第4話 旅の準備


「それで、アズル国ってここからどれぐらいの距離にあるの?」


 俺がアイラとセナに尋ねた。


「えーとね、ざっくりとだけど二週間ぐらいかな?」

「そうなんだ」


 思っていたよりも近くて驚いた。すると、セナがアイラに尋ねる。


「アイラ、ツコル様とはどうやって婚約者になったの?」

「それは、普通に政略結婚よ。ライベルトとアズルの国交を結ぶためにね」

「そっか」


 ライベルトは、第一王女しか存在しておらず、第二王女がいない。だから、その次に身分が高いアイラが選ばれたということなのか。


「まあ、まずはいつ旅立つかだよね」

「う~ん。俺はいつでもいいけど、みんなはいつ頃いける?」

「私もいつでもいいよ」

「私も」

「じゃあ、明日にでも旅立とう」


 オルドさんから聞いた情報だと、ツコル様の命が危ない状況である。なら、すぐにでも行った方がいいに決まっている。


「わかった」

「うん」

「私はお父様に馬車とかの手配をしてもらうように聞いてくるわ」

「じゃあ、私はダイラルは食料とかの調達をしよっか」

「あぁ」


 そして、俺たちはいったん別れて、準備を始めた。


 俺とセナは、アイラと別れてから下町に出た。


「私は食料を買ってくるけど、ダイラルはどうする?」


(う~ん......)


 セナと一緒に食料を買いに行くのもいいけど、俺は別のことをした方がいい気もした。


「俺はポーションとか買ってくるよ」

「わかった」


 俺とセナは集合する時間を決めて、各自やるべき場所に向かった。


(まずはポーションっと)


 俺は道具屋に向かい、ポーションなど戦闘面で必要になるものを買い始める。その時、隣にいる冒険者の声が聞こえた。


「アズル国内がやばいって情報知っているか?」

「知らないけど」

「俺も詳しくは知らないんだけど、アズル国内がやばい奴らとつるんでいるらしいぞ」

「はぇ~。まあ、そんなこと俺達には関係ないけどな」

「それもそうか!!」


 冒険者たちはそう言いながら、笑い始めていた。


 俺はその言葉を聞きながら、道具屋を後にした。


(あの噂は本当なのか?)


 俺が聞いていた内容は、ツコル様の命が狙われている状況ということだった。でも、今の話的には、アズル国がやばい奴と絡んでいるということ。それは、つまりデットワルツと絡んでいる可能性があるということだ。


(......)


 考えられることとしては、第一王子が第二王子の命を狙っている可能性。でも、血のつながっている親族を殺そうとすることはあまり考えにくい。


 だとしたら、アズル国の王族の誰かが、ツコル様の命を狙ってデットワルツに依頼しているという可能性。


「この一件、いろいろと闇が深そうだな......」


(みんなには、いったん黙っておこう)


 このことをセナに伝えるのは良いが、アイラに伝えるのはまずいと思った。なんせ、アイラは今後アズル国に嫁ぐ存在。そんな人にこのことを伝えるということは、今後の人生で疑心間を植え付けてしまう恐れがあるから。


(今聞いた噂が嘘であればいいけど......)


 俺はそう思いながらも、セナと合流して公爵家へと戻っていった。


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