第五筆:強力者、現る
目が覚めて時計を確認すると土曜日になっていた。朝の八時になるかといったところである。優紀が昨日帰ってからしたことは寝ることだけだった。だから一昨日と同じように服は昨日のまま寝たという状況である。違うことがあるとすれば何も口にしていない、いやできなかったということである。
なんの気なく携帯を取るとメールが数件、電話が一件着ていた。メールは友香の身体を心配する優紀の知らない友人からのものだった。唯一知っている陸からのである。電話も陸からので、大学の無断欠席を心配するものだった。周囲には一昨日からの体調がまだ回復していないと再度説明しておいたとメールには書かれていた。。
お礼の電話でもしようかと電話帳を開く。すると、新しく追加登録されていた天堂紘和という名前があった。それは一昨日から求めていたものだった。しかし、この名前が登録されているということは昨日の出来事が嘘ではないということになる。夢であればいいと思いずっと寝ていたはずなのに、忘れたい光景がドロリと徐々に鮮明になっていく。パッと携帯に写る自分の姿を確認すると血の跡などは一切なかった。それでも確かに鼻を中心にヌルっとした湿り気ある感覚が鮮明に思い出せる。加えて戦場をさっそうと蹂躙する紘和の顔が、あんなに穏やかな顔で、日常会話をするように淡々と人を殺められるのかと恐怖する。それは連絡しようとした手が止まるぐらい優紀の頭の中に恐怖を植え付けていた。
携帯をポンとベットの上に投げ置き、顔を上げて深呼吸する。すると机の上にはメモ用紙が置いてあった。確認するために手を伸ばすとそこには紘和の家への行き方と、今日の十三時までに来て欲しいという趣旨の内容が書かれていた。コレほどまでに行きたかったところである。もちろん、行かないという選択肢はない。しかし、今はその行動理由が黒い虹に関する情報を収集するためではなく、行かなければ、従わなければ自分の身が危ないのではないかという強迫観念が上回っていた。
黒い虹も今回巻き込まれた事件も真相がわかるならどこまでも知りたいはずだった。だが、世の中には知らなくてもいいものだってあるのだと、そんな考えがよぎってしまうほど、生々しかった昨日の出来事は優紀の決意を鈍らせていた。優紀は大切な友香の身体を傷つけたくはないのだから。呼吸が、心臓の音が早くなるのがわかる。ドサッとそのままベットに倒れると天井を見ながら再び大きく深呼吸するのだった。
◇◆◇◆
電車に揺られ二時間半、最寄り駅から歩いて十五分。結局、中途半端な自分と決別したい、何よりも友香が戻ってくるかもしれない可能性にかけたいという一心から、昨日教えられた天堂家の門前に来ていた。ふきよせ型と言うには横にも縦にもあまりに大きく、実際に目にすることが幾度あるだろうかという壮大なものが家の前に飾られた、いわゆる豪邸に来ているのだ。
天堂家。紘和の祖父の代で今の日本の地位を築いたとされる名家。その紘和の祖父、天堂一樹は日本の首相を引退している元最強とは言え、世界で影響力を持つ八人からなる八角柱の大罪として所属し、枢要徳を冠した七人の各国の実力者と評される人間と現役で肩を並べる存在である。加えて、自身の称する地位で遊んだかのように自身を含んだ七人の剣客を率いている。それぞれが地位を示す剣客の称号と人間性を示す大罪を冠している。また、内三人が天堂家の人間で家系を通じて尋常ではない人間が生まれ育てられていることがわかる。
そして、そんな場違いなところに優紀はいた。ある程度は覚悟していたつもりだった。だから自分なりに身なりを整えた。例えファッションに無頓着だった頃の、優紀のままの姿でもそうしなくてはならない場所という認識をさせる場所、それが天堂家である。とはいえ、黒のタイトスカートに白いシャツを羽織っただけのオフィススタイル、この歳だと入学式や就活用といった範疇を超えないせめてもの礼装が有り合わせで出来る精一杯だった。
そんなこんなで目的地にいる優紀はここから先どうしたものかとチャイムだと思われる物の前で様々な緊張を携えていたソワソワとしているのだった。予定の時間までまだある、本当にこんな格好で大丈夫だろうか、紘和はどこまで知っていて教えてくれるのだろうか、黒い虹のことは知っているだろうか。そんなことを考えていると、ゴゴッと音がする。何の音だと辺りを見渡すと門がゆっくりと左右に開いていくのがわかった。
そして全開することなく音が止まると隙間から紘和がひょっこり身を出した。
「お待ちしておりました」
「い、いえ」
優紀はスケールの違いに戸惑いつつも辛うじて口が返事だけした。
「門の前でためらいがちにいらしたので、お迎えに上がりました」
これだけの家でそれを持つだけの人間がいるならばどこかに防犯カメラがあってもおかしくはないだろう。こうして、優紀は紘和の友人として天堂家の敷居をまたぐことになったのだ。
◇◆◇◆
「歩かせてしまい申し訳ありません」
「いえ、そこは特に」
その言葉の通り一分ぐらいだろうか、門を過ぎてから玄関まで普通の家では考えられない距離を実際に歩いた。一本道の両脇には枯山水のように砂利が敷き詰められた庭園があったり、橋の掛かった小さな池、大きく古い蔵があった。
日本の古き伝統的なそしてお金持ちが持っているような平屋の家そのものがそこにはあった。
「私の実家へようこそ」
「は、はい」
玄関が開けられると程よい冷気が流れる。それと同時にまだ続くのかと思うぐらいの廊下が続いているのがっているのが目に留まる。た
ただただ圧倒されつつも、実は股の広げづらいタイトスカートに難儀していたのでお言葉に甘えながら玄関で座りながら靴を脱がせてもらうことにする優紀。
「おかえりなさいませ、紘和様。そして、ようこそおいでくださいました、桜峰様」
「彼女を客間へ」
「かしこまりました」
紘和は手を挙げて応えると靴を脱ぎ、そのままスタスタと長い廊下の先へ消えていった。きれいに置かれた靴を靴箱へ入れる使用人の女性。
そんな別世界の空間をキョロキョロと立ったまま見渡していると肩にカーディガンを羽織らされる。
「紘和様が戻られるまで、別室にご案内致します。それと、失礼ながらおめしものが乱れていましたのでしばらくどうぞ、ご利用ください」
確かに軽く汗ばんだ身体にこの部屋の温度は少し寒いと感じ、気遣いに感謝することにする。それがブラジャーが透けて見えていることへの配慮だとはいざ知らず。
◇◆◇◆
通された部屋は優紀のいるアパートの一室よりも広い、畳が敷かれ、襖で覆われ、掛け軸に壺とこれでもかといったぐらいの来賓用の和室だった。どうぞ、という使用人の促しに従い部屋に入り、あぐらがかけない服というのは不便だなと思いながら座布団に正座する。すると即座に違う使用人の女性が旅館の仲居のように襖をゆっくりと開き、お辞儀をして中に入ってくる。
そして麦茶を入れ、お茶菓子を置く。
「それでは、ごゆっくり」
タンッと襖が閉じられるのと同時に優紀は足を少しだけ崩す。
「ふぅ」
緊張の糸が緩んだのを感じる。当然である。一生を通じてこんな豪邸に、権威ある人間の招待で過ごすことなど数限られた人間にしか出来ないことだろう。そんな機会を求めていたとは言え、偶然に、というには半ば強引に繋がりを持ち実現したのである。そんな現場で緊張しない訳がない。
一体、どれだけのことをすればここまで贅沢に暮らせるのだろうか。教科書で習う範囲でここの主の偉業と言えば、七星こと世界連盟の最終決定権を持つ七カ国の圧政に耐えかねた当時二十二歳の一樹がイギリスに反逆し、そのけじめとして発生したイギリス・ロシア・アメリカの三カ国連合と日本の戦争、俗に言う第三次世界大戦を勝利に導いたことが真っ先に挙げられる。これにより実力を認められた日本は一樹を、七星を八角柱と改めた新たな体制の一席に迎え入れたのだ。当時、この下克上は大いに盛り上がり、世界中の決定権を持たない国からの支持を得たという。
ここまで思い出せば、疑問に思ったことが不思議なぐらい納得できた。
「世界を変えちゃったわけだもんな」
比べるのもおこがましいが、自分の人生を比較するとそんな言葉も口から出てくる。恋人を失った悲しみに暮れ、友達の言葉に寄りかかっていた自分と一樹は違う。言葉の力、陸の励ましの効力はすごかったが、それが自分を大きく成長させていたかは別問題だなと優紀は今までを振り返る。しかし今日で終わるはずだ、と強い意志が持てたからこそ来れた場所でもある。自分は変わろうとしている。偉業を成した人間の手を借りて、取り戻すための一歩を踏み出せた結果ここにいるのだ。
麦茶に入った氷がカランと音を立てた。
◇◆◇◆
「お待たせして申し訳ない」
「い、いえ」
五分経過したかどうかのタイミングで襖を開けて入ってきたのは紘和だった。
優紀は即座に正座に戻ると身体の向きを紘和の方へ向けた。
「話がややこしくなって申し訳ありませんが、ついてきていただけるでしょうか?」
「は、はい」
優紀は何がどうややこしくなったかは知らないが、聞きたいことが山ほどあるためややこしくなろうが大したことないといった心構えだった。
「では、こちらに」
優紀は立ち上がるとそのまま紘和の後ろを付いていく。長い廊下を何度も曲がり平屋の最も奥に当たるであろう部屋に到着する。
どんどん奥に行くに連れて、まさかないよなという不安が募っていた優紀は襖に手をかけた紘和を遮るように口を開く。
「えっと、こちらは」
襖に手をかけたまま紘和はこちらに振り返り微笑むと想像していたまさかを口にした。
「私の祖父、一樹がいる部屋です」
大したことだった。
数分前のなんとかなるだろうという心構えが嘘のように緊張でガチガチになっていく身体を感じる。
「騒がしくなり申し訳ありませんが、気にしないでください」
騒がしくって、教えてもらうだけなのにと思いつつコクコク首を振る優紀。
「お祖父様、桜峰友香さんを連れてきました」
「おう」
軽い返事を確認すると紘和が生きる英雄のいる襖を開いた。
◇◆◇◆
「あれだな、楽にしてなんて無理だと思うが、そんなに緊張しなくて構わないぞ、友香さん。ワシが天堂一樹だ」
紘和に促されるままに部屋に入ると縁側でゆっくりとお茶を飲んでいたランニングシャツに薄茶の半ズボンを着た老人がいた。そして、振り返るのがわかるとトンッ、ギィという床を叩き、軋むような音と共に優紀の目の前までに距離を詰めてきて握手をしてきた。その右腕はとても重く、一瞬二リットルペットボトルを持たされたかのような錯覚に陥るほどガッチリとしていた。六十八歳には到底見えない運動神経だった。
だが、人間離れしたような俊敏さを目にこの男あってこの男かと紘和を見た。
「お祖父様、驚いてますので取り敢えずあちらにお願いします」
奥に用意された居間を指差す紘和。
「ハッハッハ、すまんすまん。しかし、驚いてくれたのは嬉しいのぉ。ワシの周りの奴らの反応はつまらんからな。ハッハッハ」
一樹は満足したように笑うと先程と違いゆっくりと縁側まで湯呑みを取りに戻る。白髪の頭髪に白髪の顎髭、顔の皺は歳相応だが、言動も身のこなしも軽いとイメージとかけ離れたものを感じた。しかし、それ以上に注目するのは教科書通り右目と左腕を失っている身体的特徴だった。とはいえ、未だに一樹が八角柱の座を譲らない理由が、否座り続けられる理由は先程の言動、行動からわかった気がした。
◇◆◇◆
カタンッと鹿威しの音が響き渡る。一本の刀だけが飾られた居間に一樹がふかすキセルの煙が漂う。優紀は今、こじんまりとした居間に机を囲んだ座布団の一つに座っている。その場には他に二人いる。一樹と紘和だ。こうなることは部屋に入った瞬間からわかっていた。
わかっていたはずだが、緊張から来るものだけではない、二人の存在感ともいうのか、それが圧迫感を常に与えてくる。
「申し訳ありません。昨日の一件を報告したらお祖父様が、孫の友達にその話をするならと、かって出てきてしまいまして。言い出すと聞かない人ですので、よろしくお願いします」
紘和が本題へ入るにあたって軽い説明をする。昨日の一件というワードから、昨日の集団が一樹と何らかの接点のある集団であることが予想できた。
最狂という存在が関わっている以上当然のことかも知れないが、まさか一樹の口から話さなければならない案件にまで発展していたことにことの重大さを感じた。
「そういうわけじゃ、歳寄りの自慢話に付き合って欲しいというわけだ」
一樹は実に楽しそうに喋り始める。
「あっ、これ国家機密だから」
そう付け加えると、教科書では教えてもらえない歴史の授業が始まった。
◇◆◇◆
日本にまだ蝋翼物に選ばれ扱うことが出来る人間の呼称の一つである最強の異名がいなかった頃の戦闘能力の評価は、過去に犯した大戦の敗北の代償に憲法上の制約で軍事力を持つことが許されていなかったので自衛隊という自国を守るためにのみ行使される力しか持っていない、というものだった。加えて、国としての発言権はその大戦の代償で一定以上得られないものとなっていた。そのため、いくら兵器に対する技術力があろうと、いくら国として地位を上げ発言権を得ようとしても、実情はすでに存在するモノによって阻まられてしまう立場にあるというものだった。つまり、戦闘力に関しては蝋翼物を持つ人間が属する国、発言権は八角柱の前身である七星が所属する国を凌駕できない水準に押し留められている、逆らえない状況が出来上がっているのだ。
そもそも蝋翼物と七星とは何か。
まず、蝋翼物はこの世の理を無視した様な異能を持つ三種類の武器の総称である。いつの間にか誰かの手に渡っていた発端も発祥も不明の武器。その力は神に匹敵すると錯覚できる程の未知の力を持つことから、畏怖を無くすために神にはなれない物と逆説的なニュアンス、イカロスの翼を擬えて、いつしか蝋翼物と呼ばれていたとされている。
しかし、蝋翼物は誰でも扱えるという代物ではない。そう、蝋翼物が使い手を選ぶのだ。そのため必然的に直接管理するのは国ではなく人となる。そして、一樹がこれから語られる歴史的大事件を起こす時に蝋翼物に選ばれていた人間は以下の三名とされていた。【相乗兵器:最果ての無剣】に選ばれたイギリスのブライアン・モーズリー、【統率兵器:夢想の勝握】に選ばれたアメリカのトム・アンダーソン、そして【対象兵器;漆黒極彩の感錠】に選ばれたロシアのライザ・ベリアフである。
