3話  ピンチの少女を助けてみた

森に入ってしばらく歩くとある悲鳴が聞こえた。


「きゃあああああぁぁぁぁぁ!!!」


少女の声だった。「あれは……女の子か?」

その声の主を探して辺りを見回す。

すると大きな熊のようなモンスターに襲われている小さな少女の姿を見つけた。


「うわ……あの子襲われてるじゃん。助けないとな……」


とりあえず近くに落ちていた石を拾って投げつける。

石が当たった事で驚いたのか熊がこちらを見た。


「グオォォッ!!!」

「こっちだぞ! クソ野郎が!」


そう言って挑発するように手招きをする。


だが怒り狂った熊のモンスターはその巨体に似合わない速度で襲いかかってきた。


だが俺に取ってはスローモーションでしかない。


「遅いんだよ!」


拳を振り上げて殴ろうとするがそれを避けられる。


だがそれは想定内だ。俺は避けた先に蹴りを放つ。


「オラァッ!!」


ドゴオッ!! 見事に顔に当たり吹っ飛ぶ。


「グルルルルゥ……」


怒ったようにうなりながら立ち上がる。

だが既にフラフラしている。


「くらえ!」


ブンッ! 俺は剣を振ったがその一撃が致命傷となる。そのまま倒れ込んで動かなくなった。


「ふぅ……。なんとか倒せたな。大丈夫かい?」


俺は少女に話しかけた。


すると少女は怯えた表情で俺を見る。


 お尻の当たりからは水溜りが出来ていた。


「ひっ……!? ごめんなさい! ごめんなさい!」

「あぁ、別に怒ってないから安心していいよ」


俺はそう言うが彼女はずっと謝っていた。


「本当にすいませんでした……私のせいで服を汚しちゃいましたよね? ごめんなさい……」

「気にしないで良いってば。それより怪我はない?」

「はい……私は全然平気です。でも……貴方まで汚れてしまいましたね」

「俺は大丈夫だよ。ところで君はどうしてここにいるんだい?」

「はい……実は薬草を取りに来たんですけど道に迷っちゃって。それでここら辺で休んでたらあのモンスターに襲われてしまったんです」

「なるほど。それは災難だったね」

「いえ……私の不注意が原因なので仕方ありません。それよりも助けてくれてありがとうございます」

「あぁ、そんな事は良いんだけど……君の名前はなんていうのかな? 良ければ教えて欲しい」

「あっ……申し遅れました。私はリリィ・ハーティスと言います。よろしくお願いします」

「うん。俺はミカエル・マレーっていう名前だ。よろしく頼むよ」


自己紹介が終わるとお互いの事を話し合った。

彼女の家は街にあるらしい。

少女の足で長距離を移動出来るわけもなく、つまり街は意外と近くにあるらしい。


「へぇー……じゃあ結構近いんだな」

「はい。もうすぐそこですよ」

「そっか。じゃあそこまで送っていくよ。またモンスターに襲われたりしたら危ないしな」

「本当ですか!? 嬉しいです! ありがとうございます!」それから俺は彼女と話をした。


どうやら彼女はまだ幼いようだ。


年齢は十二歳らしい。


「そういえばなんでこんな危険な場所に一人で来たんだ? 親御さんは心配していないのか?」

「お母さんは病気なんです。だから私が薬草を拾いに行ってたんですよ」

「そうなのか……大変だな」

「はい……。だけど頑張らないといけません。だって……お父さんが頑張ってるんですから!」

「そうなんだな。偉いな」

「はいっ! 私はお父さんみたいな立派な冒険者になるのが夢なんです」

「そうか……じゃあ俺も応援するよ」


それからしばらく歩いているとようやく街の入口が見えてきた。


「やっと着いたみたいですね。ここまで送ってくれて本当に助かりました。ありがとうございます!」

「ははっ……どう致しまして」

「あの……もし良かったら……これからも仲良くしてくれませんか?」

「もちろん構わないよ。困った時はいつでも言ってきてくれ」

「はい! それでは失礼します!」


元気よく返事をしたかと思うと走り去って行った。


「さて……俺もこの世界の事を知るために情報収集しないとな……」


俺はそう呟いて歩き出した。

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