第28話 検証は続くようです(クエスト:混合クエスト)
第一章 はじまりの島(28)
28.検証は続くようです(クエスト:混合クエスト)
リビングに戻ると、みんなお腹いっぱいになったのか、2つのソファに分かれてまったりしていた。
ウサくんは香箱座り、スラちゃんはべちゃっと平たくなり、ハニちゃんは背もたれにもたれかかり、コンちゃんは横になっている。
タコさんは上下ひっくり返って逆さまになってるけど、メンダコ(の魔物)としてそれでいいのかな。
まだ試したいことがあったので、みんなを小屋に残したまま一人で外に出る。
昨日の夜、浴室で発現した「温水」に関してもう少し調べたい。
このクエストについては、発動前にクエスト同士を混ぜるので「混合クエスト」と呼ぶことにした。
まずは「WATER+FIRE」について試してみよう。
昨夜の表示では割合が(1:1)になっていた。
普通に考えれば、FIREの割合を高くすれば、水の温度が上がるはずだ。
(念のため、海の上で実験しようかな。何が起こるか分からないからね。)
イメージの中で水と炎の割合を(1:2)で念じてみる。
海の上に水の塊が現れ、しばらくすると海に落ちた。
落ちたあたりから少し湯気が出ているのが確認できた。
すぐに視界の中にクエストが表示される。
○クエスト : WATER+FIRE(1:2)
報酬 : 温水(NO LIMIT 個数・規模・形態)
達成目標 : NO NEED
割合が(1:2)に変化し、NO LIMITに形態が追加されている。
形態制限が解除されたのは、WATERと FIREの制限解除に準じているんだろう。
そこから割合を順次変えていくことにする。
(1:3)、(1:4)、(1:5)。
クエスト表示を見ると割合以外の部分は変わらないけど、実際に海上に現れた水の塊を見れば、湯気の量がだんだん増えていくのが分かる。
割合表示だけが変わるのかなと思っていると(1:6)で「温水」の表示が「高温水」に変わった。
さらに割合を変えていくと、(1:9)で「熱水」に変化した。
(熱水なら攻撃に使えるかも。)
そんなことを考えながら(1:10)を試してみると、発動した瞬間に海の上で何かが爆発した。
いきなりだったのでかなりびっくり。
ちょっと心臓が跳ねた。
まったく予想してなかったからね。
慌てて表示を見ると「水蒸気爆発」となっていた。
単なる水だと攻撃用としては使い勝手が悪いなあと思っていたけど、「熱水」、ましてや「水蒸気爆発」となると話が変わってくる。
武器として十分計算できる。
念のためさらに割合を変えて試してみたけど、(1:10)以上ではクエストが発動しなかった。
(他の組み合わせも試してみよう。)
水と炎の組み合わせが終わったので次の組み合わせに取り掛かる。
現在使用できるクエストで可能な限りの組み合わせを試してみた。
「WATER+STONE」と「WATER+ICE」は、水の中に石と氷がそれぞれ混じるだけだった。
割合を変えると水の中に混じる石と氷の量が変化したけどね。
クエスト表示は「石水」と「氷水」。
使い方はまたゆっくり考えよう。
「STONE+ICE」と「FIRE+ICE」は、そもそもクエストが成立しなかった。
そういう混合クエストは存在しないのか、あるいは自分の中でうまくイメージできないからなのか。
何か思いついたらまた試そう。
最後に「STONE+FIRE」を試してみると、クエスト表示が順次変化した。
(1:1)から(1:5)までは「温石」、(1:6)から「高温石」、(1:9)で「熱石」となった。
(「WATER+FIRE」の時と同じ感じだね。てことは次は要注意。)
もちろん危険回避のため、全てのクエストは海上で発現させている。
FIREの割合を上げるにつれて、石が海水に落ちた時のジュッという音がだんだん大きくなり、「熱石」では落ちたところが沸騰しているように見えた。
そしていよいよ(1:10)に挑戦する。
水と炎の混合クエストの時には水蒸気爆発が起こったので、今回も何かが起こる可能性が高い。
一応心構えだけはしておこう。
心の中で(1:10)をイメージして石と炎の混合クエストを発動する。
それまでは割合を変えても毎回同じように石が出現していたけど、今回は石ではなくオレンジ色に光るドロドロした塊が海の上に現れた。
そしてそれが海に落ちて海水に触れた瞬間、先ほどの水蒸気爆発以上の大爆発が起きた。
あれは・・・たぶん溶岩みたいな・・・。
ちょっとオーバースペック過ぎませんかね。
これ、使うの怖いんですけど。
* * * * *
驚き過ぎて疲れたので、検証を止めて小屋に戻ることにした。
心を平静に戻すのにちょっと時間がかかった。
リビングルームに戻ると、従魔たちはみんな寝ていた。
すやすやと、ソファの上で。
やはり徹夜で食材を集めてたんだろうか。
昼食後に寝るのは昼寝だけど、朝食後に寝るのは何て言うんだろう?
