ー10ー


 ほげぇ〜……



 燃えるクソ鳥がダイナミック自殺をしてから数十分。アナウンスもなく暇になった俺はマグマの近くで体育座りをしていた。


 普通の人間なら絶対暑さがやっべぇと思うが俺はスーパー人間。大丈夫だ。



 ほげぇ〜……



 時折ぶくぶくと気泡のようなものが出るマグマを見ていると、観葉植物さんが近づいてきた。俺の真似をして横に座る。


 き、きもッ。

 普通の生物じゃ無理な体勢ですよね。

 そのトカゲの足の関節どうなってんの? どう考えてもおかしいだろ。


 心底ドン引きしていると、観葉植物さんがしゅるしゅると蔦を伸ばしマグマに入れる。


 ……最近の植物はマグマに蔦を入れても燃えないんだなぁ。


 とんでも光景を目の当たりにしてしまい、脳が飛翔していく。すぐに観葉植物さんが蔦を戻すと、なまずわにを融合させた化け物を引っ張り上げた。

 脳が一瞬で頭に戻ってきた。


 え、えぇ……?


 もし俺に困惑値ゲージがあったら振り切れてグルグル回転しまくってるよ。そのよくわからん化け物もすっごいぴちぴち暴れてるけど、生きが良すぎじゃない?


 頭が頭痛するというおかしい言葉を考えていると、触手本先輩がやってきた。触手を伸ばしよくわからん生物の首をキュッと締め、器用に触手を尖らせて解体していく。


 うん……さっきのトカゲのように生きたまま解体しないだけいいけどさぁ。

 ん?


 いつのまにかワーム君が俺の横にいた。


 お前は愛いやつだなぁ! もふもふしてやろう。


 モフ度が更に上がっているワーム君は気持ちいいなりぃ。

 これは決して現実逃避ではない。いいね?





 ふぅ。ワーム君をモフモフして少しSAN値が戻った。

 相変わらず燃えるクソ鳥の状況がわからない。が、それ以上にここで何をすればいいかわからん。


 手持ち無沙汰で観葉植物さんを真似して釣りしようかなって考えていたら、観葉植物さんがしゅるしゅると蔦を伸ばしてきた。


 心を読めるようになったのか? と思いながら動揺しながら蔦を受け取る。すると、次に触手本が本の中からトカゲもどきの肉片を渡してきた。


 ……ありがとう。


 よくわからないが感謝しといた。

 考えることは放棄する。頭が痛くなるだけだ。



 よ、よぉ〜し!



 蔦にトカゲもどきの肉片を取り付けて、マグマに投げる。


 あっ! しまった。

 トカゲもどきでも直接マグマい入れたら燃えるというか溶けるよな? ミスったなぁ……まぁいいや。

 気にしたら負けだ。



 蔦を入れて数分。勢いよく引っ張られた。


 ふんがッ!


 思いっ切り引っ張り上げると、地面の上でピチピチ動くウニと鉱石を混ぜた変な物体が釣れた。


 わ、訳がわからないよぉ……


 ワーム君がキュイキュイ言うので食べていいよって感じで頭を撫でてやる。ワーム君は嬉しそうに可愛い鳴き声を上げると、ウニのトゲトゲも気にせず丸呑みして咀嚼する。



 ……やっぱ、俺以外やべぇやつしかいねぇわ。このパーティー。







 ヒャッホーイ!!



 腕が生えてるさめが釣れたぜ!


 俺が喜びの舞をしていると、ワーム君が可愛らしい声を上げ、他は……うん。とりあえず小躍りして踊っていると唐突に感情がふっと戻る。


 他の人から見たら、化け物が生贄を捧げてる魔宴サバトやん。

 な、何やってるんだろ。

 なんか、急に悲しくなってきた。


 項垂れていると、観葉植物さんが蔦を伸ばしてきて肩に乗せてきた。


 や、優しい……


 いつまでもプー垂れてもしょうがない。とりあえず腕が生えてるきもい鮫をみんなと一緒に円になって食べる。

 一口食べてみると、これまた絶妙な味で最高だった。


 遠くで火山がちょいちょい爆発してるけど、それもそれで風情だし化け物も美味い。研究室なのに火山があるということは、もはやどうでもいい。


 俺ここに住んでもいいかな!

