第8話 アイラの実力


(何が起こっているんだ!?)


 目の前の状況に理解が追い付かなかった。


 オーガの実力は、俺自身が一番わかっている。それほど今の俺たちには強敵である。それこそ、魔剣が無かったら勝つことが出来なかったほどに。


 それなのに、アイラとセナの二人でオーガを倒す間際であった。


 俺はすぐさま、首を横に振って、セナとアイラの元へ駆け寄る。


「加勢する!!」

「ダイラル、大丈夫よ。これぐらいなら私とセナで何とかなる」

「うん。ダイラルは危ないと思った時だけ加勢して」

「わ、分かった......」


 言われるがまま、俺はセナの後ろへと移動した。


 そこからの戦闘がすごかった。


 オーガが放つ炎玉かえんだんに対して、セナは風切エア・カッターでうまく方向を逸らしてアイラに当たらないようにしていた。


(魔法を相殺するのではなく、方向をずらす......)


 こんな使い方もあるのかと驚く。


 だが、それ以上にアイラの攻撃がすごかった。


 オーガの動きを完ぺきに読み、全ての攻撃をかわしきっていた。それだけではない。アイラは、動きが俊敏であることを活かして、皮膚の硬いオーガの一部分のみをひたすら攻撃していた。


 すると、オーガも次第に動きが鈍くなり、それをセナとアイラは見逃すはずもなく、トドメを指しに行く。


「セナ!!」

「うん」


 アイラの合図と同時に、セナは先ほどアイラが攻撃していた左脛に向かって風切エア・カッターを放ち、足を切り落とした。


 オーガが悲鳴を上げながら地面へ崩れ去った瞬間、アイラの剣がオーガの首を斬り落とした。


 アイラは後ろを振り向いて、セナにピースサインをした。


「やったね!!」

「うん!!」


(本当に強い)


 セナの実力を知り尽くしたと思ってたけど、工夫した魔法の使い方など、学ぶところが多かった。


 そして、アイラの剣技。これは、多分俺と同等かそれ以上にすごい。何がすごいのかと言えば、それはタイミングだ。


 攻めきれるタイミングなら即座に攻撃をして、攻めきれない場合は退く。この判断が、異常に早かった。


 それに加えて、一番難しい攻めることも出来るが、相手から攻撃される状況の時は、セナと連携を組んで有利な状況を確実に作っていた。


 俺がそう思っていると、セナとアイラがこちらへ近寄ってきた。


「ダイラル、一人でオーガを倒すなんてすごいね!!」

「あ、あぁ」


 本当なら、セナの言葉が嬉しいはずなのに、それ以上に先程の戦闘が目に焼き付いていて嬉しいという感情があまり出てこなかった。


「やっぱり、魔剣が使えたんだね」

「うん」

「それなら渡してよかった!!」

「ありがとう。それよりも、アイラ強いね」


 俺がそう言うと、アイラは笑顔になる。


「そうでしょ? 小さい頃から剣術だけは頑張ってきたから」

「そうなんだ」

「でも、セナの援護もあったからだけどね」

「わ、私なんて......」


 セナはもじもじとしながらそう言った。


「いや、セナもすごかった。あんな魔法の使い方、俺には思いつかなかった」

「そ、そう? なら練習してよかった」


(練習していたのか)


「まあ、倒し終わったことだし、休憩しよっか」


 アイラの言葉に俺たちは頷いて、ひとまず休憩を入れた。


 そこから、アイラが馬車を引く番になり、その後は俺が馬車を引いた。


 その時、中からセナとアイラが和気あいあいと話しているのを聞いて、少し胸が熱くなった。


(アイラが無事で本当によかった)


 その後も交互に馬車を引いて、あっという間に二週間が経ち、アズル国へとたどり着いた。






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