第21話 食虫植物ですがなにか(従魔:コンちゃん)
第一章 はじまりの島(21)
21. 食虫植物ですがなにか(従魔:コンちゃん)
森の中探検ツアー初日は、カニバラス・ミニマを100体倒したところで終了した。
○クエスト : TAME(カニバラス・ミニマ)
報酬 : カニバラス・ミニマ(1体)
達成目標 : 100体倒せ
カウント : 達成済み
報酬として現れた個体の呼び名は「コンちゃん」に決定。
体型がトウモロコシに似ているのでコーンのコンちゃん。
安直だけど呼びやすいのが一番だと思う(言い訳)。
食虫植物型の魔物のはずだけど、なぜかトウモロコシの房のような形状をしていて、そこに短い手足とまん丸な目が二つ、口がひとつ付いてる。
「攻撃用の蔓と根は?」
不思議に思って聞いてみると、右手が伸びて蔓になり右足が伸びて根になった。
どうやら普段は邪魔なので蔓と根を短くしてるらしい。
コンちゃんは得意気に蔓を振り回したり、根を地中に潜らせて突き出してみたりデモンストレーションしてくれる。
気持ちは嬉しいんだけど、距離が近過ぎて危ないのでやめてもらえるかな。
新しくコンちゃんが加わって、5人(1人と4体?)で仲良く帰ることにする。
帰りの森の中はコンちゃんが先導してくれたおかげか、他のカニバラス・ミニマからの攻撃は一切なかった。
単にクエストが終わったので出てこなかっただけかもしれないけど。
大量のタマネギは、ウサくんが「影潜り」で運んでくれた。
玉ねぎと一緒に消える前に「生物も運べないの?」と聞いてみると、「無理」って感じで首を振られた。
まあ、それができたら「転移」と同じだよね。
森を抜けた所でコンちゃんが立ち止まる。
一緒に行かないのって感じで小屋の方を指差してみたけどコンちゃんは首を振って逆に森の方を指差した。
そして「バイバイ」と短い手を振った。
どうやら森の外まではついて来ないらしい。
今日は来ないのか、ずっと来ないのかは分からないけど、せっかく新しい仲間が増えたので、みんな一緒に食事とかしたかったな。
あっ、でもコンちゃんの食べ物って昆虫とか小動物だったよね。
それって、クエストで出せるのかな。
そんなことを考えながら、コンちゃんに「また明日」と手を振り返した。
小屋に戻るとウサくんがソファでくつろいでいた。
タマネギを運んでそのまま小屋にいたようだ。
「タマネギは?」と聞くと、ツノで倉庫の方を指し示す。
すでに倉庫に収納済みらしい。
スラちゃんは腕輪の形のままで左腕に巻きついて寝ている。
スラちゃん、森の中で大活躍だったからね。
タコさんはソファにピョンと飛び乗ると、「ふ〜」と疲れたように息を吐いた。
タコさん、君、今日何もしてないよね。
倉庫には大量のタマネギがある。
できれば他の野菜も欲しかったけど、「ランダム」がまったく機能しなかったせいでタマネギだけだ。
またその内ウサくんが他の野菜を持ってきてくれるかな。
そう言えばタマネギって、犬に食べさせちゃいけないんだったよね。
ウサギは大丈夫なんだろうか?