従魔たちを起こさないように忍び足で歩き、新設したばかりの作業部屋に入る。
みんなが寝てる間に錬金で試せることをやっておこうと思う。
まずは薬草。
「COOK」で青汁(のようなもの)になるのは分かってるけど、「錬金」はまだ試してない。
早速作業台の上に薬草の束を出し、「錬金」と声に出してみる。
薬草の束が炎に包まれ燃え上がる。
炎が出るということは「錬金」が成立しているということ。
いったい何ができるんだろう?
10秒ほど燃え続けて炎が消えると、作業台の上に青くて透明な液体が入った小瓶が現れた。
見た目は明らかに青汁とは違う。
青汁は緑色の液体で透明じゃない。
物質の鑑定能力はないのでこれが何かは分からないけど、たぶんポーション系の何かだろう。
しばらく眺めた後、とりあえず近くの棚に置いておくことにした。
次に石。
改めて気づいたけど、今までクエストで出した石を焼いてみたことはなかった。
スラちゃんが持ってきた食材用の鉱石は「COOK」したけどね。
ということでいろいろ試してみた結果は次の通り。
石を「FIRE」で焼く。 → 変化せず。
石を「COOK」する。 → 白い金属のインゴット
石を「錬金」する。 → 白い金属のインゴット
「COOK」と「錬金」の両方でクエストが成立したのは、石が食材(スラちゃん限定)でもあり、素材でもあるからかな?
白い金属が何であるかはやはり分からないので、とりあえず棚に置いた。
次は何をしようかなと考えていると、開けたままの扉からタコさんが入ってきた。
頭を傾げて、“何をしてるの?“ という表情をしている。
ちょうど頼みたいことがあったので、タコさんに言ってみる。
「倉庫からジュエルを3体持って来てもらえる?」
タコさんは僕の顔を見て、“了解“って感じで足を上げてから部屋を出て行った。
タコさんが倉庫に行ってる間にキッチンから空の水槽を3つ作業部屋に持ち込む。
以前作ってそのままキッチンの棚に放置していたものだ。
それらの水槽を作業台の上に置いて、クエストの水で満たしておく。
しばらく待っているとタコさんがジュエルを抱えて戻って来た。
念のためにタコさんに確認する。
「そのジュエルたち、麻痺してるだけだよね?」
タコさんは首をコクコクと縦に振る。
受け取ったジュエルを3つの水槽に1体ずつ入れて、タコさんにお願いする。
「ジュエルたちの麻痺を解いてくれる?」
タコさんは作業台に飛び乗り、足を伸ばして水槽の中のジュエルたちに触れていく。
麻痺を解かれたジュエルたちは、何事もなかったように水槽の中で泳ぎ出した。
これで照明を3つ追加で確保。
とりあえず寝室と浴室とトイレに置こう。
倉庫と作業部屋の分も早く作らないといけないな。
「タコさん、ありがとう。」
頭を下げてタコさんにお礼を言うと、タコさんは照れたように足で頭をかいた。
その動き、いったいどこで覚えてくるのかな?
タコさんと一緒に作業部屋を出ると、他の従魔たちも全員目を覚ましていた。
(各自、妙な運動みたいなことをしてるのは出かける準備?
もしかしてさらに食材を集めに行くつもり?
倉庫の空き、あんまりないんだけど。)
すぐにまた倉庫の拡張をしないといけないなと思いながら、リビングのソファに座る。
右隣にはウサくん、左隣にはスラちゃんがいる。
従魔たちが出かけてしまう前に次の依頼をしないといけない。
「タコさん、もう一つお願いがあります。」
僕と一緒に作業部屋を出た後、リビングの床の上でクルクル回って遊んでいたタコさんに声をかけるとタコさんは回るのをやめてソファの前までやって来た。
僕はタコさんと向き合った状態で、タコさんの目をしっかりと見つめながらお願いする。
「僕に麻痺をかけてくれませんか?」
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