 よぉぉし、野郎どもぉ! また釣ってやるから待ってろ!


 蔦へ残っていた鮫の腕を一本巻きつけ、マグマへ投げる。

 アホヅラ晒し待っていると、だんたんと蔦の周辺がすごい勢いで揺れ始める。


 う、今度はすごい大物だ!

 めちゃくちゃ引っ張ってくる!

 おっっっも!!


 踏ん張っていると、ワーム君が俺を支えて手伝ってくれる。



 ぶちりッッ!



 頭の血管が千切れた気がしたけど、気のせいだ。


 ワーム君を真似て観葉植物さんと触手本も、手伝うように俺の体に巻きついてくれる。根性を振り絞り、勢いよく釣り上げた。

 めちゃくちゃ重く、これ以上は俺のお手手にお豆ができる。そのまま勢いのまま地面に叩きつけた。



「GYAAAAAA!!」



 うるさい声を上げるそいつ。

 正体は燃えるクソ鳥でした。


 えぇ? 君ずっとマグマにいたの?

 どういう生態だよ。わけわからん。


 ワーム君たちが戦闘体勢に入り、なぜか全員猪のように猪突猛進で突っ込んでいった。


 もうちょっとさぁ、考えたりして遠距離攻撃とかしないの?

 あいつ燃えてるよ?


 ワーム君が燃えるクソ鳥の頭をパクリと咥え、背中からは観葉植物さんが蔦を巻きつかせ、最後に燃えるクソ鳥の足へ触手本が触手を使って絡みつく。


 出来の悪い悪魔みたいになってて、ちょーウケるんですけど。


 一昔の女子高生みたく俺は遠巻きで実況する。


 ん? お前なんで呑気に見てんだ、だって?

 当たりメェだろがよォ。あいつ燃えてるんだぞ!

 肉弾戦なんてしたら、俺のキューティクルなんて一瞬で焦げちまうよ!


 脳内女子高生になって誰かに文句言って遊んでいたら、突然全員がパッと一気に離れる。


 どうした、どうした?



「GYAOOOOOOOO!!」



 燃えるクソ鳥が絶叫し、光が爆発。

 


 ウギャァァアアア!! 目、目、目がぁァァァ!!



 バカみたいに直視してしまった俺は目が死にそうだった。

 痛みから転げ回る俺。

 続いて爆撃音と共に、転がっている場所から猛烈な痛みが飛んでくる。



 ア、アッチィィイイ! ひ、ひ、皮膚がいてぇェェエ!!



 ゴロゴロ転げ回り、なんとか燃えるクソ鳥から距離を取る。



 ふぅ、ふぅゥゥ!



 少しずつ目が回復してきたのでなんとか瞼を上げる。周辺は赤く融解しドロドロと溶けていて、まるでマグマのよう。


 当の燃えるクソ鳥はとんでもない超高温を放っているせいなのか、さっきまでは赤い火の粉だったが今では白い火の粉を振り舞いていた。


 パねぇ。

 ……ご、ごくり。


 恐る恐るお腹を触る。

 俺のフサフサのダンディズムはカケラもなく、毟られたような肌の感触。

 チラッ。哀れな毛のない鼠みたいな素肌。



 や、や、野郎ォォ! 俺の毛を焦がしやがったァァ!!



 怒りからプルプル震えると、燃えるクソ鳥が翼を大きく羽ばたかせる。



「きゅいぃぃぃ。きゅうううッッ!!」



 ワーム君から可愛い声が聞こえたかと思えば、ワーム君の口から超高速で毒々しい液体が燃えるクソ鳥に飛んでいく。

 そのまま当たるかと思えば、毒々しい液体は燃えるクソ鳥に当たる手前で、一気に蒸発し軽い水蒸気爆発が起きた。


 見た目通り、毒々しい液体は相当やばいやつみたいで、燃えるクソ鳥の周りに紫の煙が漂う。



「GYAAA!! GYAA!!」



 燃えるクソ鳥は苦しそうに咳き込む。


 えっ? お前、燃えてんのに呼吸してたの?


