第27話 そういうとこは頑張るんですね(倉庫:時間停止機能付き)

第一章 はじまりの島(27)



27.そういうとこは頑張るんですね(倉庫:時間停止機能付き)



小屋の前には従魔たちが勢揃いしていた。

それぞれの従魔の前には食材(素材?)が山のように積まれている。


「君たち、朝から宴会でもするつもり?」


呆れたように問いかけると、全員の首が縦に振られる。

シンクロしていてちょっとかわいい。

仕方がないので小屋の扉を開けてあげると、従魔たちは器用に自分の食材を抱えて中に入って行く。

ウサくんだけは、「影潜り」で移動してるけどね。


小屋の中に入ってまずリフォームの成果を確認する。

リビングルームは広さが2倍になり、正面の壁に3つ目の扉(作業部屋)が出現していた。

2つのソファの前にはそれぞれローテーブルが置かれ、ダイニングテーブルの周囲には、子供用の椅子が2脚増えて5脚になっている。


そのまま他の部屋もチェックしようと思ったけど、それは許してもらえないらしい。

従魔たちがリビングの床に横一列に並んで、期待に満ちたつぶらな瞳でこちらを見上げてくる。

これはちょっと無視できないよね。


従魔たちの前の戦利品(食材)の山を眺める。

君たち、食材集めのために全員出かけてたんだね。 

朝から気合い入り過ぎじゃないかな。

食への執着、凄過ぎない?

まあ、努力には応えてあげないとだけど。



タコさんはいつもの魔魚類だね。

あれ、今日は貝も混じってる?

それ魔貝?

魔貝も麻痺させて獲るの?

面倒なので魔物情報は後で見ることにしよう。


ウサくんは安定の野菜類。

初めてのものもあるみたいだね。

その赤いのは唐辛子かな?

もしかしてカニバラス・ミニマの討伐報酬?

ウサくんだと『ランダム』が機能するの?


スラちゃんはもちろん鉱石類。

なんか種類多くない?

どこで採掘してくるの?

その透明なのは水晶?

まさかダイヤモンドとかじゃないよね?


ハニちゃん。

それは果物だよね。

リンゴとバナナとパイナップルに見えるけど。

この島で初めて果物を見た気がする。

後でどこで採れるか教えてくれないかな?


コンちゃん・・・。

虫はちょっと・・・。

バッタとか、なにかの幼虫とか。

これ、料理しろってことだよね?

それから蜂はちょっとまずいんじゃないかな?

ハニちゃんがいるんだし。



従魔情報の『素材』の項目って、各自が集めてくる食材を示してるんだろうか?

いっそのこと『食材』って表示すればいいのに。

いろいろ言いたいことはあるけど、仕方がないので順番に「COOK」することにする。


まずタコさんの食材をキッチンに運び、シンクの中にまとめて入れる。

貝は魔貝ではなかったようで、魔物情報は表示されなかった。

かなり大きいけどこれ普通の貝?

この島に普通の生物っているんだね。

まだ魔物にしか出会ってない気がするけど。

面倒なのでまとめて「COOK」すると焼き魚各種の盛り合わせができた。

貝は焼き貝になっていた。


ウサくんの食材は、野菜サラダと野菜炒めになった。

生モノと焼き物が同時に出現。

炎のあとに生モノが出るとかなり違和感がある。


スラちゃんのは、色とりどりのインゴットになった。

黒いのや赤いのや銀色のや・・・虹色のもある。

これ「COOK」じゃなくて「ARCHEMY」の範疇じゃないの?

あと透明のやつはブリリアントカットみたいになってますけど・・・。


ハニちゃんの果物からはカットフルーツとミックス・ジュースらしきものができた。

とても健康に良さそう。

ただどっちも炎で調理するものじゃないと思うんだけどね。


そしてコンちゃん・・・。

佃煮みたいなのができてますが・・・。

原型とどめてるよ。

うん、そのまま出そう。          



出来上がった料理をどんどんダイニングテーブルの上に並べていく。

従魔たちは子供用の椅子に座って(乗って)、それぞれのご飯を待っている。

朝食としてはやり過ぎだと思うけど、みんなが喜んでるからまあ良しとしよう。

でも毎日はしないからね。


全部の料理を運んだ後で、自分用の椅子に座っておにぎりと青汁をクエストで出す。

朝はこの組み合わせが自分の定番になりつつある。

薬草からできるこの青汁を飲むと、体の調子がとてもいい気がするんだよね。

一応『青汁』って呼んでるけど、たぶん青汁じゃないだろうな。

どう考えてもポーションか何かだと思う。


おにぎりを食べていると、タコさんが足を上げて合図してきた。

「何?」と訊くと、足を器用に使って三角形を作る。

「君もおにぎり食べるんだね?」と確認すると、従魔たち全員の足(コンちゃんは手、スラちゃんは体の一部)が一斉に上がった。


(みんな体が小さいのに、どこにそんなに入るんだろう? 謎だ。)


頭の中でおにぎりを何個出そうかと考える。

タコさんが3個、他の従魔たちが各2個、ジュエルたちに1個ずつで3個、合計14個。

念のため予備を1個加えて15個のおにぎりをテーブルに置いた。


(さて、みんなが食べてる間に他の部屋をチェックしますか。)


自分の朝食はすぐに終わったので、モグモグしている従魔たちをダイニングテーブルに残したまま立ち上がる。

新設した作業部屋と拡張した浴室、倉庫の確認をしないとね。


最初に作業部屋の中に入ってみる。

主に錬金(ARCHEMY)用に使おうと思っている部屋だ。

実験室みたいなものかな。


3面の壁際には木製の棚がずらりと並んでいる。

錬金のための素材とか、錬金で出来たものとかを置くために棚を多めにイメージしたらその通りになっていた。

正面の壁には大きめの窓があり、その手前に作業用の石製の台が5つある。


まだすることがいっぱいあって、『錬金』と真剣に向き合う時間がないけど、そのうちじっくり取り組みたいと思っている。

意外と好きなんだよね、引きこもってムシムシ地道な作業するの。


次に浴室を確認してみる。

ドアを開けると全体の広さが2倍くらいになっていた。

浴槽も広くなり、なぜか深さが2段階になっている。

イメージでは浴室も浴槽も広くすることしか考えなかったんだけど。

もしかするとこの浅い部分は従魔仕様なのかな?

中のヒト、普段は徹底的に塩対応なのに、こんなところは芸が細かいんだね。


最後に倉庫を覗いてみると、こちらも倍の広さに拡張されていた。

広さに応じて収納用の棚も追加されている。

ただ、この光景はいったい何なのだろう。

拡張したばかりのはずなのに、倉庫の棚にモノが溢れている。


魚貝類、海藻類、野菜類、穀物類、鉱石類、果実類、小瓶に入った液体類、昆虫類。

今まで見たこともないものも混じってるけど、明らかに従魔たちの収集したものだろう。

棚ごとに綺麗に分類されて整然と並べられている。


(従魔たち、もしかして徹夜で食材集めしてた?

 毎食ここで宴会するつもり?

 でも魚介類とかすぐ傷むと思うんだけど。

 野菜も根菜以外はそんなに保たないよね。

 果実も腐るんじゃないかな。

 昆虫は・・・どうなんだろう?)


…時間停止機能付きだ(怒)…


予想しないタイミングで中のヒトのメッセージが流れた。

えっ?

説明というか、補助というか、助けになるというか、そういうの初めてだよね。

でもなんで怒ってるんだろう。

中のヒトの性格、いまいち把握できないな。


でもこれで、食材の確保はとても楽になる。

時間停止だから劣化しないし、拡張できるから容量も確保できる。

ただ倉庫なので持ち運びはできないし、出先ですぐ取り出したりすぐ収納したりはできない。

そして気をつけないと・・・単なる従魔たちの食糧庫になってしまうかもしれない・・・。

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