ソのキュウ「侵入者の襲撃」
その夜──。
早速、姫野家の呪いとやらが劉生の身に降り掛かることとなる。
不可解な出来事が彼の身に起こったのだ。
いや──或いは、それは全て単なる夢だったのかもしれない。そんな風に思える程に、劉生はとても奇怪な出来事を体感したのであった。
姫野家のお屋敷を後にした劉生が家に帰ったのは、橙色に空が染まった夕暮れ時であった。
引っ越しと町内を探索して歩き回った疲れが、家に帰った瞬間にどっと押し寄せてきた。
両親から食事に誘われたが──それよりも何よりも疲労感や眠気が余りにも強く、劉生は真っ直ぐに自室のベッドへと向かったのであった。
「なんだ……これ……?」
ベッドに寝転がり、天井を見上げる劉生の視界がボヤケていった。まるで睡眠薬でも盛られているかのように、押し寄せて来る眠気に抗うことが出来なかった。
余程、疲れが溜まっていたのだろう。
劉生は重たい瞼を開くことが出来ず、すぐに寝息を立て始めたのであった。
◇◇◇
「あれ……?」
劉生は目を覚まし、体を起こした。
知らぬ間に眠ってしまっていたらしい。
目を擦り、部屋の中を見回す。
──真っ暗だった。
いつの間にか日が暮れて、夜になったらしい。
ベッドから出て部屋の扉を開ける。
──違和感がした。家の中に人の気配がない。
廊下に出て、呼び掛けてみる。
「父さん、母さん?」
──返事はない。
それに、どの部屋も電気が消えている。全体的に真っ暗であった。
「出掛けたのか……?」
──留守ということは、寝ている息子を家に置き去りにして両親二人で外食にでも行ったのであろうか。
劉生は呆れてしまい、目を細めた。
まぁ──寝ていたのは自分なのだ。しかも無自覚なので、例え声を掛けられていたとしても目を覚まさなかった可能性は十分にあるだろう。
逆に、起きない劉生の方が二人に呆れられて、置いてきぼりを食らったのかもしれない。
──とは言え、高校生の劉生とて、置いてきぼりを食らったからといって、それに対してとやかく言うつもりもない。
それよりも今重要なことは、両親が外出しており、この家の中には劉生しか居ないという事実を認識することであった。なんせ、家の中に両親は居ない。──それなのに部屋の奥から物音がしたからである。
劉生は体を強張らせ、耳を澄ました。
何の音であろうか──?
金属が擦れ合うようなガシャンガシャンという音が暗闇の中に響いている。
──間違いなく、誰かが居る。
もしかしたら、泥棒かもしれない。
──しかし、泥棒にしては妙だ。やけに物音を立てて慎重さがない。もっと気配を消して、家主や近隣の者たちに気付かれないように行動をしそうなものであるが──。
──ガシャンッ、ガシャンッ!
侵入者は遠慮なく金属音を鳴らして、どちらかといえば存在感を激しく主張しているように思えた。
何れにせよ──相手が何者であらうとも、その正体が分からないので恐怖の対象でしかない。
見て見ぬふりをしても良かったのだが、新居を空き巣に荒らされたなど両親が悲しむ顔しか思い描けなかった。
「仕方ないか……」
勇敢にも、劉生は侵入者と立ち向かう決意をする。
先ずは警察に通報──するのも忘れ、一度部屋に戻って見を守れそうなものを探すことにした。
何となく、部屋に飾っていた木製のバットなどうってつけではないか。野球もやらないのにオブジェクトとして飾っていたものが、此処に来てようやく日の目を見ることになったようだ。
武装しつつも得体の知れない相手に劉生の体は強張ったものだ。ナイフでいきなりプスリと刺されたらどうしよう──相手が銃を持っていたら、どう切り抜けるか──。
様々なイメージが頭の中を巡り、劉生は慎重に行動を開始したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます