組んでいる若い少女が一人──。身につけているのは下着のみで、少女は肌の露出の多い格好をしていた。

 虚ろな目をしたその少女は──少弐黄泉。少弐黄昏の妹である。


 黄泉の視線の先には、床を這いずり回る上半身裸でパンツ一丁の男たち。年齢層は黄泉よりも一回りも二回りも上で、中には老齢の男までもいた。

 小太り男からヒョロヒョロの優男まで──幅広い層の男たちが黄泉と同じ様に虚ろな目をして奇行に及んでいた。


 第三者が見れば、おぞましい光景として吐き気を催したであろう。


 しかし──当事者たちは何の感情も抱いていない様子である。

 恥じらいも、高揚感も何もない。無心のまま、ただただそれをやっていた。

 黄泉が足を突き出すと、男がそれに食らいつこうと口を開く。食べられる前に黄泉は足を引っ込めた。


「実に残念だなぁ……」

 誰ともなく、黄泉は一人呟いていた。

「駒が二つ駄目になってしまったし、まさか、そんな……ね」


 黄泉の言葉に反応を示す者はこの異質な空間の中には誰も居ない。黄泉の言葉だけが、虚しく反響する。

 次いで、老齢な男が口を開いた。

「まずい状況だな、それは……」

 代わって優男が喋り始める。

「放っておくわけにもいかないか……」

 小太りの男が呟いた。

「始まる前に、手を打たなきゃね……」


 ベッドから黄泉は飛び降り、立ち上がった。

 そして、虚空を見詰める。

「お姉ちゃん、か……」

 思い出したかの様に呟いた黄泉は口元を歪めた。


「正義の遂行の為に、邪魔者は排除するだけだ。……ばいばい、お姉ちゃん」


 黄泉はベッドに掛っていたマントを翻し、肌を隠すと歩き出したのであった。

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