第14話 劣等上等

「いじめ」

醜いものだ。

それを逃れられなかった私も醜い。


「ねぇ、奏」

梨恵…。

「…なに?」


バシャッ。


頭から冷たい感覚が体に走る。

…水だ。

…水をかけられた。

「あはははっ!おもしろ!」

「………………。」

_____何が面白いんだ。

こいつは頭が足りないのか?こんな寒い時期に水をかけて…。



いくら私が醜いからって…。



________何も言い返せない。

言葉が出てこない。逆に何も言わない方が身のためなのだろうか。

こいつは一体何をしたいのだろうか?


「ねぇ。」

「…。」

「正直お前はこのパート向いてないよ。てか…」

____________思うよ。


梨恵から放たれた言葉が、あまりにも酷くて、残酷だった。



心に大きな傷を負ったように…

心が痛い。


ズキズキと痛んで、悲しくて、苦しくて、辛くて。

ダメだ。泣いてしまう。

泣いていいのだろうか。泣いたらもっと何かやられるのかもしれない。何が待っているかわからないのに…。


「はぁ……。ねぇ。なにか喋ったらどう?この出来損ないが。」

「…っ。」


_________もう。嫌だ。

こんなところからさっさと消えてしまいたい。ただ苦しいだけ。


ねぇ。こんな時、どうすればいいの?

耐えきらなきゃいけないの?

__________わからない。

あの子に聞きに行こうかな。


◇ ◇ ◇

『あ。また来たの?』

「…うん。」

『……………。』

「な、何かあった?」

『…いや、お前が自分の意思でこの世界に来れるようになったのに驚いてな…。』

……確かに。眠って急に落ちるということはなくなった気がする。

「…えっとね?今日は相談があって…」

『そうか。』

「えっと、私、今日部活で水かけられて…」

『知ってる』

あ、そっか…。この子、私の意思で繋がってるんだった。

『それで、どうすればいいか迷ってるんだろ?なかなか表には私が出てこないから?』

「…うん。」

『そうだなぁ…』

しばらく沈黙が続いた。

『…劣等上等精神。』

「…え?」

『劣等上等精神でそいつらを見返すんだ。ざまぁ!という気持ちを込めて。』

「…私にそんなこと…できるかな?」

『……できるよ。』


こっち視線を向け、少し口角が緩んだ。

『見返してやれ。』


その言葉は強い。何よりも。

心にドンッと衝撃を受けたように響く。



「わかった。」

私は覚悟を決めた。

劣等上等精神。



必ず見返してやる。

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