ここで一つの問題が発生する。蝋翼物は先述通り規格外の武器である。それこそ、神に匹敵すると錯覚できるほどであるため、使い手は世界中を敵に回しても渡り合えると考えられ、個人で管理するには危険と判断せざるを得なかった。そのために所有者が属する国がその人間を管理するのは当然のことだが、七星は一般の人間に監視させること、つまり万人にこの三人が危険であることを公表し抑止力にすることを選んだのだ。もちろん、蝋翼物がどういったものかを公開することはその危険性からされなかったが、代わりに所持者にサイキョウの称号を与えることで、この人間にはこれだけの危険性と価値があると周知させたのである。それが最強のブライアン、最凶のトム、最狂のライザであり、異名が出来た経緯である。
次に七星とは何か。それは八角柱の前身となった、七人の異質な才覚を持つ者たちで形成された組織の名称である。その異質な才覚を持つ七人は人類に徳をもたらす超常的な存在として枢要徳の名を冠した称号が与えられている。そしてなんの偶然か、彼らは七星が設立された当初からどこかの国に一人だけ、そして必ず八人目の存在が確認されない、そんな条件の元出現していると記録されていた。どういった異質な才覚を持ち合わせているかは、その出現した人ごとに異なっているが、少なくともその才能は一国を飛躍的に発展させるだけの突出性を持ち合わせていた。故に七星に加わる人間が出現した国は、世界の行く末を決めるだけの世界的な大国かつ、経済、軍事、外交面で緊密な関係な国々となっていく。同時に七星になった人間は必然的にその国のトップに関する役職、地位を持つ存在ともなる。だからこそ、七星に属することになった七人はそれぞれ、世界の行く末を談義し決定する権利を与えられる存在とならざるをえなかった、とも言えた。
そして、一樹が八角柱に迎え入れられる前に七星として座っていたのは以下の七人であった。
アメリカの正義、トム・アンダーソン。
ロシアの愛、ライサ・ベリアフ。
イギリスの希望、ヘンリー・カンバーバッチ。
オーストラリアの知恵、ラクラン・ロビンソン。
エジプトの信仰、シャリハ・ムバラク。
ブラジルの勇気、イザベラ・シルヴァ。
カナダの節制、マイケル・サザーランド。
老若男女が入り乱れていた、誰もが一目置く、世間で周知されている人間であった。しかし、この中でもパワーバランスが取れているという訳では無い。個人でみるとトムとライサが突出した才能に加えて、蝋翼物に選ばれている点で個の力が大きく突出している。一方で国の力としてみるとアメリカ、ロシア、イギリスの三カ国が七星に属する人間と蝋翼物に選ばれた人間を有しているため、発言権を始めとした影響力がより大きなものとしていた。それを許さないために他四カ国が七星を始め、国の総力を上げて見かけ上は手を取り合い先の三カ国を牽制しているため、七星を有する国同士のバランスは取れていることになっている。
以上の蝋翼物や七星の説明を踏まえた上で、改めて語ると蝋翼物や七星を有していない国は、蝋翼物の所有者が亡くなる、または七星の誰かが亡くならない限り、それらを有する国よりも軍事力、発言権、経済力といった国力を強めることが出来ないことを意味している。言い方を変えれば、日本をはじめとした諸外国はアメリカを筆頭とした七カ国の抑止力の元、決定権を実質的に委ねさせられていたということになる。
しかし、この蝋翼物や七星を持つ国とそうでない国だけでなく、持つ国同士のパワーバランスすら大きく揺るがす事件が発生する。世にいう最強(モーズリー)陥落事件である。【最果ての無剣】の所有者であった最強ことイギリスのブライアンに単身で正々堂々正面から死合を挑んだ人間が現れたのだ。もちろん、蝋翼物はその破格な性能を持つというわかりやすい兵器である。そのため所持するだけで七星に並ぶ存在を生み大国として発展できるというという自国の繁栄という思惑や力を持つ者の排除を純粋に望まれるなどで、他国から狙われるという話は決して珍しい話ではなかった。だが、この様な一件は表沙汰になることなく、蝋翼物を持つに者たちによって迅速に返り討ちにあい闇の中に葬られてきていた。それほど蝋翼物に選ばれた人間と蝋翼物はサイキョウと評される実力を兼ね備えていたのである。そんな中、今回の襲撃者は違ったのだ。政治的な思惑があるわけでもなく、武者修行の一環で、偶然居合わせた強敵に本気で純粋な戦いを望む戦闘狂、若き日の一樹だったのである。正々堂々正面から、つまり両者同意で行われた死合は、一振りの大振りな刀を携えた一樹と最終的に【最果ての無剣】を展開したブライアンが白昼堂々ぶつかることとなる。そして五分としないうちに、一樹は左腕を犠牲にしてブライアンの首を切り飛ばし決着したのである。