魔物だし、自己責任でお願いしよう。
テーブルの上におにぎりと水と小石と薬草を置き、ジュエルの水槽におにぎりを落とす。
ジュエルたちはすぐにおにぎりを食べ始める。
他のみんなもお腹が空いたら勝手に食べるだろう。
(ちょっと休憩しよう。)
そう思って寝室に入りベッドの上に寝転がる。
スラちゃんはまだ左腕で眠っている。
さすがに戦いの疲れが溜まっていたのだろう、目を閉じるとすぐ意識がなくなった。
* * * * *
暗くなる前に寝てしまったので、夜中に目覚めるかと思っていたけど、気がついたら朝だった。
頭の中には夢を見た感覚がカケラもなく、深く純粋な眠りだったようだ。
左腕を見るとスラちゃんはいなくなっていた。
リビングに入るとタコさんもウサくんも見当たらない。
窓からは朝の光が差し込んでいて、ジュエルたちは既に光を消して水槽の中でゆらゆらしていた。
(みんな、帰っちゃったみたいだね。)
テーブルの上を確認すると、昨夜置いた食べ物は何も残ってなかった。
扉を開けて外に出る。
早朝の浜辺の空気は生まれたての匂いがする。
小屋の中に増やしたいものがあったので草原まで歩き、屈伸運動をしてから5秒間ダッシュを繰り返した。
○クエスト : 窓が欲しい(HOME)
報酬 : 窓
達成目標 : 5秒間ダッシュ(10本)
「HOME系」のクエスト4回分(ダッシュ×40)を終えて呼吸を整えながら小屋に戻ると、正面と左の壁に大きな窓が追加されていた。
寝室と浴室にも望んだ通りの窓が設置されている。
どの部屋にも外部の光が入るようになり、さらに快適さが増した。
リビングのテーブルに座っておにぎりと青汁で朝食を取る。
この組み合わせも悪くはないんだけど、やっぱり朝ご飯にはアレだよねと思って試しに願ってみる。
(味噌汁が飲みたい。)
しばらく待ってみたけどクエストは表示されず、「中のヒト」の反応もない。
ダメだろうなと予想はしてかけどちょっとガッカリ。
なかなか思うようにはいかないね。
腹ごしらえをした後で再び外に出て、積み残しの課題に挑戦することにする。
まずは「WATER」の500回達成だ。
(水を出すなら水の上かな)と思い、水平線を見ながら海の上に向けて水クエストを繰り返し発動する。
○クエスト : WATER
報酬 : 水(NO LIMIT 個数・規模)
カウント : 500
続けて「STONE」の500回達成を目指す。
石はスラちゃんが食べるので、海の上ではなく砂浜の上でクエストを発動する。
○クエスト : STONE
報酬 : 石(NO LIMIT 個数・規模)
カウント : 500
結構時間がかかったけど、無事に「WATER」と「STONE」が500回に到達した。
そして予想通り両方とも規模制限が解除された。
カウント500超えは「FIRE」も含めてこれで3つ。
次は制限解除について改めて検証してみよう。
個数については火も水も石も一度に5個までは簡単に出せた。
でも6個出そうとするとうまくいかない。
何度か繰り返し試していると、ようやく6個出すことに成功する。
そして一度成功すると、その後は簡単に出せるようになった。
7個も同じように初めは失敗する。
上手くいくまで6個の時よりさらに長い時間がかかった。
おそらく熟練度とか経験値みたいなものが関係してるんじゃないだろうか。
規模も試してみたけど同じような結果だった。
ある程度までは簡単に大きくできるけど、一定以上になると練習が必要になる。
結論として「NO LIMIT」は、無条件に無制限ではなく、成長に限界がないという意味だろう。
ただそのためには練習や経験が必要で、レベルが上に行けば行くほど必要量が増加する。
まあ当然と言えば当然で、大きな力を得るのはそんなに甘くないってことだよね。
砂浜に座って一人で納得していると海からタコさんがやってきた。
サーベル・ヘッドをズルズルと引き摺っている。
岩場からはスラちゃんが走って来て砂浜に積まれた石の山の上で飛び跳ねて喜んでる。
当然もう一人もいるよねと小屋の方を振り返ると、ウサくんがお座りしてこっちを見ている。
隣には前回よりも大量の野菜が積まれていた。
さて、みんなの朝ごはんを作るとしますか。
* * * * *
みんなの朝ごはんを「COOK」で作って食べた後、森の中探検ツアー2日目に出発することにした。
スラちゃんは既に金の腕輪になって左腕に巻き付いている。
ウサくんは後ろで葉っぱをモグモグしている。
タコさんは朝ごはんの残りのおにぎりを一つ、大事そうに抱えている。
タコさん、それはお弁当なのかな。
欲しければいつでも出してあげるんだけどね。
昨日と同じように草原をテクテク歩いて行くと、森の前でコンちゃんが待っていてくれた。
コンちゃんを先頭にして森の中を進む。
昨日の帰り同様、蔓の鞭や根の攻撃は一切ない。
ただ少し違うのは時々カニバラスたちが姿を表すこと。
コンちゃんとカニバラス達は、お互いに近づくと蔓の腕を上げてハイタッチしていた。
しばらく進むとコンちゃんが急に立ち止まった。
(ここまでかな)って感じで首を傾げて見せる。
おそらくここから先は新しい領域。
木漏れ日の中で警戒しながら立っていると、左腕のスラちゃんが「リン(来た)」と鳴き、木々の向こうから何かの音が近づいてきた。
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