第24話 祭りのあと
「ではさらばだ! アディオス」
「皆様、失礼致します」
祭りをあとにして駅を出ると、俺たちはあおはると
「お前たち、一緒に帰るんだっけ?」
真理としおりが2人で帰ると言うので、俺は確認する。
「うん、あたしはしーちゃん送ってから帰るから、翼は先に帰ってて」
「今日はありがとう。またね、翼くん」
俺は歩き出し、背中を向けたまま左手を上げて、2人に別れのサインをした。
「真理ちゃん、今日はありがとう。お祭りすごく楽しかった」
「あたしも、今までのどのお祭りより楽しめたよ」
2人は談笑しながら歩く。
「しーちゃんさ……」
「うん?」
真理は突然、神妙な口調でしおりに切り出す。
「――翼のこと、どう思う?」
「え?」
「いやほら、深い意味はないけど、どうなんかなって? あはは」
「真理ちゃんは、どうなの?」
しおりはか細い声で聞き返す。
「あたしは――翼はさぁ、小さい頃からいつも一緒で。男の子なのにすごく弱虫で、全然頼りになんなくて……」
「うん」
しおりは内心、翼の幼少期を語る真理を、羨ましがりながら聞いている。
「すごく手間のかかる弟って感じでさ、あはは」
期待外れの答えに、少し落胆しながらしおりは言う。
「――私にとって、翼くんは」
「うん……」
今度は真理がどこか覚悟を決めて、恐れながらも次の言葉を待つ。
「すごく気になる人」
「え、気になる……?」
(聞かなきゃよかった。どうしてこんな話してるんだろ、あたし。しーちゃんなら翼を任せられる。でも、なんで……どうして……。やっぱり次の言葉を聞きたくないよ……)
「私、お兄ちゃんがいてね。サックスやってるの。結構界隈だと有名なんだよ」
「え、お兄ちゃん……?」
しおりは星空を見上げながら続ける。
「しばらく会えていないんだけど、翼くん見てると、お兄ちゃんを思い出して――ほら、同じサクソニアンだし」
「――気になるって、そういう……?」
「うん。私、小さい頃いつも、お兄ちゃんの演奏に合わせて踊っていたから」
しおりはにっこりと、真理を見つめる。
「……な~んだ」
真理はほっと胸を撫でおろす。
「ごめんねしーちゃん。急に変なこと聞いて」
「ううん、大丈夫だよ。気にしないで」
(ごめんね真理ちゃん。半分本当で、半分嘘……)
しおりは真理を覗き込むように言う。
「真理ちゃん、またさぁ」
「うん?」
「みんなで行きたいね。色々楽しいところ」
「うんうん、しーちゃんの知らない日本の楽しいところ、いっぱい教えるよ~」
そうして2人は薄暗い夜道の中、楽しそうに話しながら歩き続けた。
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