 見当違いなことに驚いているとボォンッッ!! と俺の横から燃えるクソ鳥へ飛んでいく。すぐに発射元へ顔を向ければ観葉植物さんの背中に大砲のようなものがついていた。


 さ、さすが観葉植物さん変芸自在ですね。

 もう完全にミュータントですよ。


 怒っていたが、奇妙奇天烈の連続で少しずつ感情がシナシナになっていく。


 最早、ワーム君たちが主人公のように連携して戦ってるんだが。

 俺って必要ですか……?


 一人悲しくシクシク、構ってちゃんみたいにヘラっていると、観葉植物さんから発射された種っぽいやつが大きく軌道を変え、火の粉を回避。そのまま燃えるクソ鳥の後方の位置に到着すると、一気に分厚い蔦が数百本湧き出して、燃えるクソ鳥を襲った。


 白い火の粉は分厚い蔦を次々に燃やすが、それ以上の速度でそのままクソ鳥を縛り続ける。そのせいなのか燃えるクソ鳥が地面に落ちた。

 だが、そこはさっき燃えるクソ鳥が融解させた場所。当然、水飛沫もといマグマ飛沫が俺の方まで跳ねてくる。



 あっつ、あっつッ! ざッけんな!



 飛んできたマグマのせいで、今度は腕付近のお毛々が禿げる。再び怒りが噴き出てきて、目が真っ赤っかになりそう。

 もうなりふり構わず突っ込もうとした瞬間、頭に激痛。


 なん……だッ!?


 何かが聞こえてくる。

 とてつもない痛み。

 理解できない言語。

 割れそうな頭。



『kefw`n2$!;f@_:*』



 聞いているだけで発狂しそうになる元を出しているのは触手本だった。近くにいるワーム君と観葉植物さんも俺と同じように体を震わせている。


 意識がぶっ飛びそうになるが、なんとか堪えて触手本を見る。すると、触手本はパラパラと本を開き、あるページで止まった。


 一気に触手本を中心とした赤黒いおどろおどろしい呪文陣がサークル状に展開。



「ZAAAAAAANNNNNNNNN!!!!」



 クソドリが爆散した。



 …………きたねぇ花火かな?






 ー幻獣研究総本部:所員ー

 永遠の時を生きる幻獣。

 生と死を司る不死鳥。

 別名:火の鳥フェニックス


 かの幻獣を捕らえる、とふざけた噂話が聞こえてきた。なんでもその噂話の元は主任らしい。主任がここに来るよりも、ずっとここにいる我々にも相談せずそんなことをしたことに殺意が湧く。誰のおかげで研究が進んでいると思っている? 上層部へ渡しているほとんどの成果は我々のものだろう。

 ふぅ、まぁいい。すでに命令を下した後だ。後の祭りだろう。もう開始したことへ、今更文句を言ってもしょうがない。もし万が一にでも、本当に火の鳥フェニックスを捕獲できたのであれば手のひらをくるくる返して感謝でも述べるさ。そうだろう? 幻獣の王とも呼ばれる火の鳥フェニックスを実験できるんだぞ。それこそ研究者冥利につくもんだ。

 しかし……主任が数少ない戦闘チームを投入したという話は大層驚いた。ただの主任だと思っていたが、どこまで手を伸ばしているんだ?


 戦闘チームはさすが新しい個体の新人類の子と言える。かつての新人類とは違い、化け物揃いで倫理観がないと常々聞こえてきていたが、部下が持ってきた報告書を見る限りやはり頭がイカれているようだ。

 異空間古代遺跡エンシェントダンジョンから発見された貴重な遺物を勝手に持ち出した上、彼らは数年来の仲間ですら潰し、火の鳥フェニックスを捕獲したらしい。

 捕獲に失敗して、貴重な遺物を紛失したらどう責任を取るつもりだったのか、戦闘チームあいつらの頭を解剖して脳味噌を見てみたい。

 これだけの莫大な費用を一匹の幻獣に使用しているんだ。火の鳥フェニックスから、不老不死や蘇りの原理を必ず見つけなければいけなくなった。

 もしも結果を出さず白紙一枚で出してみろ! 我々に支援金を大量に出している各界の重鎮だけではなく、各所の機関すら怒り狂うに決まっている! この研究所が潰されるだけではなく、今度は我々が実験動物にされるか、魔染生命体の餌にされるだろう……!