この最強(モーズリー)陥落事件は世界を震撼させた。ことは単純な話ではないが、一番の理由はやはり七星でもない人間が蝋翼物を凌駕してしまったということにある。確かに恵まれたポテンシャルがあったことは事実であるが、それを差し引いても才能で片付けるにはあまりにも積み上げ研鑽された技術による功績の光る勝利がそこにはあったとされていた。つまり、異質な、突出した才覚を持ち合わせているわけではないということである。それは同時に、サイキョウという存在が世界を相手に回して一人で戦える存在であることを否定したということになったのだった。言ってしまえば、イレギュラー。サイキョウより強い存在が現れたことも意味していた。ちなみに当時の七星の中にも、蝋翼物を持つ者と対峙して実力を示せる人間はいたと考えられていた。しかし、考えられていただけであり、実際に七星と蝋翼物が激突したことはなかった。激突すればどちらもただでは済まず、最悪どちらかを失う可能性すらあったと想像できたからだ。そのため、七星と蝋翼物に優劣をつける様なことはなく、七カ国の均衡は保たれていたのである。だからこそこの事実が示されてしまったことは、結果として世界の勢力図を短期間で変えることを加速させることとなった。
まず、蝋翼物を持つ人間を単身で撃破できる一樹が、ブライアンを実力で凌駕し殺めたことで【最果ての無剣】に所有者として即座に選ばれたのである。化物に磨きがかかったことは、誰の目からも明らかなものとなる。さらに当然のことではあるが、一樹は【最果ての無剣】を戦利品として日本に持ち帰ることとなったのだ。ブライアンを倒し、即一人で反省と研鑽を積み直したいということで即刻で帰国したため、なによりブライアンとの間でのみであったとしても正式に行われたという表現が正しいかはわからないが、行われた死合であったということもあり、イギリス側に拘束に猶予を与えなかったという点も持ち帰れたことには大きく関与していた。もちろん、蝋翼物が公にされてない以上、世界の一般的な認識としては、一樹が最強という称号を奪って帰国したとなる訳だが、この事実は国内で様々な声を当然生み出した。日本を世界に知らしめた若き英雄ともてはやされる声。一方で世界を敵に回した非国民として罵倒する声。この相反する声は日が経つにつれてそれぞれ大きくなっていた。それは舞台を世界に移しても同じことで、七星や蝋翼物を持たない国でも、それらを上回る逸材がいるかもしれないと考える国、つまり明日は自分がその立場になれるのではないかと考える国が一樹の、日本の実力を認めるように声を上げる一方で、単純に蝋翼物を、サイキョウを凌駕してしまう異質な力の塊に脅威として排除するべきだと力をすでに持つ国はもちろん、力を持たない国ですら声をあげているため揺れ動いていた。そして、こうした声は渦中の一樹が戦いにのみ目を向け一向に気にしないとしてもその周囲に確実に影響を与えていく。それは、天堂家に対する期待と罵倒という形になったということである。まずは、そもそも国政に関わっていた天堂家を国から切り離して今後受け入れるかどうかを考えるために無期限の休職を言い渡される。要するに諸外国の圧力を考えひとまず天堂家を切り離すパフォーマンスをしつつ、一樹を国のトップに別機関として据え置いて責任を押し付けつつ甘い汁は吸おうという考えがあり、国政から追放されたということである。それを皮切りにマスコミは天堂家に張り付き容赦なく憶測の域を出ない希望と憎悪にまみれた報道を繰り返し、世論に熱をもたせ続けた。その結果、国民からの非通知の電話は鳴り止まず、一樹の両親が、当時の彼女が一瞬にして精神的に衰弱していったのは火を見るより明らかなことだった。
そして最強(モーズリー)陥落事件から約一年後、世界は、七星が属する七ヶ国は最凶と最狂を動かすことで一樹を脅威として排除することを決定した。蝋翼物を凌駕する人間が蝋翼物を所持しているという点で危険視するというのもあるが、蝋翼物の強さ、一般に言えばサイキョウという称号の価値を下げないために、サイキョウを筆頭に手を下すことでその権威を回復させることが目的であった。つまるところ、粛清である。そう粛清なのだ。だからこの殲滅戦には七星有する七ヶ国が現在ある拮抗を崩さない、地位を独占するために動いたと捉える側面と誰でもその地位に介入、歯向かうことができるわけではないことを日本という小国を見せしめにしようとする側面もあることを、この決定がされた時、日本を始め全世界がなんとなく、そう、なんとなく理解していたのだ。
