第15話 魔眼
「アイラ様の一件ですが、病気の類では無いとわかっていますよね?」
「あ、あぁ」
その言葉を聞いて、ホッとした。流石に病気だと思われていたら、最初から説明しなくてはいけなくなるから。
俺は一呼吸置いた後に言った。
「単刀直入に申します。アイラ様の胸元についていたペンダントは、どのようにつけたか分かりますか?」
「あれは、アイラが幼少期の頃に私がプレゼントしたものだ」
「そ、そうですか」
(なら、最初から呪具であったわけではない)
今考えられるパターンとして、一つ目はペンダントそのものが呪具であったこと。そして、二つ目がペンダントその物に呪いがかけられた事だ。
そして、今の会話で前者のパターンは消えた。流石にオルドさんが呪具を渡すわけがない。
すると、オルドさんが尋ねてきた。
「それがどうかしたのか?」
「アイラ様が昏睡状態になっている原因は、ペンダントだと思います」
「え......」
俺の言葉に、オルドさんは絶句していた。だが、すぐに我に返って俺に言う。
「そんなわけがない。あれは私がプレゼントした物だぞ?」
「はい。ですが、確実にあれが原因です」
俺はそう断言した。あのペンダントの周辺が一番黒い魔素が飛び交っていたのだから。
「それはなぜだ?」
「はい。俺の眼に魔力を込めると大気中にある魔素を見ることが出来るのです」
「魔眼ってことか」
「......」
その言葉に驚きを隠せなかった。
(俺の眼が魔眼?)
そんなこと考えたことが無かった。でも、なぜかスッと腑に落ちた。
オルドさんの言う通りなのかもしれない。なんせ、大気中にある魔素を見ることが出来ること自体、おかしな話。
それに加えて、オーガと戦った時、魔法を撃つタイミングが分かった。今までこれの理由が分からなかったが、魔眼の力ということなら納得ができる。
「俺の眼は、魔眼なのですね」
「気付いていなかったのか?」
「はい。何か特殊な力がある眼だなぐらいに考えていました。気づかせてもらい、ありがとうございました」
「良い」
話が脱線してしまったため、全員の表情を見てから本題に戻った。
「それで話を戻しますが、ペンダントの周りに黒い魔素が飛び交っています。それで分かることが出来ました」
すると、オルドさんやコロドさん、セナは首を傾げていた。
「黒い魔素とは?」
「大気中にある魔素は、様々な色をしています。例えば、森林には緑色の魔素。湖や海には青色の魔素、火山地帯には赤色の魔素が飛び交っています。そして、黒い魔素とは、森林の奥深くにあるよどんだ場所やダンジョンの最深部で見かけることがあります」
そう言うと、全員が頷いてくれたため、話を続けた。
「黒い魔素とは、病原体みたいなものです。憶測になってしまいますが、体内にある魔力と黒い魔素が衝突して、体を蝕んでいきます。最悪の場合、死に至る可能性がある」
すると、全員が驚いた表情をしていた。
俺の眼が魔眼と教えてもらった時、あやふやであったことが確信に変わった。
今までは大気中ににあるものが魔素なんだろうなとあやふやに思っていた。だけど、魔眼ということが分かった今、大気中にあるものが魔素であると確信を持てた。
だからこそ、黒い魔素は体をむしばむものだと思った。なんせ、勇者パーティにいた頃も、黒い魔素を大量に吸ったものは体調を崩したり、死に至っていたから。
「だから、妻も体調を崩しているのか......」
「多分ですけど」
「それはどうやったら治るんだ?」
「私の経験上、軽症のものは自然に治り、重症のものは教会に行って治してもらっていました」
その言葉を聞いたオルドさんが使用人を呼ぼうとした。
「ちょっと待ってください」
「なんだ?」
「今呼ばれてしまうと、ここに集まってもらった意味がなくなってしまいます」
俺は、ここに集まってもらった経緯を説明した。
「わ、分かった。でも、妻が......」
「奥さんを呼んできてもらってもいいですか?」
「あぁ」
すると、オルドさんは一旦部屋を出て行った。
それから数分も経たないうちに部屋に連れてきた。
(アイラ様に似ているな)
そう思いつつも、奥さんに黒い魔素がそこまで無いことを確認した。
「この状態なら大丈夫です。明日にでも連れて行ってあげてください」
俺がそう言うと、オルドさんは心の底からお礼を言ってきた。
「それで本題に戻りますが、アイラ様が昏睡状態になった時に接近した者の心当たりとかありますか? そこに犯人がいる可能性が高いです」
百パーセントとは言えないが、ほぼ確実にいるはずだ。
「私の机にデータがあるから、確認しよう」
「ありがとうございます」
その後、俺たちはこの場を後にした。
すると、セナが話しかけてきた。
「ダイラルを連れて来てよかった」
「そう言ってもらえてうれしいよ。でも解決したわけじゃないから」
力になれるか分からなかったが、一歩でも前進できてよかったと思った。だが、アイラ様が目を覚ましたわけではない。だから、気を抜くことはできなかった。
今回の一件で、俺たちは公爵家で一泊することになり、夕食をご馳走になった。その時、データを渡されたため、明日から一人ずつ見回って行こうと思った。
そして、部屋に戻ろうとした時、黒い魔素が的割っている人が通路を通って行った。
(この人だ)
俺はすぐさまその人を追いかけた。
※
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