第14話 昏睡状態の原因
この状況に不気味がっていると、部屋に身なりがしっかりした男性が入ってきた。だが、その男性は顔がやつれていた。
「コロド、この人は?」
「セナの友達です」
「そ、そうか」
その表情は少し悲しそうであった。
「私は、オルド・バウリン。よろしく」
「ダイラル・エルボです。よろしくお願い致します」
「あぁ。アイラと仲良くして行ってくれ」
そう言って、オルドさんはこの場から去って行った。すると、セナがコロドさんに言う。
「パパ、なんでダイラルが力になれるかもって言わなかったの?」
「変な期待を持たせるのは良くないからだ」
「で、でも......」
セナが言いたい理由も分かる。なんせ、今のコロドさんはオルドさんから見たら、セナの友達を連れて来て自慢した嫌な奴なのだから。
「俺は別にどうでもいい。だけどな、親になった身からすると、どうしても期待を持たせるわけにはいかなかった」
「な、なんで?」
「一瞬でも期待を持ってしまうと、その人にすがってしまう。だが、結果が出なかったらどうだ? すがった人と非難してしまうだろう。そして、より一層絶望に落ちる」
(コロドさんは俺を庇ってくれたのか......)
ここまで頭が回らなかった自分を責めることしかできなかった。
「ごめんなさい」
「いいんだ。それよりも、ダイラルくん。何かわかったかい?」
「ちょっと待ってください」
俺はアイラさんの周辺を見始めようとした時、部屋に執事が入ってきた。
「私のことは気にしないでください」
「はい」
(やっぱりおかしい)
普通、魔素が人にここまでまとわりつくことなんてありえない。それどころか、アイラさんの周りには黒い魔素がまとわりついていた。
普通の魔素はいろいろな色をしているが、どれも自身の力として取り入れられる。だが黒い魔素とは、あまり見かけることが無いが、体内に取り込んではいけないもの。
それも、黒い魔素はダンジョンの最深部や森林の奥深くにあるようなものだ。それが、こんな場所でこれほどまであるとは......。
(何が起きているんだ......)
俺は、より詳しく見るためにアイラさんに近づく。すると、執事の方が苦しそうな表情をして言った。
「アイラ様にあまり近づかない方がいいです」
その言葉に、セナが問う。
「なんで?」
「過度にアイラ様へ近づいたものは、皆体調を崩しております。奥様や旦那様も......」
(やっぱり......)
思っていた通り、黒い魔素に近づいたものは体調を崩していた。だから、オルドさんもやつれていたんだろう。まあ、それ以外にも理由はあるだろうけど。
それを聞いても、なお俺はアイラ様に近づいた。その行動に対して、セナが止めに入った。
「ダイラル、ダメだよ」
「いいや、ここでやらなくちゃいけないんだ」
俺はアイラ様の至近距離まで近づく。すると、体が一気に重くなるのを感じた。
(これが黒い魔素の影響か......)
だけど、俺がやらなくちゃいけない。そう思い、アイラ様を見回す。
そこから五分ほど見て、少しだけわかってきた。
比較的足元には黒い魔素が少なく、上半身に行くにつれて黒い魔素が増えていた。
その時、コロドさんが尋ねてきた。
「何かわかったか?」
「はい。ですが、少し待っていてください」
俺はこの時、懸念点を考えていた。このようになってしまった原因は、確実に病気ではない。人為的なものだと思う。
だとしたら、執事の方ですら信用できないと思った。
そこから更に十分ほど見回した。
(あ......)
俺は、すぐさまアイラ様の胸元を開けようとしたら、セナが声を大きくして言った。
「何をしているの!?」
「黙っていて」
俺は深呼吸をして、アイラ様の胸元を開けた。すると、そこにはペンダントがされていた。
(これだ!!)
呪具。何度か見たことがある。だが、なんでこんな場所にあるんだ......。呪具はただ外せばいいわけじゃない。外す順序がある。
もし、間違えでもしたら、かかっている人と、取った人が呪いにかかる。最悪の場合、近くにいた人全員が呪いにかかってしまう。それほど危ない代物。
そこで、一旦ここまでの始末を話すためにコロドさんに言う。
「俺とセナ、コロドさんとオルドさんのみで話す場を設けてください」
「わ、分かった」
そして部屋を一旦出て、客間に移動した。そこから、三十分も経たないうちに全員が出揃ったため、俺は説明を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます