第261話 友好度と信頼度を発表します(『人物鑑定』:by ウィン)
第三章 世界樹の国と元勇者(261)
(アマレパークス編)
261.友好度と信頼度を発表します(『人物鑑定』:byウィン)
結局僕は、『転移陣』で飛び回って『人物鑑定』をかけまくることになった。
ちょっと面倒かもと思ったけど、やってみるとそうでもなかった。
『ジャコモさんのいる所』とか、
『フェイスさんのいる所』とか、
『ネロさんのいる所』とか、
それくらいの指定で簡単に転移できたのだ。
これなら1日1回、全員に挨拶回りしろって言われても大丈夫かも。
まあ、しないけどね。
ただ後でティティンさんから聞いた話では、普通の『転移』はそれ程使い勝手の良いスキルではないらしい。
元々レアなスキルだが、能力が低い間はなかなか正確に狙った場所に転移できないとのこと。
よく知っている場所への転移でも難しいそうだ。
つまり、僕がしているようなアバウトな指定は論外ってことだ。
クエストで取得した『転移陣』は、この世界の普通の『転移』とはかなり性能が異なるのかもしれない。
「それでは、ウィンギルドのメンバーの鑑定結果を聞かせてもらえるかな。」
ティティンさんが執務席に座ったままでそう言った。
僕たち6人は今、ララピスの商人ギルドのギルド長室にいる。
6人というのは、僕、ルルさん、リベルさん、ルカさん、ティティンさんと、仕事を放り出して僕について来たジャコモさんの合計6人だ。
「フォッフォッフォッ。ウィン殿、ちょっと目を離すとすぐに面白いことになっておりますのう。ウィンギルド創設メンバーとして、誇らしく思いますぞ。」
ジャコモさん、いったい何を誇らしく思ってるのやら。
ウィンギルドって、僕のやらかしを追っかけるためのギルドなんですか。
それに「ちょっと目を離すと」って言ってますけど、まったく目を離してませんよね。
なんなんですかあの『日報制度』って。
たぶん情報を取るための『隠密』もたくさん放ってるだろうし。
「ジジィ、何しに来やがった。コロンの商人ギルドはそんなに暇なのか。」
「おお、ルカ殿は相変わらず手厳しいのう。コロンでも後継が育っておってのう。ワシなど居場所がなくて困っておるんじゃよ。もちろんワシの正式な後継者はウィン殿じゃがのう。」
ジャコモさん、しれっと人の将来の進路を会話に紛れこませるのはやめてもらえませんか。
商人ギルドに就職する予定は今の所ありませんので。
「『コロンの白鯨』、ジャコモ様にお越し頂き光栄です。ただ今回のことは私個人の問題ですので、そこのところお汲み取り頂ければと思います。」
「ティティン殿、分かっておるよ。まったくルカ殿も、これくらい老人を労わってくれればいいんじゃが。」
丁寧に対応するティティンさんに対して、ジャコモさんは横目でルカさんを見ながら言葉を返した。
ティティンさんとジャコモさん、見た目は祖父と孫くらいに見える二人だが、これで2歳差しかないなんてちょっと不思議な感じ。
これは種族差なのか、それとも個人差もあるのか。
ドワーフ族も長命らしいけど、エルフ族とどれくらい違うんだろう。
「ジジィのどこに労わるべき要素がある。行動力も悪知恵も絶好調の現役だろうが。」
「フォッフォッフォッ、ルカ殿、褒めてくれるのはありがたいが、もうワシも若いもんにはついていけんでのう。ウィン殿を見ておると、早く引退すべきかと愚考しておるんじゃよ。」
「まったく褒めてねぇ。それに比較対象にこの異常なちんまりを出すんじゃねぇ。」
この二人も相性が悪そうで、そうでもないんだよね。
いつもルカさんが突っ込んでジャコモさんがとぼけるんだけど、まるで掛け合い漫才を見てるみたいだ。
「まあまあ、無駄話はこれくらいにしてウィン殿の話を聞こうかのう。ウィン殿の人物鑑定については、ワシも興味があるでのう。」
あっ、ジャコモさん、強引に話を本題に戻した。
でもルカさんとの会話を「無駄話」として切って捨てるあたり、とぼけてるようで時々言葉に「毒」を紛れ込ませるよね。
「では、現在のウィンギルドのメンバーの友好度と信頼度を発表させて頂きます。発表順に特に意味はありません。」
僕はそう前置きしてから、全員の前で結果を告げた。
【鑑定結果】
ルル 友好度:100 信頼度:100
リベル 友好度:100 信頼度:80
ジャコモ 友好度:100 信頼度:75
ルカ 友好度:75 信頼度:75
フェイス 友好度:100 信頼度:90
シルフィ 友好度:100 信頼度:100
ネロ 友好度:80 信頼度:80
グラナータ 友好度:80 信頼度:80
マッテオ 友好度:100 信頼度:100
アリーチェ 友好度:100 信頼度:100
『友好度』も『信頼度』も75から100の間に収まった。