決定が全世界に向けてメディアで宣言された翌日。日本の対応を待つまもなく【最果ての無剣】を回収するため同盟を組んだ最強を奪われたイギリスを代表に、ロシアとアメリカが蝋翼物所持者を筆頭に大規模な人員や秘匿された戦力と共に四国は愛媛に上陸したのだ。この時、七ヶ国で攻め込まなかったのは、目的地が日本という島国であり、そこに投入する戦力にも限度があるという判断もなくはなかったが、大きな意味は残り四ヶ国でこの機に日本に加勢、または七星有する国に攻撃をしかけることを牽制するという目的が大半を占めていた。当然のことだが、この時点で万が一にも同盟三国が敗戦した時のカバーに入るための予備戦力として待機していた、と考えていた人間は全世界でただ一人、一樹を除いて誰もいなかっただろう。そして、四国に攻め込んだ理由はそこのどこかで一樹が迎え撃つべく待っているという情報が日本の上層部から事前に通達されていたからだ。言ってしまえば酌量を、ご機嫌取りを行った人間がいたということである。そんなこんなで俗に言う第三次世界大戦が勃発したのだった。皮肉なことは、戦争と無縁になろうとした国が今度は仕掛ける側ではなく仕掛けられる側に回ってしまったことだろう。しかも、当時と違い協力関係にある国や後ろ盾といったものはない。一方で、一樹という怪物という個を倒すという名目は、多くの民衆を、国を味方につけ、その脅威を排除しようと賛同し、惜しみない激励の後押しと物資の支給を前線に届けることになるのは自然なことだった。
しかし、この選択は最悪な結果だけを残して失敗することとなる。殲滅対象である一樹は左目を喪失したのみで、三国同盟を三日とかからず撤退せざるを得ない状況に追い込んだのだ。この逸話は今となっては左目を潰しただけでもよくやったと語られるほど、一樹の異質さを世に知らしめるだけだったのである。それだけ当時の一樹は強く、【最果ての無剣】に愛されていたのだ。むしろ一樹が選んだと言っても過言ではなかった。それは後に一樹の意思で紘和に【最果ての無剣】が渡ったという事例が、蝋翼物が選ぶという概念を逸脱したことで証明されていた。こうして、一樹は怪物から一転、蝋翼物や七星を持たない国に抗うことの可能性を示す形となり、英雄と讃えられる存在に成り代わったのであった。それは強すぎるに力に、光に吸い寄せられるような世論の変化だった。つまり、殲滅を仕掛けた側は向かい風に立たされたのである。
だが、脚光を浴びる当の本人が求めるのは己の実力の追求である。それは一樹に政治的なことがほとんどわからないという意味もあったかもしれないが、そもそも興味がなかったのだ。故に一樹は戦争を繰り広げたことに満足しており、何かを要求するということはしなかった。しいて言うならばもう一戦交えたかったという、世界中の政をする人間からすれば決して飲みたくない要求があがるぐらいで、日本の上層部にも進んでおかわりするような酔狂な人間はいなかった。だから勝利したにも関わらず、見返りは求められなかったというわけである。しかし、一樹が良くとも世界は落とし所を形で求めていた。加えて何にも縛られていない、制限のない暴力が個人の力で野放しにされている、というのが現状最も危険視されるべき状況であった。それは日本にとっても自国に牙を向けかねない首輪をつけられない猛獣を置いている状況に他ならなかった。そこで、七星の一席に一樹を迎え入れることで、世界に示しをつけた。さらに、国内でも首相クラスの発言権を持たせ、政治ができる人間をつけることで無意味な首輪をつけ世間体を確保したのである。その際、今まで七人いたから七星と呼ばれていた組織であったため八人体制になったことで八角柱へと名称を変え今に至るという訳である。その際与えられた席の称号は枢要徳とは真逆の煉獄という皮肉なものであったが、一樹はこれをいたく気に入り、後に発足する日本の剣に七つの大罪を冠した部隊を作るのであった。
◇◆◇◆
「どうじゃ、すごいだろ?」
ケタケタと笑いながら英雄譚を自慢する一樹。日本を築いた英雄として授業でも習う存在。その生きた伝説があっけからんほど陽気に自身の実績を、教科書の裏側を、真実を語るのだ。
一個人の身勝手さで日本は今の地位についていたのだと。
「そういうわけで世界には蝋翼物と呼ばれる武器とワシのようにちと優れすぎた人間がそれなりにいるわけじゃ」
「それで本題ですが」
頭を軽く下げながらチラリと視線を一樹によこす紘和。
「第三次世界大戦で合成人と呼ばれるロシアの生物兵器を潰したことがある」
促されると同時に核心を突く回答をする一樹。
そう今までの壮絶な物語は前座でしかなかった。
「間違いなくお前たちが対峙したのはそやつらだろう。つまり、問題は他にあるということだ。なぜ、ロシア側が彼らを使ってまでここにリスクを犯してここに着たのか」