 幻獣研究所の所員だけではなく、他所よその研究所員も借りた。我々が寝る間もおしんで、焦燥感に駆られながら研究していると突如主任からふざけた命令書が降った。

 主任のお気に入りである検体番号:β-012と火の鳥フェニックスを対面させろ、と。


 ふざけるなぁぁァァア!!


 我々は幻獣研究所の全ての所員だけではなく、他所よその研究所員にも手伝いを乞い、火の鳥フェニックスへ動員しているんだぞ!!


 怒りに任せ、主任へ直接問いただしに行ったが、全く取り合ってもらえなかった。一旦落ち着くため自室へ戻り、検体番号:β-012の情報を改めて細部までに目を通す。

 検体番号:β-012と関わったワームとアルラウネは完全に別個体もしくは新種に変貌。そして上層部から押し付けられた悪魔の本すら支配した。

 化け物がッ。

 ふぅ。一度、深呼吸して落ち着かせる。検体番号:β-012がどこから運び込まれたか知らんが、相当変異しているように思える。

 ……もしや、当時暴れ尽くしたあいつの系譜か? いや、考えすぎか。もし本当にあれと同じものだとしたら、ここの研究所はすでに壊され尽くしている。だが、周囲を巻き込ませるのは、チッ。資料が少なすぎる。

 主任のやつ、重要な箇所はわざと隠しているな。何を考えている? まったく、忌々しい。火の鳥フェニックスすらも変異させたいのか?

 上のお偉いさん方は、変異していない火の鳥フェニックスの不死性を調べろと言っていたのであって、変異させろとは言っていないぞ! 万が一……万が一に、だ! 火の鳥フェニックスが変異して、不死性が失われ蘇らずに死んでしまったらどうするのだ……?

 ワナワナと怒りが湧き出て、主任の命令書と資料をぐちゃぐちゃにして壁に放り投げた。すぐに机から魔導具を乱暴に取り出す。主任ですら知らない秘密の回線に繋げた。


 なんでもかんでもお前の望むまま進めると思うなよ、ガキがッッ。





 ー主任ー


 採取チームを使い、古代魔術によって滅んだだろう火の鳥フェニックスの破片を取りに行かせる。

 その際、採取チームの長と幻獣を専門にしている所員が何かを喚いていたが無視した。大方、火の鳥フェニックスが本当に死んだか懐疑的なのだろう。私がお前らの立場なら同じ感想を抱くが、私は死んでいると確信している。

 当然、戦闘チームの報告書にも目を通している。彼らが捕獲時に誤って火の鳥フェニックスを殺したが、すぐに蘇ったということも把握済みだ。その後彼らが、遺物で何百回と火の鳥フェニックスを殺した姿も動画で見た。


 報告書と動画見た限り、何度殺されても蘇る理由として一つの憶測が立てられる。火の鳥フェニックスと対峙した戦闘チームが下位の存在だったからだ。別に戦闘チームを馬鹿にしているわけでも貶しているわけでもない。彼らは確かに魔染生命体と同じように化け物並みに強く、ネジが少々飛んでいると思うが所詮は人間の域だ。

 あの悪魔の書が使った古代魔術を思い出してみろ。あんなイカれた魔術式と狂気の沙汰としか言えないほどの悍ましい魔力をただの人間どもが出せるか?

 それだけで悪魔の書が火の鳥フェニックスより上位存在、高位の種族あるいは何か、だとわかる。だからこそ、それを上層部は自分たちの手に負えない物だとわかってすぐここへ押しつけたんだろう。実に忌々しい。それを少しでも教えてくれれば、他の対処方法もあったが……まぁいい。いつまでもウジウジ気にする小娘でもあるまいに。今ではあの悪魔の書もあの人狼に従っているようだし、どうでもいい。


 思考を戻そう。悪魔の書が放った古代魔術。それにより火の鳥フェニックスは文字通り何もできず滅んだ。本当にあっけなく一瞬で滅んだ火の鳥フェニックスに吹き出してしまったが、それはご愛嬌だろう。まぁ、ジロリと睨んできた幻獣の所員には悪いことをしてしまったと思うよ。少しだけだが。

