第257話 これってボーナスラウンド?(コロロック:通常種)
第三章 世界樹の国と元勇者(257)
(アマレパークス編)
257.これってボーナスラウンド?(コロロック:通常種)
「予想外に派手な最後だったな。」
「そうですね。粉々に割れるのは想定内でしたけど、あんなに光るとは思いませんでした。」
「あれは、水晶種というより雷鰻のせいじゃないか。」
「どういうことですか。」
「電撃が溜まりすぎていたとか。」
「ああ、それで水晶種が壊れた瞬間に、放電というか、光が出たんですか?」
「その可能性はあるな。」
視力が回復したルルさんと僕は、『水晶種』の最後について語り合っていた。
幸いタコさんと雷鰻さんたちは全員無事で、足と尻尾でハイタッチしながら、初のチーム戦による勝利を喜び合っている。
タコさんに雷鰻の特技『逃げ足』について質問してみたところ、
「部下にはみんな付けてるの。逃げて生き延びることが一番大事なの。」
という答えが返って来た。
タコさん、それって上司として素晴らしい考え方だと思うよ。
一方リベルさんは、少し離れたところに倒れてプスプスしていた。
煤だらけの顔で、服装も焼け焦げ、髪の毛もチリチリになっている。
どうやら『水晶種』に短剣を突き刺した瞬間に感電したようだ。
ゼェゼェ言ってるので死んではいない。
僕は横たわるリベルさんの姿を見ながら「アダマンタイトは通電する」と心の中のメモ帳に書き留めた。
「しかし、最後に短剣で刺す必要はあったのか。」
「どうでしょう。電撃をもう1発撃ち込めば破壊できてたかもしれませんね。」
「そうだな。これで戦略は決まったな。」
「戦略ですか?」
「鉄鉱石種は私が殴る。琥珀種はウィンが燃やす。水晶種は雷鰻が破壊する。」
「完璧ですね。」
「ちょっと待って下さい!」
いつの間にか起き上がったリベルさんが会話に参入してきた。
見た目は初めて会った時よりボロボロだ。
「水晶種を倒したのはボクです。どうして戦略から外されてるんですか! 不当評価反対! 聖女の勇者に対する差別的扱いにも断固抗議します。」
リベルさんが『水晶種』を討伐した功績を主張しつつ、ルルさんに抗議の声を上げた。
うん、リベルさんの言いたいことは分かる。
でもそれは差別ではなく冷静な状況判断による区別なんじゃないかな。
『鉄鉱石種』を倒すには、打撃力の高いルルさんが適任。
『琥珀種』を倒すには、炎系の魔法が使える僕が適任。
『水晶種』を倒すには、電撃系を使える雷鰻が適任。
それだけのことだと思う。
別にリベルさんを評価してないわけじゃないし、見下しているわけでもない。
まあ、「考え無し過ぎる」とか、「周りが見えていない」とか、「燃費が悪すぎる」とか、マイナス評価も無いわけではないけど、能力の高さは認めてるので。
「リベルさん、ルルさんもリベルさんのことは認めてると思いますよ。光魔法に弱い魔物であれば、それはリベルさんの担当だろうし。
ルルさんの発言も相性を考慮しただけじゃないのかな。」
僕は一応フォローの発言を入れてみた。
しかし、ルルさんはやっぱりルルさんだった。
「ダメ勇者、ダメ勇者はやっぱりダメ勇者だからダメだ。」
ルルさんからまさかの『ダメ』発言4連発。
ルルさん、僕のフォローが台無しなんですけど。
「ルル、うるさい。ダメダメ言うな。ルルだって、鉄鋼石種以外、手も足も出なかったじゃないか。」
「琥珀種に食べられかけたり、水晶種に吹っ飛ばされたり、感電したりはしていない。」
「うっ・・・」
ルルさんの言葉の刃が、リベルさんの心を鋭く抉る。
まあ事実しか言ってないけどね。
でもルルさん、もうそれくらいにしてあげて下さい。
後でゆっくり反省会でもしましょう。
二人のやり取りを見ながらこの険悪な空気をどうしようかなとか考えていると、スラちゃんが4度目の警戒音を発した。
「リン(来る)! リン(いっぱい)!」
えっ、まだ次があるの?
『水晶種』で終わりじゃないの?
今度はどの穴から何が来るの?
いっぱいってどれくらい?
僕はたくさんの疑問を心に抱きながら、とりあえずリベルさんに『ヒール』をかけた。
煤けてたリベルさんが元の爽やかな海エルフ姿に戻る。
しかしそれと同時に、コロロックが転がる音が洞窟の穴から響いてきた。
「全部の穴から音が・・・・・全種類来るんでしょうか?」
「たぶんそうだろう。」
「それはまずくないですか?」
「役割分担通りで行くぞ。リベルは遊撃だ。」
ルルさんが端的に作戦を指示した。
各自のターゲットは決まっている。
ただ魔物の数が多いと厄介な戦いになるかもしれない。
さすがのリベルさんも、この非常事態に余計な反論は控えたようで、ルルさんの言葉に無言でひとつ頷いた。
やがてごろごろという音が大きくなり、3つの穴それぞれからコロロックが次々に姿を現した。
左からは大型の『鉄鉱石種』。
右からは中型の『琥珀種』。
そして真ん中から小型の『水晶種』。
それぞれ10体ずつ、合計30体のコロロックが広間のような空間に並んだ。
僕は即座にすべての魔物に鑑定をかけた。
特殊能力持ちがいないか確認するためだ。
しかし鑑定結果は僕の予想を下回るものだった。
【鑑定結果】
○コロロック(鉄鉱石種) ☆
系統 : 鉱物系岩石型
通称 : 『岩の魔物』
体型 : 大型
体色 : 黒色
特技 : 体当たり・押し潰し
○コロロック(琥珀種) ☆☆
系統 : 鉱物系岩石型
通称 : 『岩の魔物』
体型 : 中型
体色 : 琥珀色
特技 : 体当たり・軟化・取り込み
○コロロック(水晶種) ☆☆
系統 : 鉱物系岩石型
通称 : 『岩の魔物』
体型 : 小型
体色 : 透明
特技 : 体当たり・硬化・トゲトゲ・刺突
あれっ。
どのコロロックにも『強制変異』の表示がない。
『鉄鉱石種』は星1つだし、『琥珀種』と『水晶種』は星2つでプラスなし。
『鉄鉱石種』からは『硬化』が消えてるし、『琥珀種』は魔物を取り込んでいる個体がいない。
『水晶種』は、『超硬化』が『硬化』になっていて、さらに『光無効』の表示がない。
これ、今まで戦ったコロロックの劣化バージョンじゃないの?
いやむしろ、これが普通なのか。
もしかしてダンジョン攻略後のサービスラウンド?
これなら30体が相手でも十分戦える。
「ルルさん、鉄鉱石種、『硬化』なしです。リベルさん、水晶種、光魔法が通用します。琥珀種は僕が全部燃やします。タコさん、リベルさんのフォローお願い。」
僕が鑑定結果を考慮した作戦を全員に伝えると、直後にルルさんとリベルさんがコロロックに向かって走り出した。
タコさんは・・・なぜかクルクル回っている。
雷鰻さんたちはクルクル回るタコさんを見ている。
全員の動きを確認した後、僕は両手を前に突き出して『琥珀種』に向けた。
さあ、ちゃっちゃっと倒しちゃいましょう。
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