普通ならちょっとあり得ないほど高い数値だよね。
実は今回の『人物鑑定』について、僕は内心で心配していた。
実際にギルドメンバー全員を鑑定してみて、『有効度』も『信頼度』も低かったらどうしようかと。
だから結果を見て、かなりホッとしたというのが本音だ。
もちろん個人個人で若干のばらつきはある。
人間関係に関する数値なので当然と言えば当然だけど。
僕は視界に表示された鑑定結果を見ながら、各メンバーと少し話してみることにした。
もちろんここにいるメンバー限定だけど。
「ルルさんは安定の100&100ですね。」
「当然だ。むしろ100より上じゃないのが不満だ。」
ルルさん、鑑定は100%が上限だと思います。
意気込み的には120%とか200%とか言いたいのは分かりますが。
まあ、その気持ちはありがたいのでここでは指摘しないでおきますね。
「リベルさんは、信頼度が80%ですね。」
「ウィンさん、ルルが両方100なのに、ボクの信頼度が80なのは納得できません。」
「たぶんですけど、リベルさんの場合、僕と美味しい食べ物だと食べ物を選びますよね。そこが20%減ではないかと・・・・・」
「そんなことないです。美味しい食べ物=ウィンさんなので、選ぶ必要なんてないじゃないですか。」
リベルさん、そういうところがマイナスなんだと思いますよ。
それにその言い方だと、僕自身が美味しい食べ物みたいじゃないですか。
リベルさんを信用してない訳じゃないけど、美味しい食べ物が目の前にあったら、きっとリベルさんはそっちに気を取られちゃうと思うんですよね。
「ジャコモさん、友好度の100は置いておくとして、信頼度の75はどう考えればいいんでしょう?」
「友好度の100は当然じゃ。ウィン殿はワシの後継者じゃし、老い先短い老人の生き甲斐じゃからな。信頼度はしょうがないじゃろう。商人である以上商売が最優先じゃからのう。引退後なら信頼度も100になると思うがのう。」
ジャコモさん、『後継者』を確定のように使うのはやめて下さい。
それに老い先短いって・・・・・ドワーフはヒト種よりかなり長生きですよね。
さらに言わせてもらえば、引退してもジャコモさんの本質は変わらないと思いますよ。
むしろ死ぬまで現役じゃないですか。
「ルカさん、両方とも75ですね。コメントあります?」
「ああ、この中じゃ俺の数字が最低点だな。でもな、俺にとっては75ってのは最高値だ。誰が相手でもこれ以上はありえねぇ。そういう意味では最高に評価してるってことだ。」
ルカさん、ティティンさんの言う通り、やっぱりツンデレが入ってますね。
心なしか顔が赤くなってますよ。
でも表情に出ちゃうのって、優秀な商人としてどうなんでしょうね。
もちろん、何に対しても厳しめなルカさんから、両方75を頂けるなんて、僕としては大変光栄なことです。
僕は4人と少し話した後、ここにいないメンバーの数字も確認した。
フェイスさんの100&90は、以前に鑑定した時と変化していなかった。
友好度100はフェイスさんのストーカー気質の現れだろうし、信頼度90は本人曰く「少しくらい謎がないと魅力的じゃないから」ということらしい。
シルフィさんの100&100は、僕に対してというより、従魔とテイマーに対する絶対的な愛の証かな。
シルフィさん、テイマーギルドのギルド長をするために生まれてきたみたいな人だからね。
ネロさんとグラナータさんの80&80は、二人にとっての最優先事項が冒険者ギルドだからだろうな。
僕も冒険者ギルドに登録してるけど、僕の場合、冒険者ギルドの物差しでは計りにくい存在だしね。
マッテオさんとアリーチェさんの100&100は・・・・・もう何て言うか、無償の愛みたいな。
二人とも年齢はそれほど僕と離れてないけど、この世界のお父さんとお母さんみたいな存在だしね。
『はじまりの島』から外に出て初めて出会ったのがこの二人だし。
「ウィン君、数字も出揃ったようだし、私から話をさせて頂いても構わないだろうか?」
ここにいないメンバーのことを考えていると、ティティンさんが口を開いた。
もちろんそれが今回のメインなので異論はない。
「どうぞお話し下さい。」
「では申開きをさせて頂くとしよう。私の数字が両方50なのには正当な理由がある。」
「正当な理由?」
「それを説明する前に、一言先に言っておきたい。ジャコモ! ルカ! 2人はズル過ぎる!」
それまで『たおやか』だったティティンさんが、いきなり大声で叫んだ。
しかもジャコモさんまで名前を呼び捨てにして。
ティティンさんがキレるなんて・・・いったい何が起こった?
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