第17話 魔眼の真の力


 すると、みるみるうちにバーケの手元に小さな黒い玉が現れた。


(あれをくらったらヤバイ......)


 直感が言っている。あれをくらった時点で、俺は死ぬ。


 そう思っていると、バーケは俺目掛けて魔法を放ってきた。その時、ある一定の方向だけ、大気中にある魔素が乱れ始めた。


(あっちがやばいってことか)


 俺はすぐさま魔素が乱れていない方向に移動する。案の定、バーケが放った魔法は、俺が移動した場所とは真逆に行っており、壁にぶつかった。


 すると、壁が腐食していき、崩れ落ちて行った。


(あれが、黒い魔素から繰り出される魔法なのか......)


「あなた、闇魔法を見たことが無いのね」

「あ、あぁ」

「じゃあ、良かったわね。死ぬ前に見れて」


 そう言って、バーケは次々と先程繰り出した闇魔法を放ってきた。


(多すぎる......)


 魔眼の力でよけ切ることはできるが、防戦一方になるばかりであった。


(クソ、どうすればいいんだ......)


 俺がそう考えていると、バーケは至近距離に接近してきて、蹴り飛ばしてきた。


「ゥ......」


 地面に倒れ込んでいるところをバーケが見逃すはずもなく、闇魔法を放ってくる。


「トドメよ」


(こんなところで死にたくない)


 セナもっと冒険がしたい。ハリーたち勇者パーティを見返したい。


(何か、何かほかに方法は無いのか)


 そう考えていると、辺り一帯が白黒に変わり、闇魔法が先程より数倍遅くこちらへ向かってきた。


(何が起きているんだ?)


 いままでこんなこと無かった。それに、辺り一帯の色も無い。


(これも、魔眼の力なのか?)


 だが、今はこんなこと考えている場合じゃない。目の前のことに集中しなくては。


 俺はすぐさま、闇魔法を避けて、バーケの間合いにまで入った。すると、バーケは驚きながら一歩下がろうとした。


(させるか!!)


 俺は、腰に仕込んでいた短剣で斬りかかった。


「ぎゃああああ」


 バーケの腕から大量の血が流れだしていた。その時、一瞬腕から光っている何かが見えた。


(これはもしかして......!!)


「この機を逃すものか!!」


 バーケとの距離を縮めて、もう一度同じ場所を斬りかかる。すると、福の中から黒いブレスレッドが現れた。


(これを壊せばアイラ様が目覚める)


 そう。呪具の最大の弱点は、術者が何かしらの物で枷をかけなければいけないこと。


 とっさにバーケのブレスレッドめがけて斬りかかるが、そう簡単に壊させてくれるはずもなく、闇魔法で応戦してくる。


(なんだ、この数は......)


 避ける場所すらないと思分けるほどの量がこちらにやってくる。


 そこで、ハッとひらめいた。


(闇魔法には、闇魔法で応戦すればいいじゃないか)


 俺は、諸刃の剣でもある黒い魔素を体内に取り込み、短剣に付与させた。そして、大量にやってくる闇魔法を斬り割いて行き、バーケの間合いにまで詰め寄った。


(今しかない!!)


 バーケめがけて渾身の一振りをしたら、腕ごとブレスレッドが地面に落ちた。すると、先ほどまでアイラ様の周り飛び交っていた黒い魔素が徐々に無くなって行った。


 それを見たバーケは怒鳴り散らかしてくる。


「お、お前ぇぇぇぇぇ」


 その時、俺たちのいる部屋にオルドさんやコロドさん、セナがやってきた。


「ダイラル?」

「こっちに来るな!!」


 だがすでに遅かった。バーケはセナたちに闇魔法を放っていた。


(間に合ってくれ!!)


 俺がセナたちの方へ向かおうとした時、眼が焼けるほど熱くなった。すると、先程同様に視界が白黒になり、辺り一帯がスローモーションになった。俺は、反射的に短剣に闇魔法を付与させて、バーケの放った魔法をを打ち消した。


 その光景を見たバーケは、地面に膝を崩した。


(ここで、トドメを刺す)


 心を無にしてバーケの近くによろうとした。その時、窓が吹き飛んで、フードの被った人が入ってきた。


(こいつはやばい......)


 直感が言っている。こいつと今戦ったら、確実に全滅すると。そう思っていると、フードの被った奴が話し始めた。


「あらあら。D、苦戦していますね」

「B......」


(こいつら、何を言っているんだ?)


「申し訳ございませんが、Dは連れて行きますね」


 フードの被った奴が、ハーゲを連れてこの場を去ろうとした。その時、オルドさんが叫んだ。


「まて」


 そう言って、フードの被った男性に近づこうとしたため、俺が手を出して止める。魔眼のおかげで、設置型魔法があることが分かった。だから止めに入った。


「止まってください」

「なんでだ!?」

「足元に魔法が張られている......」


 確実に、オルドさんがあと一歩歩いていたら発動していた。


「賢い判断です。ですが、聞いていた話とは違いますね」

「は?」

「こっちの話です。それでは」


 そう言って、フードの被った男性とバーケはこの場から消え去った。



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