第1話 普通の日々

「おはよう!奏!」

あ、瑠々だ。

「おはよう。瑠々。」

いつも通りに挨拶を返す。

寒くなってきた10月の下旬。手を合わせ、冷たい吐息を吐き、友達と教室まで向かっている朝。何にも変哲がない一日の始まりだ。

私は何となくこんな日々が好きだった。

私の名前は「木下 奏」(きのしたかなで)。11歳。

友達関係もそこそこいい方だ。勉強はまぁ…ね。気にしないでおこう。

「人生」もそこそこ楽しんでいる。

そんな生活をしているんだ。楽しいなぁ。

まぁね。あの事件が起きるまでは。


学校を終え、いつも通り友達と帰って、家に帰った。

「ただいま」

「おかえり。かっちゃん。」

ママの声だ。ママは私のことをかっちゃんと呼んだり、普通に奏と呼んだりする。たまに呼び方が変わるから、ちょっと面白いんだ。

「かっちゃん。今日習字あるよね?準備しときなさいよ〜」

「わかってるって!ママ〜」

そう。私は習字教室に通っている。

友達も何人かいて、楽しい。退屈もしない。

私は個人で硬筆の資格を取ろうと努力しているところだ。ちなみに初段は超えたいという目標を持っている。

「かっちゃ〜ん!準備終わった?おやつ用意してるから準備終わったらリビング降りてきてちょうだいね〜!」

やった。おやつだ。今日は何かな〜?

「ありがとうママ!」

そう返事する頃には準備が終わっていた。


おやつを食べ、ゲームをしながら習字教室に一緒に行く友達を待っていた。その時。

「ママ〜〜〜〜!習字教室に行く時の服が見つからないよ〜〜!」

うげっ。厄介なやつが叫びながら降りてきた…。

その厄介なやつ。私の双子の妹「咲」(さき)だ。

やけに母親に甘え、その上にうるさくて、そして生意気。双子とは思えない。そりゃそうだろうな…二卵性双生児なんだから。

二卵性双生児の特徴として、顔や性格が似つかないという特徴がある。

一卵性双生児とは全くもって違う。

顔や性格が似つかないせいか、姉妹と間違われる。そこも厄介でめんどくさい。

相変わらずうるさいなぁ。って思いながらゲームする私。


ピンポーン

あ。友達が来た。

「優奈〜!私はもう準備できてるけど、咲は準備できてないんだよね…どうする?置いてく?」

「置いてくのはさすがに可哀想でしょwww」

私の親友。「杉浦優奈」(すぎうらゆうな)

彼女は優しい性格で、字が上手くて、可愛い。

私は優奈のことが大好きだ。ずっと親友でいたいと思うんだ。

さて。咲はまだかなぁ…。いくらなんでも探すのに必死すぎないか。

「おまたせ〜!!」

はぁ。やっと来たよ…。

「咲!全然待ってないよ〜!行こうか!」

と、優奈が言い。私たちは習字教室に向かって歩いた。

「最近本当に寒くなったよねぇ〜…暗くなる時間も早くなってきたし、部活の時間も短くなってきてるよね。」

まず最初に口を開いたのは私だった。

「あ〜〜〜わかる!寒いし部活の時間も短い!そのうち午後練も無くなっちゃうんだなぁ…」

優奈がそう言った。ちなみに私と優奈は同じ部活。金管バンド部に所属していて、パートは別だが、部活にもよく一緒に行くんだ。

「ゆーてこっちも短いし。うちは部活の時間短くなっていいなと思うけど。」

咲はこう言った。咲は部活が別でバスケットボール部だ。あまり部活が好きではないせいか、短くなっていいなとか最近すごい言ってるんだよなぁ。口癖化しとるやんけ…。とツッコミたいところだ。

そんな他愛のない話をしながら歩き、そして習字教室についた。

そこにもう1人の友達がいたんだ

「お!タイミングいいねぇ〜!」

こう言ったのは私の友達「島崎駿斗」(しまさきしゅんと)だ。

彼はノリがよく、笑いを誘ってくることもあり、友達としては最高の人物である。

駿斗とも一緒に入り、先生が俺らを待っていたかのように半紙を置いていた。

そして集中。ただ沈黙が流れるこの空間。

私にとっては落ち着く時間だ。

1時間後、習字教室が終わり親が向かいに来てくれている。

それぞれ親のそばに行くんだ。

またもや咲はママに飛びつき、甘える。

…………いいなぁ。私もあんな風に…。

最近そうやって嫉妬ばかりしてしまう。これって可笑しいのかな?と思い始めたばかりだ。

家に帰ってしばらくし、宿題をやっていた頃にインターホンが鳴った。

ピンポーン。

ママが出る。

「はい。…………はい。」

一体何があったのだろうか。私はそう不安でいると…。

「奏。駿斗のお母さんが。」


…………え?

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