第18話 アイラの目覚め。新たな目的
荒れ果てた部屋の中で、俺たちは茫然としていた。
(お、終わったってことだよな)
そこでやっと我に返り、すぐさまアイラ様の元へ駆け寄った。
布団の上にはガラスの破片が散らばっていたが、体に損傷はなかった。
(よかった......)
俺が胸を撫で下ろしていると、オルドさんもこちらに近寄ってきてアイラ様のことを見る。すると、一瞬だけ安堵した表情を見せて、俺に問いかけてくる。
「バーケが犯人だったのか......」
「はい」
俺は、ここにいる全員に今まで起きたことを説明した。それを聞いたオルドさんは、自分を責め始めた。
「なんで、なんでこんな近くにいた奴を見つけることが出来なかったんだ!!」
「......」
俺は何も言うことが出来なかった。ここで、オルドさんの所為では無いですよということは簡単だ。でも、それを言ってしまうと、一年間頑張ってきたオルドさんを否定している気がした。
そんな時、隣から声が聞こえた。
「あ、あれ? お父さん?」
その言葉を聞いた瞬間、オルドさんはアイラ様に抱き着いた。それに対して、アイラ様は困惑していた。
「どうしたの? それに何があったの?」
「後で話す。だから今はゆっくりしてくれ」
「う、うん。でも、ここじゃゆっくりできないよ?」
「そ、そうだな。部屋を変えよう」
そう言って、アイラ様を抱きかかえたオルドさんはこの場を去って行った。
ここに取り残された俺たちもこの部屋を出た。その時、セナが俺の手を掴んできた。
「ダイラルはこっちだよ」
「え?」
「腕、怪我しているよ。それに目も充血しているし」
「あ、あぁ」
セナに言われるまで気づかなかった。俺は言われるがまま、セナに案内された部屋で手当てをしてもらう。
「ありがと」
「ん?」
「アイラを助けてくれてありがと。私は何もできなかったから」
「何もできなかったわけじゃない。俺をここまで連れて来て、アイラ様が救うことが出来た。それはセナの頑張った結果じゃないか?」
「う、うん」
その後、お互い無言の状態が続き、手当てが終わった。
「じゃあ、明日な」
「うん」
そして、俺たちは用意されていた部屋に戻って就寝をした。
翌朝。部屋にノックがされた。
「はい」
「私だ」
俺が扉を開けると目の前には、目を真っ赤にしたオルドさんが立っていた。そのため、俺は部屋の中へ通した。
すると、オルドさんは頭を下げて俺にお礼を言ってくる。
「本当に、本当にアイラを救ってくれてありがとう」
「アイラ様が助かってよかったです」
「客間で、昨夜のこともう一度聞かせてくれないか?」
「はい」
俺はオルドさんと客間に向かうと、すでにアイラ様を含めた全員が揃っていた。
「ダイラルくん、昨日のことをもう一度頼む」
「はい。ですが、前提としてアイラ様は眠っていたことを知っているのですか?」
「あぁ、先程説明した」
「わかりました」
それを聞いて、俺は昨夜どういった経緯であのような状況になったのかを説明した。すると、アイラ様が驚いた表情で言った。
「う、嘘。バーケが......」
(そんなに信用している存在だったのか......)
「それで、これからどうするかだが、ダイラルくん。依頼を頼めないか?」
「え、何ですか?」
「私もいろいろと考えたが、国絡みの問題にしようと思っている。そこで、今回の元凶を突き止めてほしい」
「......」
その言葉に、すぐ頷くことが出来なかった。なんせ、俺には荷が重すぎると思ってしまったから。
すると、セナが俺の手を握って言う。
「私も手伝うよ。だからダイラルができるなら頑張ろ?」
「あ、あぁ」
そうだ、俺は一人じゃない。セナがいる。
「わかりました。是非受けさせてもらいます」
「そう言ってくれると嬉しいよ。だが、これが始まるまで一ヶ月はかかるから、それまではゆっくりしてくれ」
「はい」
そして、話が終わって席を立ち上がろうとした時、アイラ様が言う。
「私も一緒に行って良い?」
その言葉に、オルドさんが怒鳴った。
「ダメに決まっているだろ!!」
「お父さん。私は自分の人生を無駄にされたことが許せない。だから、行かせて」
「......。でも、今のままじゃダメだ。体が自由に動かないだろ」
「それは私自身が分かっている。だから、セナとダイラルさんが旅経つときまでに体が回復したら一緒に行きたい
それを聞いたオルドさんは、俺たちの方を向いてきた。
「二人はいいのか?」
「私は大丈夫です」
「お、俺もです」
すると、オルドさんは渋々それを了承した。
そこから俺は魔眼についての研究を、セナは魔法についての勉強をして過ごして、あっという間に一ヶ月半が過ぎ去った。
この時、俺たちが受ける依頼がこの世界でどれだけ重要な依頼になるのか、知るよしもなかった。
※
ここで一章完結です。
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