第258話 ギルドメンバーが増えるようです(ティティン:商人ギルド・ララピス支部ギルド長)

第三章 世界樹の国と元勇者(258)

   (アマレパークス編)



258.ギルドメンバーが増えるようです(ティティン:商人ギルド・ララピス支部ギルド長)



戦いは、あっという間に終了した。


ルルさんは拳で10個の『鉄鉱石種』を瞬砕。

リベルさんも『勇者の剣』で10個の『水晶種』を瞬斬。

僕も『火炎放射』で10個の『琥珀種』を燃やし尽くした。


従魔のタコさんは・・・・・ずっとクルクル回っていた。

いつの間にか黄色のポンポンを2つ、足に装着している。

タコさんからの指示がないので、雷鰻さんたちは待機状態。

結局、タコさんチームは戦いには参加しなかった。


タコさん、リベルさんのフォローをお願いしたよね。

結果的には必要なかったかもしれないけど、どうしてクルクル回ってたの?

えっ?

ちゃんとフォローした?

どうやって?

一生懸命リベルさんを応援した?

だから黄色のポンポンを持ってるの?

フォローってそういう意味じゃなかったんだけど・・・。

まあ結果オーライってことでいいか。



「弱過ぎる。」

「ルルさんの相手、星1つですから。」


「ボクの相手も弱かった。」

「星2つですけど、さすが勇者ってとこですか。」


ルルさんとリベルさんが、あまりにも呆気なく終わった戦いに拍子抜けしているようだ。

変異種と戦った後なので、余計にそう感じるのだろう。

まあ、正統派とは言い難いけど、曲がりなりにも『聖女』と『勇者』だしな。

あと「非常識で異常な魔法」(byルル)を使う僕もいるし。



…うぃん殿、一段落したところで『どろっぷ』と『くえすと』の報告をさせて頂いても良いでござるか?…



さすがにこれくらいでルカさんとティティンさんからの依頼は達成だよねとか考えていると、「中の侍」さんからメッセージが表示された。


『どろっぷ』ってダンジョン内の魔物討伐のドロップ品のことかな。

『くえすと』は討伐クエストのことだよね。


…左様でござる…


でもドロップ品って、文字通り魔物を討伐した時に落ちるものじゃないの?


…おっしゃる通り…


落ちてないけど。


…落ちると同時に自動で空間収納に移る仕様にござる…


そうなんだ。

便利だけど、なんか楽しみ半減な感じだね。

倒した瞬間に目の前に落ちた方が、達成感があるというか、何が落ちるか楽しめる気がするけど。


…このだんじょんの魔物は、基本的に同じものが必ず落ちる設定でござる。空間収納への移動については、うぃん殿が望むのであれば仕様変更は可能でござるが…


まあ、とりあえずはそのままでいいかな。

それじゃあ報告をお願いします。


…了解でござる。『どろっぷ品』と『討伐くえすと報酬』は下記の通りでござる…


【ドロップ品】

 鉄鉱石種  13体  鉄鉱石(13個)

 琥珀種   12体  琥珀(12個)

 水晶種   11体  水晶(11個)


【討伐クエスト報酬】

 鉄鉱石種     10体  鉄鉱(延棒10本)

 鉄鉱石種(変異体)  3体  鋼(延棒3本)

 琥珀種      10体  琥珀酒(10本)

 琥珀種(変異体)   2体  琥珀酒(蝙蝠入り2本)

 水晶種      10体  水晶玉(小10個)

 水晶種(変異体)   1体  水晶玉(大1個)



岩石系の魔物たちだけに、ドロップ品もクエスト報酬も素材系だね。

まあ予想通りだけど。

でも『琥珀酒』が手に入ったのは嬉しいかも。

蝙蝠入りのやつがちょっと気になるけど。



「ルルさん、リベルさん、魔物討伐のドロップ品と討伐クエスト報酬があるんですけど、3人で分けます?」

「ウィンが持っててくれ。ウィンは私の武器庫で資材庫で兵站庫だからな。」

「ボクもそれでいいです。ウィンさんはボクの食料庫なので。」


もうコロロックがこれで打ち止めなら、今からこの2人と死闘を演じてもいいですか?

ここでガツンと叩いて、僕に対する認識を変えさせないといけない気がするんですが。


それにルルさん、あなたも既に『空間収納』持ってますよね。

自分のものは自分で持てばいいじゃないですか。


「すべてウィンに任せる。私は強くなることに専念する。」


ルルさんは僕の目を真っ直ぐに見つめてそう言った。

ちょっといい事を言ってるふうだけど、それって戦うこと以外は丸投げしたいって宣言ですよね。

それからリベルさん、食べ物以外はどうでもいいんですね。


「あるじ、いろいろ悩んでるところ申し訳ないの。おにぎり10個欲しいの。」


僕が仲間との付き合い方について内心で葛藤していると、タコさんがおにぎりを要求してきた。

ご褒美のおねだりかな。

でもタコさん、一人で10個も食べるの?


