祓魔師は吸血鬼に恋をする
海色
01 祓魔師の少女
世に
そして此処にも
まだ大人になりきれていない白髪の少女、宝石の様な青い目と首からぶら下がっている十字架の首飾りを揺らしている。
こつこつと靴音を響かせながら少女の目的地は寂れた酒場、酒も飲めない少女が一体何の用事なのか、古びた扉を開ければ客はいない。しかしカウンターに近付けばふわりと浮かぶ煙に溜息を一つ溢す。
「客が来たのに煙草とはいい身分じゃないか」
「…んー?おぉ?なんだお前さんかよ、ならいーじゃねぇの」
「だめだ。そもそも私は煙草の匂いが好きじゃない、吸うなとは言わないが私が来た時は消してくれ」
「はいはい、っと」
客か、と視線を向けつつも顔見知りの少女にそのまま煙草を吸おうにもそう上手くいく筈もなく。ゆっくりと起き上がりながらも少女の要望通りに煙草の火を消す。
少し煙たいと思いつつも消してくれた事に感謝する様に頭を下げ近くの椅子に座れば、この店の店主はぱさりと紙を机の上に広げる。
「最近やたらと
「……既に被害者も出ているか、軽傷二人重傷三人。……死者一人、か…この死亡者はつい最近の様だな」
「流石に死者を出すのはいけないよなー、と。そ、つい最近の被害者、18歳の女、夜道を歩いていた時に襲われ、そのまま死亡したらしい」
差し出された紙に記載されているのは此処周辺で起きている若い女を襲う
全員が全員20歳未満であり、しかも全員が女である。どうやら選り好みする
これ以上被害が広まる前に早急に叩かなければならない。
そろそろ夕方に差し掛かる時間帯、すぐに出会えるとは限らないが囮をした方が手っ取り早いだろう。
「情報提供感謝する。この依頼を受けよう」
「…お前さんに頼ってるの俺だけどさぁ、いいのかよ。この
「好都合だろう。私は一応その若い女に値する訳だ、囮が私で済ませられてラッキーだ。一般市民を危険に晒すわけにはいかないからな」
「お前さんは?」
「私は
店主の心配を他所に少女はすぐさま腰を上げる。言っても聞かない様子からしてこれ以上止めても無意味ではあるが、それでもやはり店主には気掛かりな事がある。
少女は確かに
少女への
「…お前さんもバディとか組めばいいんじゃねーの、そしたら怪我も少なくなるだろうに」
「心配してくれてありがとう。だけど私は誰かと組む気は無いよ」
きっと誰かとバディを組めば楽だろうに、しかし少女は拒む。まだ少女である為に他の
それを知っているのだろう、無理に他の
なによりも少女は別に全ての
実際にまだそんな吸血鬼と出会った事はないが、きっとどこかにいるのだろうと思っている。
少女はもしバディを組むのならばそんな吸血鬼と組んでみたいと、僅かに願っている。
そんな酔狂な
こつり、とふと脚を止め夕陽に照らされる狭い路地に視線が向けられる。
人気の少ない所、惹かれる様にその道を通れば影に溶け込む様な真っ黒な青年に思わず脚が止まる。ぐったりと座り込んでいる様子からして
真っ黒な髪に真っ赤な瞳、青年の顔立ちは綺麗だが汚れていて何処か怪我をしているのだろう、少し荒い息を溢す。
僅かに妖しく光る瞳、僅かに息を吐いた事で覗く白い牙に察しがついてしまう。
「──君は
「…あ?……そうだけどそれが何だよ」
これが
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