 だからね。手元にある戦闘チームの報告書を見るだけでクツクツと再び笑いそうになる。殺したと何度も記述してある文面。くっくっく……おっと、悪い癖は抜けないものだな。とりあえず、現段階でわかるのは新人類の遺伝子を少し注入した程度の人間では、地上のやつらと渡り歩けるわけがない。

 戦闘チームですら完全に火の鳥フェニックス程度すら屠ることができていないのに、劣化新人類では到底無理だ。


 ふぅむ? 火の鳥フェニックスのことを考えていたはずだが、また別の方へ行ってしまっているな。数時間前に注入したあれらのせいか? まぁいい。思考の混濁が見られるが、意識の低下も薄れる感覚もない。

 きちんと物事を考えられ並べられるということは適応しつつあるということだろう。


 念の為、ポケットから大量の薬を口へ放り込んだ。


 今度こそきちんと話を火の鳥フェニックスに戻そうか。どこまで話したっけかな? まぁいい、所詮は私が私に話かけているに過ぎない。

 戦闘チームが火の鳥フェニックスとの戦いは何度も確認した。この通り二つの目で火の鳥フェニックスの首が切り落とされた画像も見たし、バラバラにされた動画の一部始終も確認済み。

 悪魔の書と戦闘チームでの比較による仮説となるが、戦闘チームと火の鳥フェニックスの戦いは恐らく、一時的にこの世界から追い出しているにすぎない。なぜなら、戦闘チームの報告書と動画では火の鳥フェニックスを殺した後すぐに蘇り、自身を殺した追い出した人間を終始に狙い惨たらしく殺しているからだ。

 本当に蘇るのであれば、普通は記憶もまっさらになるもんじゃないか? 細胞を新しく復元しているんだぞ。殺されるほどの強い記憶なんて普通は脳から消し去る。残っていれば廃人、いや、ここでは廃鳥とでも言おうか。廃鳥になるだろう? なのに、火の鳥フェニックスはわざわざご丁寧に自分を殺したやつに付き纏った。

 現に先ほどまで人狼の仲間たちが火の鳥フェニックスと戦闘した際、妙な魔力溜まりを確認できている。他の所員は気づいていないだろうが、私はあれを一度だけ地上で見たことがある。

 あれは転移する際に発生する魔力の一種だ。

 だから火の鳥フェニックスは殺されて、死ぬのではなく別の次元に避難か逃げている。そして蘇るように見えるのは戻ってきただけにすぎない。あそこまで希釈された魔力は……まぁ、私ぐらいしかわからないだろう。わざわざ教える必要もない。

 火の鳥フェニックスは****へ何かしらを紐付けしているため、次元転移を何度も行えるんだろう。しかし****の影響を直に受けて、よく正気でいられるな? しかも次元を移動するなんて正気の沙汰ではない。

 いや、むしろ狂っているからこそ、なのか?


 ……おっと、ついつい笑みを浮かべてしまった。周りに気取られないよう手で口元を覆い隠す。


 念のために言うがこれは私の仮説であり推測で憶測の一つだ。もしかしたら、本当に死んでいて、再生しているという可能性もある。それはそれで、研究をより楽しめるからどっちでもいいがな。

 その時は不死性の概念や火の鳥フェニックスの力を手に入れることができるかもしれない。


 数十分経ったが、まだ所員からも火の鳥フェニックスが蘇ったという連絡はない。今のうちに火の鳥フェニックスの残骸及び破片を回収して密かに研究できれば、私も人狼と火の鳥フェニックスのように****と…………けど、なぁ。上層部は立て続けに私が起こした無断行動にそうとうお冠で、私に釈明する機会すら与えずいきなり排除してくるだろう。


 だからこそ採取チームには有無を言わせず回収させにいった。もし回収途中に上層部から命令が来たら、彼らは即座に私の指示なんて中断するだろう。火の鳥フェニックスのいずれかを手に入れることができれば、上層部への切り札ができる。

 それによっては拘束されず、穏便に研究所から脱出できる可能性も上がる。採取チームの動きによっては私の命の灯火も僅かだろう。

 頑張ってくれ、健闘を祈る。




 まぁ、そんなことだけに命を預ける私ではない。他にも切り札をいつでも切れるよう裏工作でもするとしようか。

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