「一人分じゃないの。部下に1個ずつ、自分に2個なの。」


えっ、雷鰻さんたちもおにぎり食べるの?


「もちろんなの。あるじのおにぎりはパワーアップの源なの。」


そうなんだね。

はい、おにぎり10個。

ここで食べるのはどうかと思うので、『小屋』で食べてね。


僕はおにぎり10個をタコさんに渡すと、召喚を解除してタコさんチームを『小屋』に戻した。


「さあ、外に出ましょうか。」

「そうだな。もう強い魔物もいないようだしな。」

「ウィンさん、屋台巡りに行きましょう。」


ルルさんもリベルさんも、興味の対象がはっきりしてるので、発言も分かりやすい。

でも本当はこの世界の世事に長けた仲間が欲しかったんだけど。

2人ともその方面には役に立ちそうにないな。

まあ、仲間がいるだけでも幸せなことだよね。


そんなことを考えながら、僕たちは入ってきた石の門を通ってダンジョンを出ることにした。



「ウィン様、まさかもう討伐を終えられたのですか。それとも休憩ですか?」

「ウィン、早過ぎるんじゃないのか。ダンジョン内の状況はどうなってる?。」


ダンジョンを出ると、そこにはティティンさんとルカさんが待ち構えていた。

結構時間がかかったと思ってたけど、早かった?

まあ最初と最後は瞬殺だったし、『琥珀種(変異体)』と『水晶種(変異体)』も手こずったけど、時間的にはそれ程でもなかったかもしれない。


「とりあえず、出現したコロロックは全部倒してきましたよ。」


僕がそう告げると、ティティンさんとネロさんの目が大きく見開かれた。


「ウィン様、それは通常種のコロロックだけでしょうか?」

「通常種は最後に30体出てきましたけど、その前に鉄鉱石種の変異体が3、琥珀種の変異体が2、水晶種の変異体が1出ましたね。」

「まさか・・・そのすべてを討伐されたと?」

「はい、水晶種はかなり大変でしたけど、従魔たちのおかげで倒せました。」


僕が報告を終えると、その場に沈黙が舞い降りた。

ルカさんは呆れ顔で溜息をつき、ティティンさんは右手の人差し指を頬に当てて考え込んでいる。

ティティンさん、それ、どう見ても女性の仕草に見えます。


「聖女様、勇者様、変異体の討伐はお二人がされたのでしょうか?」


ティティンさんが急に顔を上げてルルさんに質問した。


「鉄鉱種の変異体は私だが、琥珀種と水晶種はウィンだ。ダメ勇者は飾り程度だな。」

「ルル! 水晶種のとどめはボクが刺したじゃないか!」

「ああ、あれか。感電して黒焦げになってたやつな。」

「うるさい! それでも最後はボクだ。」

「美味しいとこ取りは倒したとは言わない。ウィンのヒールがなければ、今も黒焦げのままだったぞ。」


また始まっちゃったよ。

誰がどうしたとかどうでもいいのにね。

パーティーで依頼達成したってことでいいんじゃないかな。


「ルカ君が言うことなので話3割で聞いてましたが、これは想像以上ですね。」

「ティティン、俺に対するその評価はおかしくないか?」

「何を言ってるんです。商人の話の信憑性など元々そんなものですよ。商品の価値をどうやって高く思い込ませるかが腕でしょう。」


おお、ティティンさん、良い人そうなのにけっこう発言が腹黒い。

いや、商人としての矜持をしっかり持っているということか。

これはたぶんジャコモさんタイプだな。


「ところでウィン様、商人ギルドとしての報酬の話をする前に、ひとつお願いがあります。」

「はい、何でしょう?」


ティティンさんが急に僕の方を振り向き、女性のような綺麗な顔でそう言ってきた。

僕は、「腹黒い」とか考えていたこともあり、ちょっとドキッとしながら彼の言葉に応じた。


討伐報酬、値切られたりするのかな。

ここまで結構な被害が出てたかもしれないし。

戦闘時間も短かったし、時給計算でとか。

あっ、その前に報酬の額とか確認するの忘れてた。


そんな心配をしていたけど、ティティンさんのお願いはまったく予想外のものだった。


「私をウィン様のギルドに参加させて下さい。」


はい?

僕のギルドって『ウィンギルド』のことだよね。

正確には僕のギルドじゃなくて、周りが勝手に作ったギルドだけど。

でもいったいどこからそんな話になったの?


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