一樹は合成人と呼ばれる異形の者達を一蹴して話を続ける。
「話を少し戻そう。紘和が見た中に異形に変身してみせた個体がいたということは間違いなく合成人だろう。その合成人は人間とそれ以外の動物的特徴を合成する技術ないし力をロシアが持っていたからできた、ということだ。まぁ、実のところそういった力を副産物として持つ人間が当時のロシア側にいたという話らしいがな」
「して、その力を持つものとは一体」
テンポよく欲しい情報を引き出そうとする紘和。
「神格呪者と呼ばれている人間でワシもこの目で実物を見たことはない。神に愛されてしまった人ならざる人と聞いておる」
愛されてしまったという点が気になるところではあった。しかし、そんなことすら最早ささやかな疑問でしかない。合成人と呼ばれる人と動物のいわゆるハーフの様な存在が、倫理観を欠いて作られ、使用されていたのだ。
そしてそれは、何故か友香を狙ってきたのだ。
「【環状の手負蛇】と呼ばれる力を持つ人間らしい。生きている間に一度はお目にかかってみたいものだな」
物珍しいものを見たいという感覚ではないことはわかった。これはきっと一度でいいから切り結んでみたいという意味なのだろう。
目の前の老人からはヒシヒシと闘争心が伝わってくる。
「で、なぜここに着たのかに戻るわけだが、恐らくあんたがそういう者に関わっているとワシは想像する。何か心当たりはあるかね」
心配するように尋ねられているはずなのに、今は一樹という男の実力を本人の口から聞いたということもあって詰問されているような気分になる優紀。
「軍事機密を使ってまで大々的に動かす。それは、あいつらにとって【環状の手負蛇】をもう一度手に入れたいか、それに類似する何かに検討をつけて、より力を求めていると考えるのが、こちら側にいる人間としては追いやすい筋なんだがな……」
一樹はちらりと優紀を見て、場数の経験と自身がかけたプレッシャーに対する反応から一つの判断をする。
「どうやら本当にただ巻き込まれた、みたいにみえるな。まぁ、その辺はもう一度尻尾を掴めばいいわけだがら、紘和に任せておけばいいか」
優紀を護衛する任が下ったと見るべきなのか。
そして、紘和が友香に喋りかける。
「つまり、桜峰さん。目的は把握しきれていませんが、あなたはロシアから狙われてる最重要人物ということになる。それも先の大戦で活躍した最狂と合成人の部隊を使われて、です。一樹の言う通り、ぜひ企みを、いえ、一人の国民を護るために協力していただきたい」
絶対に護ってみせよう、そういう気概が紘和からひしひしと伝わってくる。
「最狂も来ていた、のか」
すると空気が突然一変し、報告に聞いていない情報だと言わんばかりに興味を示した一樹。
紘和は一樹の威圧的な目配せに居心地の悪そうな顔をしながら、意を決したように話し始める。
「私が実際に相対したのは、力を開放しきっていないロシアの合成人だけでした。そして現場にいた友人の彼女を救ったのです。ですから、報告しないでいました」
優紀には感じ取れていた。この言葉の節々から感じ取れる違和感を。
そしてそれこそが一樹の気になっている部分なのだと。
「じゃぁ、どうして最狂が来ていたことを黙っていた? いや、そもそもその言いぐさだとまるで、彼女が襲われることまで知っててその場にいたみたいじゃないか? 加えてどうして、最狂がいて被害が最小限な上に、この場を去った? お前の様な人間が現場にいて、だ」
ドンッと空気が一層重くなるのを感じた。肌を覆う空気に重みさえ感じるようだった。
それほどまでに異質な威圧の力と呼べるべきものが、空間に具現化されていた。
「幾瀧純がいました」
そこでいくつもの風を感じるほどの動きを感じ、勢いに思わず優紀は目をくらまされるのだった。
キンッといういくつもの金属音が響き渡り、確認するためゆっくりと目を開く。
「御老公、落ち着きなよ」
「父さん、そこまでです」
紘和の首筋まで伸びた茶色く鈍く光る大振りの刀を、男女が持つ刀が行く手を押さえ込んでいる。
「こんなところで戦争はゴメンだ」
「紘和様、そこまでです」
きっと召喚されているであろう無色透明の刃物を自らの持つ剣で押さえ込む男女もいる。
「本日の国政に関する会合へ向かうお時間です、一樹様」
最後の一人は四人の後ろからゆっくりと現れる。二人の衝突を防ごうとどこからともなく現れた五人。紘和を押さえ込む女性と後から現れた人の顔を優紀は知っていた。優紀だけではなく日本人なら誰でも知っていて、世界中にも名を知らないものは少ないのかもしれない存在。男の方は現日本総理の野呂兼朝、そして女の方はその秘書をしている浅葱刹那だった。つまり、ここにいる人数からして、彼らは日本の剣と呼ばれる一樹の使役する特殊部隊だと優紀にはわかった。
