ラのゴジュウゴ「注目の的」

 桜花をそこへ連れて行くことは躊躇したものだが──それでも、力になりたいと言って聞かなかった。

 助言だけではなく助力までも桜花に借りることになってしまったが、心強い限りである。


 協力者になってくれた桜花を、劉生は八百万九十九組の屋敷へと連れて来ていた。


 怪しい門構えの屋敷の中へ連れ込もうとしているのだ。それなりに覚悟は必要であろうが──桜花は何の迷いもなく、劉生の後に続いて屋敷の門を潜ったのであった。

 それ程に、桜花は劉生のことを信頼してくれているらしい。

──或いは、超人的な身体能力を持っている桜花からすれば組一つなど恐れるに足りない存在ということの表れなのかもしれない。さすがに、前者の意味であろうが──。


 一歩敷居を跨ぐと、組員たちから警戒の眼差しが向けられた。

 劉生の顔は助野の客人として覚えてくれている様だが桜花の顔は──警戒を強め、様子を見ているらしい。

 そんな鋭い視線を向けられたが、桜花は顔色一つ変えることはなかった。


 そして、歓迎されないムードの中、劉生は桜花を案内して助野の元へと向かったのであった。

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