第6話 出発


 翌朝。セナとアイラの三人で朝食を取って、馬車に乗り込む。その時、オルドさんが話しかけてきた。


「全員、気を付けて」

「「「はい」」」

「それと、アイラのことを頼む」

「......。分かりました」


 そして、俺たちは公爵家を後にした。


 馬車の運転は、俺たち三人が交代交代でするため、最初はセナが行った。


 最初こそ、アイラと二人で軽い雑談をしていたが、徐々に話す内容が無くなって来てしまい、無言の状態が続く。


(えっと、会話を続けた方がいいのかな?)


 人によっては、話しているよりも、無言の時間の方が楽と言う人もいる。それは逆もしかりで、話している方が楽しいからずっと話していたいと言う人いる。


(う~ん......)


 俺が悩んでいると、アイラが問いかけて来た。


「ダイラルはセナとどうやってあったの?」

「あ~。セナと会ったきっかけはギルドのクエストだよ」

「へ~」

「でも、初めて会ったのは、俺が前まで所属していたパーティがセナたち子爵家を助けたこと」


 俺がそう言うと、アイラはパッとした表情になった。


「やっぱりね」


 その言葉に俺は首を傾げる。


「セナってね。同性には優しいけど、異性にはものすごく厳しいの」

「え、そうなの?」


 最初からセナは俺に優しかった。それこそ、俺が前にセナを助けていたからと言っても、誰にでも優しそうな雰囲気をしていた。だからこそ、アイラの言葉が信じられなかった。


「うん。まあ、それも納得だけどね」

「??」

「まずね。自分で言うのもなんだけど、私もセナも可愛い部類じゃない?」

「そうだね」


 アイラの言う通り、二人ともものすごく可愛い。アイラは美人系であり、セナは可愛い系。それに加えて、スタイルもいい。はっきり言って、欠点と言う欠点が見当たらないレベルだ。


「だからね、下心をもって近寄ってくる異性が多いのよ」

「へ~」


 こう言っちゃなんだが、そう言う男性陣の気持ちも分からなくはない。だって、綺麗な女性が居たらお近づきになりたいと思う事は、至極当然のことなのだから。


「私たちと結婚したいと言う人もいれば、玉の輿を狙って近づいてくる人もいる。だから、異性を警戒してしまうの」

「まあ、当然のことだよね」


 俺だって、自分自身を見てくれる人と一緒に話したいと思うし、下心を持っている人と話すのは気が進まない。


「でも、ダイラルはセナにとっては違う」

「あ~。そうなのかな?」


 俺だって、仲間が欲しいと言う下心が最初はあった。


「うん。セナにとってあなたは大切な存在。今まで助けてもらえて、今も支えてもらっている。だからこそ、今後もそう言う場面があったら助けてあげてほしい」

「それはもちろんだよ」


 でも、アイラずてでこう言ってもらえるのは嬉しい。なんせ、セナにとって、アイラはかけがえのない友達だと思う。そんな存在にこう言ってもらえているのだから。


「一応、言っておくけど私もダイラルのことは信じているからね」

「ありがと。それは俺もだよ」


 そう。俺にとってもセナやアイラは信頼できる存在。


「まあ、これからどれぐらいの期間一緒に居るか分からないけど、よろしくね」

「あぁ」


 その後、軽くアイラと話していると、セナの番が終わる予定の森林に近づいてきたため、一旦休憩を入れる準備を始めた。


 その時、森林からモンスターの叫び声が聞こえ始めた。それと同時にセナが俺たちに言う。


「ダイラル、アイラ!!」


 その言葉と同時に俺たちが外に出ると、そこにはオーガが二体立っていた。

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