雑踏
大都市の雑踏を進む。
ふとこの人の流れに紛れて消えて無くなれるのではないかと夢想する。
ドラマに例えれば「匿名A」。
小説に例えれば描写もされないような。
漫画に例えれば背景のような。
別に死にたいだとか消えたいだとか。
そういうことじゃない。
だって道端に手向けられた花を見て。
そうはなりたくないと思えたから。
「自分の人生の主人公は自分だ」
その言葉は正しいと思う。
だけどずっと主人公でいるのは疲れてしまう。
だから雑踏に紛れてモブになりたい。
そう想う時がある。
夜の道を一人で進む時。
無駄に気分が高揚する。
この世で独りぼっちになったような。
この世の全てを手に入れたような全能感。
その反動。
雑踏にもまれるとこの世の全てがどうでもよくなる。
ここにいる人々全員がそれぞれの人生を生きているだなんてちょっとした恐怖だと思う。
ニュースでまた誰かが死んだと言う。
それを見て人々は悲しいことだと言う。
間違ってはいないけれど正しいことでもない。
だってその人が死んでも世界は変わらず廻るのだから。
その人だって普段は雑踏の「匿名A」でしかないのだから。
生きるってなんなのか分からなくなる。
主観で視る世界はひどく眩しくて。
目が焼かれそうだ。
雑踏に隠れるくらいがちょうどいい。
三人称で生きていけたら幸せだろう。
そう思うのは自分が物書きだからだろうか。
人に胸を張って自慢できるものがない。
それが悲しくて。
夢の中で八つ当たりした。
それくらいの自己嫌悪。
これは詩というより。
ちょっとした吐露かもしれない。
取り留めのない想いを書き留めて。
形にして吐き出して。
それで楽になろうとしているのかもしれない。
やあ、今これを書いている自分。
読み返した時、君はすっきりしているのだろうか。
それだけは書いている時もそして書いたあとも。
きっと分からない。
雑踏に紛れることも出来なかった自分より。
ちょっとした詩集 亜未田久志 @abky-6102
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ちょっとした詩集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます