ラのヨンジュウナナ「炸裂する力」

 〜〜〜〜〜




 姫野家の世界に足を踏み入れることが出来るのは、それに関連した選ばれし者のみである。

 ここを訪れる者は、皆何かしらの能力に目覚めることになる。


 再生力を持つ劉生銀河──。

 爆発を起す金髪の男。

 黄昏とて──例外ではない。

 偶然にも、黄昏は金髪の男との戦闘において自身の能力が開花した。


 それは──『反射』とでも言うべきであろうか。

 黄昏は金髪の男が繰り出してきた爆発を、全て他へと返した。なかなか黄昏の居場所が割れなかったのも、そのせいである。

 暗闇の中で爆発を頼りにしていた金髪の男も、お陰でなかなか黄昏の位置を掴むことが出来なかった。




 〜〜〜〜〜




「ぶっとびやがれぇえぇえぇぇええっ!」

 スキンヘッドの男がパワーを溜め息、前方に転げている劉生に向かって渾身の一撃──気砲を放った。

 遮蔽物は何もない。

 一直線上に劉生がおり、フルパワーの一撃が真っ直ぐに向かって飛んでいった。


──ピョーンッ!


 ところが、それを遮る様に何者かが飛び出してきた。

 階段を駆け上がってきたその者は跳躍し、勢いのまま劉生と気砲の間へと割って入ったのである。

 少弐黄昏──その人である。

 無論、狙ってそうしたわけではない。

 上階で何が起こっているのかなど、黄昏には分からなかった。ただ、たまたまそうして来たところ、タイミング悪くその場に飛び出してしまったのである。


 ただそれは──スキンヘッドの男にとっては災難と言えた。事故の様なものである。

『反射』の能力に目覚めた黄昏が、不意に目の前に飛び出して来たのである。

 まるで天災──誰が、そんなことを予期できたであろうか。


 一瞬の間に、そんな異常事態が起こったのである。


 気砲は飛び出して来た黄昏に当たる。

 しかし、すぐ様気砲は軌道を変える。

 元来た方向へと帰って行き、主の元へと戻って行く。


「ぐぁああぁぁぁあああっ!?」

 そのことを、スキンヘッドの男が認識する間すらなかった。

 次の瞬間には、スキンヘッドの男は自らが放ったはずの気砲によって吹き飛ばされてしまうのであった。


──ドガァアァアアンッ!


 しかし──驚いたのは、スキンヘッドの男だけではなかった様だ。

「……えっ?」

 黄昏は何が起こったのか分からず、目を瞬いていた。

 知らぬ間にその能力が自らを守って相手を倒し、建物を半壊させたことに数秒遅れて気が付くこととなる。


「う、うぅ……」

 困惑している黄昏の耳に、スキンヘッドの男とは違ううめき声が聞こえてきた。


 声のした方に顔を向けると、そこに横たわる劉生の姿が見えた。

「あっ、劉生君っ!」


 そして慌てて黄昏は、劉生の元へと駆け寄ったのであった。




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