そう八角柱に七つの大罪として向かい入れられたことを機に、自分を含めた七人の精鋭を集めて結成した日本の剣である。
「そこの娘が関係してるのか、答えろ」
一樹の口調は穏やかだが凄みが増している。
「まだ、知りません」
険呑な空気が黙ったまま続く。五人がかりで抑えているはずなのに、それに臆している様子は互いにない。むしろ、取り押さえている側のほうが緊張で張り詰めているようだった。実際の時間にしてに三分程度の膠着だったが、空気の重さというのは時間の経過を緩やかなものに変える。
優紀の額からにじみ出た緊張と恐れの汗が頬を伝ってたれようとしたときだった。
「はぁ、わかった、わかった」
一樹はそう言うと独特の刀を鞘に収める。どうやら居間に一本あった刀を引き抜いていたらしい。
そしてその言葉と同時にこの場にいた全員が得物を収めた。
「すまんのぉ、次の会合があるから後のことは紘和に任せる」
一樹は刀を持ったまま優紀に一礼するとゆっくり部屋を後にした。それに続くように次々と日本の剣と思われたメンバーも部屋を出て行く。
そして最後に無精髭を生やした風来坊といった感じの、一樹を御老公と呼んでいた男が紘和に警告する。
「誰もヒロの敵になりたいわけじゃない。御老公もこの先短いんだ。いたわってやれよ」
ピシャっと襖が閉じられた。
◇◆◇◆
「改めて非礼をお詫び申し上げたい」
紘和と優紀の二人きりになった部屋で紘和がゆっくりと頭を下げて、土下座で謝罪してきた。
状況が飲み込めない優紀はあたふたする。
「こうなる可能性は十分考えられていたのですが、結局、怖い思いをさせてしまいました」
優紀は先の騒がしくなるというのはこのことだったのかと合点がいった。
そして、紘和は説明を続ける。
「祖父とアイツは気が合わなくて、一度、その、深く聞かれると困ってしまうのですが」
「なんとなく想像がつきます」
そもそも純と気が合う人間なんているのだろうかと優紀は疑問に思う。口にしなかったのはそんな人間に付き合う人間が目の前にいたからだ。しかし、さっきの様子から相当な因縁が一樹と純の間にはあるのだろうと推察された。口論で済んでいるのか、喧嘩にまで発展しているかはわからない。だが、後者だったとしたら現場は壮絶なものだったのだろう。
純が生きているのが、一樹と渡り合った証拠なのだから、そんな力がぶつかったら……優紀は想像するのも恐ろしいと思った。
「さきほどの面々は日本の剣です。実は最初からお祖父様がこの部屋の周辺に待機させていまして、事を大きくしてしまった次第です。ちなみに、お祖父様を抑えていた女性は私の母です」
「そうなんですか。ま、まぁ、無事に終わったみたいですし、私も貴重なお話が聞けて満足しましたよ」
そう言えば父さんとか言っていたなぁと思いながら、精一杯の気にしていないアピールをする優紀。
事実ここで知り得た情報は頭で整理するには多すぎるものだった。
「そう言っていただけると幸いです」
ふぅとため息混じりにホッとした顔を見せる紘和。
「では、話を整理しましょうか」
◇◆◇◆
先の事件で注目するべきはロシア側が何らかの目的を持って友香を狙っていることにあったということ。しかも、用意された部隊が、最狂ことエカチェリーナが率いる第三次世界大戦でも実験投入されていたという人と動物的特徴を融合した合成人であったということ。明らかに何か特別な理由がなければ友香を襲うにしては大掛かりな人員であったのは明白であった。そして、事前にこの情報を掴んでいた純のおかげで現場に居合わせることが可能だったという。
そしてここまでくれば、優紀はとある疑問にたどり着いていた。もしかしてという考えは聞けば聞くほど可能性が色濃く顔を出す状況であったが、その疑問を口にすることは出来ないでいた。
もちろん、炭酸飲料を振った後のように溢れようとする数々の疑問が確信に変わるのはそう遠くない話ではあるのだが。
◇◆◇◆
「ところで、お時間は大丈夫ですか?」
天堂家にお邪魔してから約二時間、十五時を過ぎた時間になっていた。とは言えそこは大学生。今日が土曜日ということもあって時間の融通はどうとでも取れる状態だった。
つまり、現状打破を目指す優紀にとっては何かあるなら着いていくのは何ら問題がなかった。
「はい、大丈夫です」
「では、お詫びも兼ねるお食事に付き合ってください」
「は、はい」
緊張し続けていたからか、体力をかなり消耗していたようでそれなりの空腹を感じていた優紀は遠慮なくその誘いに乗ることにした。もちろん、この食事はお詫びであったのだが、決して先程の親子喧嘩に対するものではなかったのだが。
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