02 吸血鬼の青年
夕暮れに染まる街、日陰が差し込み暗がりになりつつある路地、そこで疼くまる青年はどうやら
少女の脳内に一瞬過ぎる可能性、此処最近の若い女が狙われる
生憎髪も服も黒い、何処か怪我をしていてもよく分からない。しゃがみ込みジッと視線を向ければ赤い瞳が覗き見る。
「…そういうお前は
「嗚呼その通り。質問があるのだがいいだろうか」
「……は?……なんだよ」
「最近此処一帯で
瞳は少女の首から下がる十字架に目が行く、
否定するつもりもなく頷きながら質問を一つ、面倒そうな表情を浮かべられながらも確認を取りたいと真っ直ぐに視線が向かう。
じっと青い瞳が青年を捕らえる。小さく息を吐く音が耳に届けば、壁に大きく身体を預けながら唇が開かれる。
「…知るかよ。俺はついさっき此処に着いたばっかだよ、別の
「……ふむ、そうか」
「…
「いや信じるよ。君がそう言うなら」
「………は?」
半ば諦めた様な言い方、
まじまじと目の前の少女を見るが少女は至って真面目な顔で答えている、嘘をついている可能性もあるが特に何かをする様子も無い。
ごそりと懐を漁る様に身体が強張るが出てきた物はハンカチ一枚、そっと汚れている顔を優しく拭くように押し当てられますます混乱するばかり。
「怪我をしているだろう。手当をしよう、君歩けるか?」
「…お前自分が何言ってるか分かってんのかよ、俺は
「嗚呼知っているが」
「
「私が探している
自身が一体何を言っているのか自覚はあるのか、青年の表情はそう語っている。しかし少女は一体何をそんなに気にしているのかと首を傾げるばかり。
しかし真っ直ぐな少女の瞳に警戒をしている自分が馬鹿らしく感じる、そもそも少女の言う通り、そんな暇があるなら生き延びる為に噛みつき血を貪るだろう。
瀕死に近い
渇いた喉が小さく鳴りそうになるのを無理矢理押し込めながらも、くたびれた今の状態、目の前の
いざとなれば少女の言葉通り噛みちぎればいい。
「……いいのかよ、俺を助けるって事は俺を追ってる
「そうなるな。私は他の
「…………変な
「よく言われるよ。私は変わっていると、だがまぁ変わっている
顔を汚れをハンカチで拭き取りながらも全く気にしていない様子の少女に思わず笑ってしまいそうになる。
変わった
ただ向けられるのは気遣う様子だけ。大きく息を吐きながら身構えていた身体の緊張の糸を解く。
噛みちぎるのはよそう、と頭の隅で考えながらじくじくと痛む脇腹を抑えながら
「…腹減ったからなんか食い物くれ」
「…………血とかを要求される気でいたんだが予想外な言葉に少し動揺してしまった」
「このぐらいの怪我なら飯で十分なんだよ。だから助けてくれんなら食い物くれよ、
「私を変わっていると言うが君も少し変わってるよ。この状況で血ではなく食べ物を要求されたのは驚きだ、だが
この状況でそれなのか、とまじまじと見つめながらもそれが欲しいと言うならばと腰を上げつつふと気になってしまう。
「私の名前はイヴ。
イヴ。少女は自身の名を告げ一度この場から去りながら急足で青年の求める食べ物を取りに行く。
去ったのを確認しながら何処までも変わっていると思いながらも、つい笑いが込み上げてしまう。
律儀に名を告げた少女の名を紡ぐ様に唇が動く。
───イヴ、と。
祓魔師は吸血鬼に恋をする 海色 @miro_ro
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